セーターの家族写真 ― クリスマスに読む、冬の服のはなし ―

 16歳のとき、うちは一家8 人だった。祖父母、父母、兄、私、弟、そして1 年間だけホームステイをしていた17歳の女の子。春にノルウェーからやってきた彼女は日本語をまったく話せなくて、挨拶代わりに伝統的なセーターを一人一人にプレゼントしてくれた。まさにノルディックセーターそのもの。白とブルーの雪柄や、赤と青の鮮やかな柄など、それぞれに合うものを選んでくれていた。シルバーのクラスプも民芸を感じられる素敵なものだった。少しずつ日本語がわかり始め、祖父母ともテレビを見ながら会話ができるようになったその冬、まさにクリスマスだったと思うが、記念写真を撮ることにした。せっかくだからプレゼントしてもらったセーターをみんなで着よう! ということになり、ノルディックセーターを着た和顔が7 人と、真ん中にブロンドの女の子が座っているというちょっとシュールな家族写真になった。

 祖父と父が他界し、私も弟も家を出た。今でも実家のダイニングには8 人家族の写真が飾ってある。

(SPUR編集K)

 ― 期間限定 ―
SPURスタッフの冬の服のはなし

プロの作家やクリエイターでなくても、服にまつわる忘れられない記憶は必ずある。みなさんからご応募いただいたエピソード以外に、今月はSPURの誌面づくりに関わる人々に思い起こしてもらった「ストーリー」を期間限定でピックアップしました。

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。