2019.02.16

WeiboとWeChatでファッションの歴史を変える。Mr.Bagsを知っているか?

経済の急成長が止まらない中国からアジア圏を中心にファッション業界で絶大な支持を得ているデジタルインフルエンサー、タオ・リャン、別名Mr.Bags。バッグへの愛と豊富な知識、
先見の明は随一。ブランドとのコラボレーションも続々発表し、SNSでの影響力も絶大。来日したMr.Bagsに突撃取材!


Tao Liang (Mr.bags)

1992年中国生まれ。高校卒業後、LAの南カリフォルニア大学に留学。その後NYのコロンビア大学へ。在学中の2011年Mr.Bagsとして中国版のSNSでバッグをカテゴライズして紹介する投稿を始めると、絶大な影響力をつように。今では数々のラグジュアリーブランドからのコラボレーション依頼が後を絶たない。現在北京在住だが、1年の半分以上は海外を飛び回っている

@mrbagss

(左) Mr.BagsのInstagramより。9月に参加した2019S/SのDiorのショー会場前にて。
(右) 5日間のミラノの旅にはDiorの「ブック トート」をはじめ合計12個ものバッグを携えて

News 01  ▷ なぜ、彼はブランドに愛されるのか?

数々のラグジュアリーブランドとコラボレーションしているMr.Bags。そのアーカイブスを一挙に紹介する

LONGCHAMP

1月7日に発売されたばかりのコラボレーション最新作は2019年の干支がテーマ。中国で「猪」は豚のことを意味しており、Mr.Bagsが愛用している「ル プリアージュ® キュイール ハンドバッグ」をベースにホ ワイトのラインで豚を描いている。「もとより私たちのバッグを旅や日常で愛用していたMr.Bags氏に注目しオファーが実現。彼がデザインを発案した最初のコラボレーションは即完売し、大成功でした! プロフェッショナルで知識があり、とてもクールな人物です」(アーティスティック・ ディレクター ソフィー・ドゥラフォンテーヌ)。

(上・右)ハンドバッグ 〈H20×W21×D12〉各¥63,000・(中)トラベルバッグ〈H35×W45×D23〉 ¥119,500/ロンシャン・ジャパン(ロンシャン)

TOD’S

©TOD’S

「出会いは数年前、Mr.bags氏がコレクション期間中にイタリア本社と工場に立ち寄ったことがきっかけです。 彼のブランドへの深い理解とプレゼンテーション能力は本当に素晴らしい! プロの側面はもちろん、やさしさあふれる人柄も魅力ですね」(ミラノPRチーム)。2018年6 月に発表された「ウェーブ バックパック」リミテッドエディションはその年の干支である犬をイメージ。ハンドルから下げられたタグは、まるで垂れた耳のようだ。前年の初めてのコラボレーションに引き続き、「X」のスティッチングも施されている。Mr.BagsのWeChat上のショップでは、なんとわずか1 時間ほどで在庫の300個が完売した‼

MONTBLANC

2018年7月、中国のバレンタインデーにあたる七夕に向けて、男女ペアで持つことができるメンズ1 型、ウィメンズ2 型のバックパックのカプセルコレクションを発表。七夕のロマンティックなアプローチの愛とコミットメントをテーマに掲げ、中国では即日完売するブティックもあったそう。Mr.Bagsは、モンブランでは初のウィメンズ向けとなったミニバックパックを斜め掛けにして愛用している。

News 02  ▷ Mr.Bagsのバッグの中身を教えて!

北京の新居に500個近くバッグを所有しているというMr.Bags。今回の来日用に選ばれたバッグは?

「旅行に出かけるときはいつも大きなボストンバッグ にミニバッグを入れています。今回のお供はディオールのクラッチバッグ(右) で、中にはセリーヌのミニ財布(左)のみ。その他領収書を入れるため、ロンシャ ンのポーチも持参。ウィメンズでも中性的なムードがするものは使いますね! 中国ではスマホ決済のため財布は持たない主義です」

News 03  ▷ Mr.Bagsを有名にしたSNSとは?

Mr.Bagsが多くの支持を集めるきっかけとなったSNS、「Weibo」と「WeChat」の概要を解説!

