政権交代直後のNYコレクション。全体として、新しさやアバンギャルドな潮流というより、各ブランドが自身の「らしさ」や原点に立ち返る服が多かった。なかにはPublic Schoolのように、暗にメッセージを織り込むブランドもあったものの、やはり冒険しないスタンスが大勢を占めていたように思う。そんななか、ファッションの力を感じさせたのはやはりラフ・シモンズのカルバン クライン。「アメリカ」をテーマに美しい服の数々で観る者を圧倒した。そして彼もやはり、ショーのはじまりと終わりのBGMにデヴィッド・ボウイの「This Is Not America」を選ぶことで、現在のアメリカへのメッセージを込めた。
1.ラフ・シモンズが「アメリカ」に、来たーーーー!
ラフが今回のショーでテーマに掲げたのは「アメリカン・ユース」。アメリカの文化に影響を及ぼすものをピックアップして、モダンな服へと落とし込んだ。たとえばヴィンテージのキルトに着想を得た服。ここではグレンチェックのスーツとミックスされて用いられている。昔、警官が着ていたようなレザージャケットや、鼓笛隊をイメージした側章パンツが登場。アメリカンフットボールのチアリーダーのユニフォームにインスパイアされたニットも見られた。フェザーをあしらったドレスは20年代のキャバレーにいた女性を思わせる。売り切れ必須のデニムは、日本製。大きく誇張されたパッチポケットには、80年代に女優ブルック・シールズがモデルとして起用された「ORIGINAL CALVIN」の広告ビジュアルを想起させるイラストが描かれている。それらの「アメリカ的」なインスピレーションが、ブランドが得意としてきたテーラリング、そしてアーカイブへのオマージュと見事に融合し、美しいコレクションを築き上げた。
2. バズカットの次は、角刈りが来る!?
グイド・パラウが今シーズンもアレキサンダー ワンのショーのために5名のモデルをヘアカットした。今回はボーイッシュなショートがメイン。あの人気モデル、キャサリン・マクニールがロングヘアをばっさりとショートにチェンジ。
何より注目したいのは、コリアン・モデルのソヒョン。もともとかなり短髪だったが、今回のショーのためにカットした後のヘアスタイルは、もはや“角刈り”。
“バズカット”モデルがブームになって久しいけれど、次に街を席巻するのは角刈りスタイルかも!?
3. ファッションにもヒップホップ旋風が吹き荒れる?
世界中でヒップホップブームの昨今。今回のNYコレクションでも、その影響を十二分に感じられた。コーチ(写真左、左から2番目)は着想原の一つを80年代のヒップホップに得て、シアリングを配したベースボールキャップやハイカットスニーカーを提案。大きめのダウンジャケットやスタジャンもそのムードを体現する。マーク・ジェイコブス(写真右、右から2番目)のインスピレーションは、ドキュメンタリー「ヒップホップ・エボリューション」。ゴールドのチェーンネックレスや、トラックパンツ、ベースボールキャップなどにそのフレーバーをちりばめて。しかしいずれもストリートの子供っぽさとは無縁。大人がまとえるシックなリアルクローズに昇華させていた。