SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り 」最終回となる第15弾を飾るのは、ミュージシャンの野宮真貴さん。昔も今も変わらぬ魅力を放つ、“歌うファッションアイコン”が長く愛し、ときめくアイテムを紹介してくれた。
音楽とファッションは切り離せない! 今は1980年代ニュー・ウェイヴで青春をリバイバル
「私のファッションは、ずっと音楽とともにあるんです」と野宮さんは語る。「ピチカート・ファイヴ」ではミニスカートやタイトなレザーなど、レトロモダンな彼女のスタイルが大きな注目を集めた。40年以上にわたるキャリアを通じて多彩なファションに身を包み、千変万化するおしゃれで人々を魅了し続けている。「10代の頃は、グラムロックミュージシャンのファッションに憧れて、海外アーティストの着こなしを真似していました。ピチカート時代はメンバーの小西康陽さんの影響もあって、60年代にインスパイアされたファッションをよく着ていましたね」。
80年代、野宮さんは現在の活動のルーツとなるジャンルに出合う。「私がデビューしたのは1981年、世界的にニュー・ウェイヴの全盛期でした。人生の青春時代と言えるかもしれません。当時、ディスコに行くと面白いファッションをした人がたくさんいて、大きな影響を受けました。流行っているものを着るよりも、いかに人より目立つか。人と違った格好をして褒められるのが嬉しい、そういう時代でした。本当に、自由で楽しかったんです」。当時の野宮さんにとってのファッション・アイコンは、バンド「ブロンディ」のフロントを務めたデボラ・ハリー。そして、日本から世界に発信するニュー・ウェイヴバンド「プラスチックス」のボーカル、佐藤チカだったそう。
毎年バースデー・ライブを開催している野宮さん。2025年3月に行われるライブでは、「80年代のニュー・ウェイヴ」をテーマにした。「今、若い子たちが80年代のファッションを楽しんでいるのをよく見かけます。私が20代に着ていたときと変わってないですね。私自身もそう。当時のファッションを身にまとい、ニュー・ウェイヴを歌うと、あの時の自由な気持ちが蘇ってくる」。
今回紹介してくれた10点は、彼女の中でリバイバルしている80年代を彷彿させるアイテムと、クラシカルな名品が織り交ぜられている。「こうして好きなものを選び出してみると、それぞれどこかに、音楽と歌にまつわる思い出があります」。時代を象徴しながら繰り返し脚光を浴びるモードと、時代を超えて愛されるスタンダード、野宮さんのファッションと音楽は、そのふたつが確かにリンクしている。
【マッセ・メンシュのチャイナドレス】定番のチャイナドレスに、ニュー・ウェイヴなテイストをミックスして
チャイナドレス/本人私物、カーディガン¥143,000/ケイタマルヤマ 03-3406-1935 バッグ¥85,800/ケイト・スペード カスタマーサービス(ケイト・スペード ニューヨーク)050-5578-9152、ピアス¥29,700、リング¥44,000/スワロフスキー・ジャパン(スワロフスキー・ジュエリー)0120-10-8700、シューズ¥484,000/クリスチャン ルブタン ジャパン(クリスチャン ルブタン)03-6804-2855、タイツ¥11,550/エンメ(フォーガル)03-6419-7712、ブレスレット¥25,300/ピモンテ contact@pimente.jp
「ピチカート・ファイヴ」の初期から、ライブやCDジャケットの衣装を作っていただいているマッセ・メンシュは、私服でも長く愛用しているブランド。60年代ファッションをベースにした服作りを行っていて、本当にセンスが合うなと思います。10着以上持っているチャイナドレスは、スタイルアップして見えるパターンも絶妙で、ずっとコレクションしている定番アイテム。UFOの形のバッグを合わせて、ニュー・ウェイヴなテイストを加えるのが私流の着こなし方です。
【モイ パリのコットンパールネックレス】ストレスフリーなつけ心地に魅せられて
ネックレス、ピアス/本人私物、プルオーバー¥110,000/イザ(ニナ リッチ)0120-135-015
モイ パリは、日本人デザイナーがパリで立ち上げたアクセサリーブランド。もっとカジュアルなものもたくさん持っているのですが、今日は一番華やかなネックレスを持ってきました。これだけボリュームがあっても、コットンパールなのでとても軽い! カジュアルなTシャツにも合うし、嫌味にならないんです。若い頃は「ファッションは我慢」と、かっこよさ至上主義でしたが、歳を重ねた今は、上手にこういうアイテムを取り入れて楽しんでいます。思えば、80年代はキッチュなものが最先端だった時代でもあるんですよね。そこに通じるものを感じられて、ライブの衣装に限らずカジュアルなシーンでも愛用しています。
【レオパード柄のクラッチバッグ】ロックなマインドと可愛さを秘めたレオパード柄に夢中
バッグ/本人私物
昔からレオパード柄のアイテムが大好きでいろいろと集めています。マーク ジェイコブスのバッグ(写真右)は、ストラップをブレスレットのように手首に巻いて使っています。マックイーンのバッグ(写真左)は、ロックなマインドが根底にあって、既成概念に囚われないところに共感して購入。両方とも一見すると派手なのですが、遠目から見ると無地のようになじんで意外と使いやすいんです。スタイリングのポイントにもなるので、重宝しています。
【エムエスジーエムのミニスカート】還暦を迎えてから、封印していたミニスカートを復活
スカート/本人私物、ニット¥36,300(参考価格)、シューズ¥39,600(参考価格)/マーク ジェイコブス カスタマーセンター(マーク ジェイコブス) 03-4335-1711、ストッキング¥5,280/Sustainable k3(スウェーディッシュ ストッキング)03-3464-5357、ハット¥13,200、イヤリング¥5,280/ニューテリトリー 03-3464-5357、リング¥104,500/ピモンテ contact@pimente.jp
