羽のように優美に広がるサテンドレスで飛翔する
袖やウエストに立体的なシャーリングが施された、軽やかでドレッシーなサテンドレスにジャージ素材のパンツを合わせ現代のムードを捉えたルック。彫刻のように無駄のない肉体がドレスの柔らかな質感とコントラストを描く。たくましさと優雅さを備えた多面体の魅力が開花する。
世界一過酷な競技を制する、若き才能
「普段のスタイルは圧倒的にスキニーパンツ派。ふわふわした服は好きじゃない」とクールに答えたのは近代五種とフェンシングの選手として、東京五輪とその4年後のパリ五輪での活躍を期待される才藤歩夢選手。手足の長い、均整のとれた恵まれたスタイルで、ハイブランドの服を華麗に着こなした。
日本ではあまりなじみのない近代五種という競技を才藤選手はひと言で「過酷」と表現する。それもそのはず、馬術、水泳、フェンシング、レーザーラン(射撃、ランニング)の五種目を一日で競い合うというハードな複合競技であるため。近代オリンピックの父、クーベルタン男爵が古代オリンピックの競技をならい創設したという、歴史と由緒ある種目でもある。日本での競技人口は少ないが、才藤選手が出合ったのは必然だった。
「父が近代五種の選手でした。体を動かすのはもともと好きだったので父に促されるまま幼い頃から泳いだり、走ったり、乗馬をやっているうちに気がついたら5種目をやっていた、という感じです(笑)。実は飽きっぽいので、いろいろな種目ができるのは自分に合っていたのかも」
近代五種やフェンシングの遠征で多忙を極める中、気持ちの切り替えに成功の鍵があると語る。
「トップ選手を見ていると、追い詰められて試合に臨むよりも、競技そのものを楽しんでいるような姿が印象的です。見る側としても、そういう選手を応援したくなりますよね。私も気持ちの切り替えをうまくして、そこを目指したい。ぜひ会場で競技を見ていただきたいのですが、迫力のある試合運びはもちろん、意外と選手の休憩時間も人それぞれで素が出て面白いと思います。私は誰かとしゃべってリラックスする派なんですけどね」
Ayumu Saito/さいとう あゆむ
1996年生まれ、東京都出身。近代五種&フェンシング選手。ソウル五輪に出場し、ロンドン五輪で近代五種の監督を務めた才藤浩を父に持つ。自身は近代五種とフェンシングの二刀流で東京、パリ五輪を目指すハイブリッド派だ。試合前はネイルサロンに行って気持ちを切り替えるのがルーティン。
model: Ayumu Saito photography: Akinori Ito〈aosora〉 styling: Fusae Hamada hair: Keiko Tada〈mod’s hair〉 make-up: Yuka Sumimoto〈MARVEE〉 interview & text: Michino Ogura