ファッション好きがラブコールを送るヴァレンティノ。イタリアが誇るオートクチュールメゾンであるこのブランドに、新たな風を吹き込んだのが、ピエールパオロ・ピッチョーリ。
ローマのデザイン学校時代に知り合ったマリア・グラツィア・キウリとともに1999年にヴァレンティノに入社した彼は、2008年からはクリエイティブ・ディレクターデュオのひとり、そして昨年の7月からは満を持して単独のクリエイティブ・ディレクターとしてブランドの舵を取ってきた。
今回、最新の2018年リゾートコレクションを提げて来日したピエールパオロ。現在原宿にて開催中のVLTN トウキョウ ポップアップ ストアで、オープン前の限られた時間の合間を縫って『SPUR.JP』のインタビューに応じてくれた。その華々しい経歴からは想像もつかないほど、リラックスした、物腰柔らかな佇まい。かと思うと、ロゴが刻印された真っ黒のバスケットボールを片手に、無邪気にゴールを決める姿がとても印象的だ。
── まずはじめに、VLTN トウキョウ ポップアップ ストアのロケーションを、表参道に決めた理由を教えてもらえますか?
意外性のあるロケーションにしたかった、というのが一番大きな理由ですかね。僕のコレクションはいつだって、リアルな人物像をイメージしています。リアルが行き交うストリート、そして人々との距離が近いこと。そのビジョンを叶えるために、表参道は絶好のロケーションでした。
── 洗練されていて、ラグジュアリー。これまでのブランドイメージからすると、銀座や六本木などが候補に上がりそうなものですが。
銀座も六本木も素敵な場所ですね。でもヴァレンティノという確固たるイメージを持つブランドだからこそ、これまでと違う提案が求められていると感じました。ロケーションだけじゃなくて、店舗の内装が気に入ったのも大きな理由です。インダストリアルで、コレクションのイメージにとても合っていました。
── 先ほど店内を拝見しましたが、店頭のスタッフが皆ユニークなスタイリングで印象的でした。
スタッフの子たちには、「ロックスタッズ」をあしらった白いシャツを一枚だけ渡して、好きにスタイリングしてください、と伝えました。この空間にいる人の個性が生きていることが重要だと思ったのです。
彼ら、彼女たちだけじゃなくて、僕の作るヴァレンティノでは基本的に特定のイメージを一方的に押し付けるということをしません。たとえランウェイで提案されるスタイリングを気に入ってくれていても、必ずしも全身真似して欲しいとは思いません。
── 確かに、サスペンダーと安全ピンを付けてパンクに合わせている子や、中にグラフィックTシャツを合わせてカジュアルダウンしている子など、それぞれが好きなようにスタイリングしていて面白かったです。今回の2018年リゾートコレクションはNYのヒップホップをイメージしているんですよね? 確かNetflixのシリーズ番組「The Get Down」がインスピレーション源だとか。
そうなんです、「The Get Down」はコレクション制作にあたって、最初に思いついたイメージでした。ヒップホップというジャンル、ないしカルチャーに魅了されるのは、それ自体が個人のアイデンティティを象徴しています。サンプリングという概念も、ヒップホップならではですね。サウンド、リリック、ファッションも含め、常にリミックスして進化してきました。
── なるほど。つまり、いわゆる"ヒップホップ的な"ファッションを提案するのではなく、そのカルチャーであったり、考え方を取り入れたということですね。
その通りです。ヴァレンティノと言われて誰もが思いつくのは、赤いドレス、繊細なレース、最近だと多分スタッズでしょうか。既に知られているイメージを、リミックスして、新しいスタイルとして提案したかったのです。ヒップホップはあくまでもアプローチとして取り入れています
── これまで、ピエールパオロさんが発表してきたヴァレンティノのレディースコレクションといえば、ハイカルチャーというイメージでした。ヒエロニムス・ボスであったり、マリアノ・フォルチュニーであったり、よりアート志向の強いインスピレーションが多かったような。
正直なところ、インスピレーション源そのものには特に執着していません。もちろん、今あなたが名前を挙げたような有名なアーティストやデザイナーは、リファレンスとしてはイメージしやすいと思います。でも僕が感銘を受けるのは、表現そのもの。アート通ぶるのは性に合わないんです。ただ単純に人と関わることが好きで、彼らの表現に影響を受けているのです。
── そういった視点で見れば、ファインアートであれ、ストリートカルチャーであれ、表現という点では変わらないと。
そうですね。あえてファインアートとストリートカルチャーに違いを見出すとしたら、ストリートカルチャーには完成されていない美しさがあるということでしょうか。完璧ではないということは、何よりのアイデンティティになり得ると思うのです。
── それを聞いて、なるほどな、と思ったのはアイコンバッグ「ロックスタッズ」コレクションのオンラインエディトリアルです。ちょうど今月、東京のストリートモデルを起用したシリーズが公開されましたが、何か印象に残っているシーン、お気に入りのモデルはいましたか?
このオンラインキャンペーンをスタートさせたのは去年のこと。最初はNYから始まりました。「ロックスタッズ」は、現在のヴァレンティノを象徴するバッグで、多くの人に知ってもらっています。だからこそ、ストリートのリアルな人選で、これまでに無いブランドの側面にフォーカスしたかったんです。
特に印象に残ってるのは、ピンクの髪の毛が印象的なアミ・アヤちゃんと、ユニークな刺繍のガウンを着てメイクアップをしたチャムくん。東京ならではの個性的なスタイルを持った子たちとのコラボレーションが実現して、本当に楽しかったです。
ピエールパオロさんにまつわる9つのQ&A
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Q. 東京派?京都派?
A. 東京 -
Q. 犬派?猫派?
A. 猫 -
Q. ヒップホップ派?ロック派?
A. どっちも、ってダメですか? -
Q. バスケットボール派?ヨガ派?
A. バスケットボール -
Q. 古典美術派?ポップアート派?
A. 古典美術 -
Q. ハイヒール派?フラット派?
A. ハイヒール -
Q. 好きな単語を3つ教えて下さい
A. Freedom(自由)、Individuality(個性)、Love(愛) -
Q. 赤派?黒派?
A. 選べません!どちらもヴァレンティノに欠かせない色ですから! -
Q. 好きな日本語を1つ教えて下さい
A. DOMO(どうも)!色んなシチュエーションで使える、魔法みたいな言葉ですね。
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ヴァレンティノ インフォメーションデスク
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text: Shunsuke Okabe