40代になった頃から、トレードマークのミニスカートをはくことに迷いが生まれ、ずっと“封印”していたんです。それが吹っ切れたのが数年前。還暦を迎えた際のライブで、「ミニスカートを解禁します!」と宣言しました。それ以降再び、ステージではもちろん、私服でもカジュアルにはくようになりました。エムエスジーエムのミニスカートは、シンプルな黒の台形シルエットで大人でも使いやすいし、ポケットのスパンコールもおしゃれ。ちょっと衣装っぽい華やかさがあるところが気に入っています。
【エルメスのカレ】後染めをしてオリーブグリーンになった、世界で1枚の宝物
スカーフ/本人私物、コート¥217,800/イザ(ヌメロ ヴェントゥーノ)0120-135-015、ブレスレット¥33,000、リング¥96,800/ピモンテ contact@pimente.jp
昔、夫からプレゼントされたときは、薄いピンク色でした。タンバリエ(鼓手)と呼ばれる絵柄で、ミュージシャンの肖像画が描かれています。10年以上前「パスザバトン」というショップのイベントに参加して、お任せで後染め加工をお願いしたら、美しいオリーブグリーンに大変身。世界で1枚のオリジナルスカーフは、これからもずっと大切に使いたい宝物です。
【シャネルのサングラス】80年代のマインドを感じさせる逸品
サングラス/本人私物
今季購入したシャネルのサングラスです。「ブロンディ」のボーカル、デボラ・ハリーを彷彿させる、80年代のフォルムに惚れ込んで即決。20代の頃に好きだったファッションを、60代の今また好きになるとは想像もできませんでした。デニムなどのカジュアルな装いをクラスアップしてくれるアイテムとして、ヘビーユースしています。
【ピエール・カルダンのリング】ワールドツアーの途中で出合った、お気に入りデザイン
リング/本人私物
「ピチカート・ファイヴ」のワールドツアーでいろいろな国に行った90年代。どの街でも、ライブの合間にヴィンテージショップへ出かけるのが楽しみでした。なかでも、フランスで出合ったこのリングは、私の薬指にぴったりのサイズでずっと愛用しています。ピエール・カルダンは60年代ファッションの代表格で、私の母も大ファンでした。当時子どもだった私と妹にも、カルダン風のワンピースを仕立ててくれたんですよ。それが子ども心にも嬉しかったのを鮮明に覚えています。
【プラスチックスのスウェット】ミントグリーンが美しい! ニュー・ウェイヴの伝説的バンドのスウェット
スウェット/本人私物、スカート¥165,000/アンブッシュ* ワークショップ(アンブッシュ*)03-6451-1410、ストッキング¥4,620/Sustainable k3(スウェーディッシュ ストッキング) 03-3464-5357、シューズ¥133,100/クリスチャン ルブタン ジャパン(クリスチャン ルブタン)03-6804-2855、頭につけたブローチ¥8,580、サングラス¥84,700/クボラム(ニューテリトリー) 03-6451-0534
日本を代表するニュー・ウェイヴバンド「プラスチックス」。スタイリストでありながらバンドで紅一点のボーカル・佐藤チカさんは、ファッションもセンスの塊で、デビュー当時の私にとって憧れの存在でした。彼女が歌う『I LOVE YOU OH NO』のタイトルがプリントされたこのスウェットは、ショップ兼アートギャラリーの「VIVA Strange Boutique」が復刻したもの。毎年恒例のバースデー・ライブのバンドメンバーがプレゼントしてくれた、思い出深い1枚です。
【グッチのホースビットローファー】ワードローブにずっとあるエッセンシャルシューズ
シューズ/本人私物
20代でニューヨークに遊びに行ったときに「買った方がいいわよ」と、現地の友達に背中を押されて、グッチのホースビットローファーを買いました。それ以来、このローファーがワードローブから消えたことはありません。履きつぶしては買って、今でも我が家に最低2足はある、絶対的な定番となっています。何十年たっても変わらず、長く自信を持って使えることのよさをしみじみ感じますね。
【JINSのリーディンググラス】ポジティブに歳を重ねていくために、自らデザイン
リーディンググラス、リング/本人私物、プルオーバー¥110,000/イザ(ニナ リッチ)0120-135-015、ピアス¥29,700/スワロフスキー・ジャパン(スワロフスキー・ジュエリー)0120-10-8700
年齢を重ねても、外見はファッションやメイクでいろいろな見せ方ができるけれど、一番ショックを感じたのは、小さな文字が見えなくなったこと。「老眼鏡」という言葉もなんだか悲しい響きですよね。そこで、アイウェアブランドのJINSにかけ合って作ったのがこちら。持ち歩いても嬉しい気持ちになる老眼鏡です。オペラグラスなどで使われるローネット(折りたたみ式の柄つきメガネ)の形にして、名前も「リーディンググラス」に。食事に行って、メニューを見るときにすっとこれを出したら、所作もきれいに見えますよ。
1960年生まれ。’81年「ピンクの心」でソロ・デビュー。’82年結成のポータブル・ロックを経て、’90年ピチカート・ファイヴに加入。シングル『東京は夜の七時』などのヒットで渋谷系ムーブメントを巻き起こし、音楽・ファッションアイコンとしてワールドワイドに活躍。2001年の解散後はソロ活動を行う。『おしゃれ手帖』など、ファッションにまつわるエッセイも多数。‘25年のバースデー・ライブのテーマは“80年代ニュー・ウェーヴ。3月7日(金)8日(土)にビルボードライブ東京、3月14日(金)にビルボードライブ大阪で開催。詳細はビルボードのHP をチェック!