WeChat

880K Followers

メッセージと通話ができるアプリで、タイムラインを見るには相互の承認が必要。Mr.Bagsはここではバッグの紹介のほか、私物の公開もしている。コラボ商品を販売するストア「Baoshop」も設けているが、発売のたびに即完売してしまう。

Weibo

 5m Followers

中国最大のSNSで、ツイッターのようなシステム。Mr.Bagsは2012年頃から投稿している。ラグジュアリーブランドのバッグを中心に取り上げ、魅力的な点を紹介。友人に語りかけるような文面で、「あなたはどれが好き?」と締めくくる。

定番とトレンドが共存するからバッグは面白い!

Q.バッグに情熱を注ぐようになったのはなぜですか?

A.ファッションに漠然と興味はあったのですが、高校生の頃、家の近くに百貨店のレーン・クロフォードができて、さまざまな服に触れるようになりました。中国版『ヴォーグ』や『グラツィア』といった雑誌もよく読んでいましたね。卒業後はLAに留学し、たくさんあるショッピングモールに通うように。ラグジュアリーブランドの服はかなり高価ですが、アクセサリーだったら手が届く。中でもバッグは何十年も使い続けられる一方で、トレンドもわかりやすいアイテムなので面白いと思ったんです。

Q.そのバッグへの愛や知識が今多くの支持を得ているわけですが、それにはどのような経緯があったのでしょうか?

A.すごく可愛いバッグを買ったのに、使う機会がなくて放置している友人たちの姿を目の当たりにしたんです。そこで、僕はカテゴライズがすごく好きなので、どういうところが楽しいのか、どういうエピソードがあるのか、どういうシチュエーションで持ったらよいかといったタグづけをしてSNS上でバッグの特徴を整理して紹介してみることに。加えて、今後はやるかもしれない、といった予測もしました。それを中国版フェイスブック「人人網」にアップしていたらラグジュアリーブランドやバッグ好きの人たちにどんどんシェアされていったんです。その後ツイッターのような要素も併せ持つSNS「ウェイボー」にも同様のことを投稿すると、より多くの人に広まりました。

Q.中国の方々は、そもそもどのようなバッグの選び方をしているのでしょうか。

A.アメリカではラグジュアリーブランドのバッグは富裕層が持っている印象でしたが、中国では所得に関係なく、みんなが熱狂しています。お金を貯めて高級バッグを買おう、という意欲があり、情報を吸収するスピードもすごく速い。ストリートブランドももちろん人気がありますね。

よい点だけを挙げて、友人にすすめるように書く

Q.そのような状況の中国で、なぜ人気を獲得することができたのでしょうか?

A.中国にもファッションブロガーはたくさんいましたが、基本的にスタイリングの仕方など、ハウツーものが多かった。僕のようにバッグをカテゴライズする人はいなかったからかもしれませんね。でも、それだけではなく、よい面をフランクに書くことを心がけていることも大きいのではないでしょうか。僕は性格的に、プラスのパワーしかみんなに拡散したくないんです。人生においては、友人たちと一緒にリラックスして楽しく過ごすような時間が大切だと思っています。バッグの論評や比較をするのではなく、このバッグがいいよ、と友人にすすめるような感覚を重視しているんです。

Q.そうした姿勢に数々のブランドが感銘を受け、コラボレーションにつながっていったのでしょうね。

A.コラボレーションも犬、豚、青空など明るいコンセプトがほとんどです。売り上げもいいので、みんなそういうムードを求めているのかもしれません。

Q.中国語で書かれている文章を、日本人の私たちも読んでみたいです!

A.中国向けに絞っていたのは特に計画があったわけではなく、それだけで手いっぱいだったからなんです。でも、世界中の華僑の人たちが現地に広めてくれていることもあり、いろいろな国から問い合わせをもらっています。そこで、今後インスタグラムでMr.Bagsとしての公式アカウントを開設する予定です。今の@mrbagssではプライベートなことをアップしていますが、公式では中国で発表しているような内容にするつもりです。

Q.楽しみです!ほかに今後考えていることはありますか?

A.時計やアクセサリーについて、バッグ同様のコラムを書きたいと思っています。中国のファンの子たちがバッグの次にそこに目を向け始めているんです。これまで養ってきた分析能力を生かしたいです。

Do you know him?
 Instagram: @mrbagss
 WeChat: bagsbaoxiansheng

 Weibo: @Bags包先生

www.mrbags.com

SOURCE:SPUR 2019年3月号連載「Mr.Bagsを知っているか?」
photography: Yuka Uesawa text: Itoi Kuriyama