ウィメンズシューズのデザインディレクターに就任したポール・アンドリューによる初のコレクションが、2017-’18年プレフォールにてお目見え。ブランドが持つ哲学を貫きつつモダンにアップデートされた新作を通して、新たな扉を開いたサルヴァトーレ フェラガモの「靴」の世界に迫る
ポール・アンドリューによる「F」ウェッジ。微妙なフォルムの調整でよりモダンに、ハイテク技術を駆使してより履き心地よく生まれ変わった。(右)ショートブーツ¥128,000・(中)ショートブーツ¥128,000・(左)ベルベット素材のアンクルストラップシューズ¥100,000/フェラガモ・ジャパン(サルヴァトーレ フェラガモ)
ハイテク&ハイクラフトで時代の先端をゆく靴が誕生
「夢の靴職人」とも称されたサルヴァトーレ・フェラガモが、自身の名を冠したブランドを立ち上げたのは1927年のこと。ちょうど創立から90年を迎える節目のときに、気鋭の才能によって、このブランドは新たなステージを迎えた。名だたるメゾンでキャリアを積み、2013年には自身のブランドをスタート、CFDAのグランプリをはじめとする華々しい受賞歴を持つ、ポール・アンドリューによる初のコレクションが発表されたのである。
1960年にサルヴァトーレが亡くなった後、シューズのデザインディレクターが大々的に表舞台に立つのはこれが初めてのことで、ブランド側の期待の大きさがうかがえるというもの。
「サルヴァトーレを偉大な存在たらしめた、このブランドが持つ価値観をシンプルに強調し、新しい世代の女性たちにふさわしいデザインを提供することが私の使命」とポールが話すように、「F」シェイプのウェッジソールに代表されるブランドのシグネチャーを再解釈したシューズは、フレッシュで洗練された趣。最新の技術とイタリア最高のクラフツマンシップを駆使し、新素材の開発やフィット感を徹底的に研究して生み出されたそれらは革新的だ。と同時に南カリフォルニア大学で人体解剖学を学び、1936年には軽量かつ土踏まずを支えて身体のバランスを安定させる、コルクのウェッジソールを発明したサルヴァトーレの哲学を継承している。
彼の孫であり、現在レザーグッズ部門の責任者を務めるジェームス・フェラガモはこう話す。
「サルヴァトーレ フェラガモというブランドには、大胆不敵な革命を起こした歴史があります。プラットフォームやウェッジソール、メタルアーチなどの発明によって、時代のトレンドを作ってきたのです。ポールがブランドのアーカイブスを再び見つめ直すにあたり、最新技術やクラフツマンシップにフォーカスしたということは、今もなお、私たちのシューズが時代の最先端であることの証しなのです」
ここにピックアップした「F」シェイプのブーツやパンプスのほか、「フラワーヒール」のサンダルやリボンのバレエシューズ「ヴァラ」も、ポールの感性によってブラッシュアップされた新作が次々に登場している。進化し続けるサルヴァトーレ フェラガモは、世界中のシューズラバーをますます熱くさせるに違いない。
Archives
アーカイブスから「F」ウェッジの代表的なモデルをピックアップ。(上)1947年に発表された「Invisible」。ファッション界のオスカーと称されるニーマン・マーカス賞を受賞(中)オリエンタルトゥが特徴的な「Arabesca」は1944-’45年に登場(下)1947年の「Sandal」。カラフルなパッチワークが今なお新鮮だ
伝説のアーカイブが蘇る!
1947年にサルヴァトーレ・フェラガモの手により生み出されたマスターピース「INVISIBLE」。ほれぼれするほど美しいフォルムを、さまざまな角度から堪能できる。ポール・アンドリューの手により吹き込まれたモダニティも体感したい。
SOURCE:SPUR 2017年11月号「ポール・アンドリューが描くモダニティ 現代に蘇る美しき「F」シェイプ」
photography:Masanori Akao〈whiteSTOUT〉 styling:Maki Yanagita composition & text:Kayori Morita