連載終了から25年を経てもいまだに多くの少女マンガファンの原点としてきらめく『ときめきトゥナイト』。デビュー40周年を迎える池野恋先生の特別コメントつきで秋冬のダークロマンスなトレンドにのせてあのときめきをプレイバック!
「蘭世といえば、ロングの黒髪ストレート。見た目も前向きな性格も当時の理想型」
連載当時、『りぼん』読者に圧倒的人気を誇ったヒロインの江藤蘭世。「『蘭世になりたくて髪を伸ばしてます』なんてファンレターもたくさんいただきました」と語る池野先生。そんなヒロインへのオマージュはルイ・ヴィトンのドレスで。大胆な花柄がピンクと水色のロマンティックなカラーで乙女心を描き出す。
「真壁くんが蘭世を好きなところ、蘭世が真壁くんを好きなところ。それは"すべて"。"存在そのもの"と言い換えることもできると思います」
運命の出会いによって導かれた俊と蘭世のロマンス。「俊に蘭世の好きなところなんて聞いたらすごい目でにらまれそう(笑)」というほどクールな真壁くんはスタジャン風のレザージャケットを主役に。大人っぽくドレスアップした蘭世は、チャーミングなビッグボウが彼女のキャラクターに寄り添って。
「もしも俊が王子として生まれていたら……真面目に父王の言いつけを守るでしょうね」
不良に見えて実は魔界の王様の子ども、という設定にも胸を熱くし、王子姿の真壁くんにときめいた読者も多かったはず。アクセサリーをきかせたボウブラウスの王子スタイルとアシンメトリーなツィードドレスで、モードな魔界のロイヤルカップルが誕生。
「ライバルの曜子は、蘭世とは真逆のルックス。ヨーコ犬に変身するようになって人気がでたことには驚きました(笑)」
池野先生が「曜子の存在あってこそ」と語る、蘭世の恋敵・神谷曜子。ヤクザの父親に溺愛されるお嬢様はガーリーな着こなしが得意。対する蘭世は小花柄のドーリーなドレスでヒロインらしい甘さを。
「恋愛はもちろん、涙あり、スリルあり、感動ありの全部のせみたいなお話が描きたかったんです」
シリアスな魔界での戦いの一方、曜子を絡めた恋の三角関係のコミカルさも『ときめきトゥナイト』の見どころ。三者三様のスタイルで、熱い火花を散らして。
「これから描いてみたいのは、今まで挑戦したことのない、主人公の年代がずっと上の人のお話やカッコいい女の子のお話。いろいろチャレンジしていきたいです」
池野先生の最近の楽しみは海外ドラマの「ゲーム・オブ・スローンズ」最終章だそう。ファンタジーへの飽くなき好奇心に次回作への期待が高まる。ドラキュラの娘である蘭世のマントスタイルは、きらめくスパンコールにときめく想いを閉じ込めて。星のネックレスは、真壁くんからのプレゼントへのオマージュ。
きっかけは、ドラキュラ映画。"運命の出会い"を描いてみたかった
あの頃、リアルタイムの『りぼん』読者だったならきっと真壁くんに恋に落ちたはず。同時に、魔界やドラキュラ、狼人間など、異世界への想像の扉も開いてくれた『ときめきトゥナイト』。今年、作者の池野恋先生はなんと作家生活40周年を迎える。少女マンガ史に燦然と輝く胸きゅんストーリーはどのように生まれたのか?
「連載開始前に『ドラキュラ都へ行く』(’79)というコメディ映画が好きで。コミカルだけどカッコいい吸血鬼のお父さんを描いてみたかったんです。だから最初にキャラが決まっていたのは実は父親の江藤望里。蘭世はそのあと考えて、前向きな性格や黒髪ストレートなど自分にはないものを詰め込みました。俊も理想を盛り込んで無口でクールだけど実は心の中は熱い!なんて設定にしましたが、実際は一緒にいて楽しい明るい人のほうがいいですよねえ(笑)。真壁俊があんなに人気になるとは思いもしませんでした」
少女マンガのヒーローのひとつの理想型となった真壁くん。連載終了から19年を経て、彼の視点からプロポーズの時を描いた『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』は特に話題を呼んだ。
「あえて読者の想像におまかせしていたプロポーズを描けたのは、本編から時間がたっていたから。カルロを絡めて俊の気持ちを表現することができてとても楽しかった。中には描かないでほしかった、という意見もありましたが、それもわかります。描き下ろしストーリーを出したり、さまざまな取りあげ方をされたりするのもそんな熱い読者の方々の応援があったからこそです」
新たにリメイク作品を描くなら?と問うと「蘭世の運命の相手がもしもカルロだったら……なんてテーマにも興味がありますね」と語った池野先生。ときめきは、まだまだ止まらない!
〈 CAST 〉
真壁俊/伊藤あさひ
俳優。2018年のスーパー戦隊シリーズで初主演を務める。最近では、連続ドラマのほか長身を生かしてメンズ誌にも登場する19歳。
江藤蘭世/福士マリ
モデル。ファッション誌や東京ガールズコレクションなどで活躍する15歳。手脚の長さとスイートなルックスでSPURでも活躍中。
池野 恋 PROFILE
1979年デビュー。’82年から’94年まで連載された『ときめきトゥナイト』(全30巻・集英社)は少女マンガ史上に残るヒット作。セルフパロディ『ときめきミッドナイト』のほか、番外編シリーズの新刊『ときめきトゥナイト 江藤蘭世の宝箱』、自らの漫画家人生を振り返るエッセイコミック『ときめきまんが道ー池野恋40周年本ー』も好評発売中。
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SOURCE:SPUR 2019年9月号「ときめき★ダークロマンス」
photography: Osamu Yokonami styling: Yuuka Maruyama〈makiura office〉 hair: Takayuki Shibata〈SIGNO〉 make-up: DAKUZAKU〈TRON〉 model: Mari Fukushi, Asahi Ito, Puck cooperation: BACKGROUNDS FACTORY