ストリートなNYグラフィティ。わたしはバスキア

没後30年を経て、今なお人々を熱狂させるジャン=ミシェル・バスキアは、希代のアーティストであり、ファッションアイコンでもある。彼の作品と人生のように、ストリート、トライバル、インテリジェンス……とさまざまなジャンルを内包するハイパーミックス・スタイルで、新しい年、新しい季節は、モードのボーダーを自由に跳び越えて。

 

はじまりは、「グレイズ・アナトミー」

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彼の絵に子どものような無邪気さと知的なたくらみが共存していたようにバスキアのスタイルには、「計算された無造作」ともいえるさりげないツイストが随所にあった。プレッピーなシャツにタイを少しだけずらして着るのもバスキア流。スリット入りジャージパンツでスポーツモードをミックスマッチ。
パンツ¥162,000/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー) コート¥19,400/ドルーク ニット¥7,800/ヘイト アンド アシュバリー シャツ¥12,000/ラボラトリー/ベルベルジンⓇ タイ¥7,000/バースデス マフラー¥8,000/ジャンティーク 靴¥13,800/ボストック ソックス/スタイリスト私物

「グレイズ・アナトミー」といってもバスキアが愛したのはイギリスの解剖学者ヘンリー・グレイが19世紀に書いた医学書。幼い頃、入院中に母親からこの本をもらった彼は、以来、人体の構造に興味を持ったという。ヴィンセント・ギャロと組んだバンドの名前も「グレイ」。人体の中までのぞき込むような彼の知的なアートのルーツは、実は現代の人気テレビドラマともリンクする。

モードなバスキア

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端正なジャケットの背中にはベージュの切り替えと水墨画のようなフラワープリントが。バスキアが好んだロゴTシャツとチェーンネックレスは80年代ブルックリンへのオマージュ。

ジャケット¥314,000・パンツ¥92,000/ロエベ ジャパン カスタマーサービス(ロエベ) Tシャツ¥2,900/原宿シカゴ 原宿/竹下店 ネックレス¥5,900/カメレオンウェアハウス ジャケットにつけたバッジ(上から)¥900・¥700・¥500/サンタモニカ渋谷 ヘルメット/スタイリスト私物

1987年のコム デ ギャルソン オム・プリュスのショーではモデルとしてランウェイを歩き、絵を描くときもアルマーニやイッセイ ミヤケのスーツを着る。一方で思い切りストリートやアフリカンなスタイルも楽しんだ。自由なバスキアのファッションスタイルはモードマニアを今でも魅了する要素のひとつ。そのスタイルはとても“知的”で“エレガント”だったと形容されることも。最高にモードな褒め言葉だ。

アンディ・ウォーホルに憧れて

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ボーホーシックなデニムフーディにヴィンテージのレインボーベストを重ねた、レトロなファイタースタイル。レザーにシルバー刺しゅうでペイズリー柄を立体的に表現し、グラマラスなムードもプラス。トップス¥105,000・パンツ¥490,000・ベルト¥365,000(参考価格)/イヴ・サンローラン(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ) ベスト¥6,463/ロンガブ グローブ/スタイリスト私物

27歳で亡くなるまでの間に驚くほどのスピードで夢をかなえたバスキア。ポップアートの旗手だったアンディ・ウォーホルにソーホーのレストランでポストカードを売って喜んだのは18歳の頃。その後再会し、’85年には共同展覧会を開催。子どものように楽しむ当時のポスターは今でも新鮮だ。そのときのコラボレート作品がほとんど売れなかった、というのも驚くべき話ではあるけれど。

Who is "SAMO" ?

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スプラッシュペイントをアクセントにしたオーバーオールは、足もとにフェザーのついたパンタロンを重ねることで唯一無二のグランジスタイルに。

ニットカーディガン¥195,000・中に着たパンツ¥187,000(ともに予定価格)/ミュウミュウ クライアントサービス(ミュウミュウ) オーバーオール¥12,800/ローズ下北沢 ネルシャツ¥7,800・Tシャツ¥6,800/ボストック 靴¥22,900/バド バンダナ¥3,800/ラボラトリー/ベルベルジンⓇ

バスキアのアーティストとしての始まりは、17歳の頃。学校の友人アル・ディアスと始めた"SAMO"。"Same Old Shit"の略で、ふたりは架空のキャラクターとして地下鉄やストリートにアーティなグラフィティを描き始めた。街にあふれるただの落書きではなく、詩的かつ政治的なメッセージを込めたグラフィティが、見る人の心に届くのに時間はかからなかった。

’70sと10代の頃

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バスキアが10代を過ごした70年代に捧げるポップなカラーレイヤード。パディングのトラッパーハットやキッチュなプラダのロゴトップスでラグジュアリーなミックスマッチを楽しむ。トップス¥99,000・帽子¥66,000(ともに予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ) 中に着たトップス¥12,800/フェイクアルファ パンツ¥16,500/バースデス ベルト¥2,500/BIG TIME下北沢 靴¥15,900/バド ソックス/スタイリスト私物

ハイティーン時代はまさに70年代の終わり。クラブシーンがそのままアートの発信地で、ダウンタウンは刺激的な無法地帯だった。サラ・ドライバーが監督した最新ドキュメンタリー映画『バスキア、10代最後のとき』(12月22日公開)には、そんな時代の見ているだけでヒリヒリするようなNYと、今も誰かの中にリアルに生きる魅力的なバスキアの姿が描かれている。ひと目会ったら思わず恋に落ちてしまいそうな。

"I am not a black artist,I am an artist."

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ヴィンテージライクなスカーフプリントのセットアップは、タフなバイカージャケットと合わせてグラマラスに。パターン・オン・パターンのミックスで美しいカオスをつくり出す。ジャケット¥725,000・トップス¥470,000・パンツ¥190,000・ネックレス¥170,000/グッチ ジャパン(グッチ) シャツ¥5,900/サニー サイド アップ下北沢店 靴¥49,900/サイダー 帽子¥19,800/リオール 腕に巻いたスカーフ¥3,900/ローズ下北沢 ソックス/スタイリスト私物

ただその才能だけを評価されること。彼が願い、政治や人種問題について彼らしいアプローチで表現をしていた70~80年代、名だたる美術館には白人アーティストの絵ばかりが並び、"ブラック・ピカソ"と呼ばれた彼の絵には黒人ぺインターというフィルターがかけられていた。そして今、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンには、エゴン・シーレとバスキアの絵が一緒に並ぶ。この景色を彼が見たら、どんな言葉を紡ぐのだろう?

SOURCE:SPUR 2019年2月号「わたしはバスキア」
photography: Mitsuo Okamoto styling: Tomoko Iijima hair: Koichi Nishimura 〈angle〉 make-up: DAKUZAKU 〈TRON〉 model: Ana Paula

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