母のウェディングドレス ― 家族が着ていた服 ―

 母がかつて自分の結婚式用に編んだスレンダーなニットドレスを、30年以上経って、ついに私の結婚式後のパーティーで着ました。幼い頃に母の結婚式の写真を見せてもらい、父との結婚を心待ちにしていた初々しい母に思いを馳せて、その清楚で控え目なドレスに花嫁への憧れを強めていました。結婚が決まってから例のドレスが着たいとお願いすると、母は「古臭いからやめなさい」と言いました。でも染みひとつなく大切にとっておいてくれたそのドレスは、実際着てみるとまるであつらえたようにぴったりで、「よく似合う」と喜んでくれました。

 当日、母に背中のボタンを留めてもらったときは、挙式用の豪華なドレスでのベールダウンのとき以上に涙がこみあげました。真っ白なニットなのに着痩せする不思議なドレス、どうしてもまた着たいので主人に10年後のバウリニューアルをおねだり中です。

(奈央 32歳 福岡県)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は1月1日(日)20時公開予定です

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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