秋の初めはポエトリー・スタイリング 。ことばが私を追いかける

ふと出合う言葉が、その時着ていた洋服との一生の思い出になることがある。 それは、洋服に込められたメッセージかもしれないし、これから生まれる詩や、デザイナーの名言かもしれない。モードはいま、ポエティックな引力で、私たちをときめかせる。

 

この空の向こうに"永遠"があるんだよ。今晩そこに行かなくちゃ

ドレス¥402,000/ヴァレンティノ インフォメーションデスク(ヴァレンティノ - アンダーカバー)

クチュールとポエムを組み合わせ、世にもロマンティックな愛を描いたヴァレンティノ。メゾンのコードを感じさせるミニドレスをキャンバスに、高橋盾によるグラフィックとグレタ・ベッラマチーナの詩をのせた。夢心地に誘う、究極の一枚に酔いしれて。

自由とは勝ち取るもの ーーガブリエル・シャネル

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トップス¥236,000・プリーツロングスカート¥549,000・チェーンベルト¥345,000・イヤリング¥113,000・ネックレス¥165,000・ブレスレット¥137,000/シャネル

胸元に大きなCCロゴを配したトップスはポップなカラーリングと柔らかな手ざわりで思わず笑みがこぼれるほどの愛らしさ。シュプールを描くスキーヤープリントのスカート、デコラティブなハートが目を引くアクセサリーと合わせて、チャーミングな装いに。カール・ラガーフェルドとヴィルジニー・ヴィアール。ふたりで手がけた最後のコレクションをまとい、メゾンの創業者ガブリエル・シャネルの名言を、もう一度胸に刻みたい。

シスターフッド・イズ・パワフル

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Tシャツ¥90,000・ロングスカート¥360,000・サドルベルト¥130,000・ピアス(両耳)¥79,000・ネックレス¥110,000・ソックス¥36,000・靴¥118,000/クリスチャン ディオール(ディオール)

フェミニズム的なスローガンを当初から打ち出しているマリア・グラツィア・キウリ。50年代の"テディ・ガール"に着想した新作では、アメリカの女性詩人ロビン・モーガンによる書籍のタイトルをTシャツに採用し、女性たちの団結によるパワーを讃えた。

自由な女は、女ではない ーーコレット

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ジャケット¥440,000・ジャンプスーツ¥440,000・中に着たシャツ¥93,000・ネクタイ¥35,000・イヤリング¥126,000・リング¥118,000・パンプス¥88,000/グッチ ジャパン(グッチ)

ダブルブレステッドのマスキュリンなジャケットに、裾のバルーンシェイプが特徴的なジャンプスーツで倒錯的な正装を。口紅で書くのは、フランスの作家コレットが、夫のゴーストライターとして発表した『パリのクローディーヌ』の一節。若い娘ならではの無邪気な女性観を吐露したこの言葉は、後年にジェンダーの垣根を越えて男装したコレットの痛烈な皮肉のよう。

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ブラウス¥298,000・パンツ¥175,000/イザ(ニナ リッチ)

新生ニナ リッチは、詩的でモダンな美しさを見事に表現。オーガンザのトップスにはパネル状のフリルスカーフを前身頃につけ加え、エフォートレスでありながらドラマティックな逸品に仕上げた。初谷むいの書き下ろし短歌と、みずみずしい感性で響き合う。

歌・初谷むい
はつたに むい●1996年生まれ。北海道出身。大学在学中にデビュー。独特の語感とリズムで青春のきらめきを捉えるセンスが絶品。歌集『花は泡、そこにいたって会いたいよ』(書肆侃侃房)がある。

書・雪下まゆ
ゆきした まゆ●1995年生まれ。イラストレーター。写実的でありながらデフォルメされた、個性的なイラストに定評がある。広告ビジュアルや映像のほか書籍の装画・題字などでも活躍。

すべてを肯定してくれる「YES」

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ドレス¥592,000・花のレザーピアス(参考色)¥55,000・花のレザーネックレス¥95,000・チェーンネックレス¥54,000・ブレスレット (左手)¥55,000・(右手・参考色)¥55,000・サテンミニバッグ¥175,000・パンプス¥128,000(すべて予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ) その他/私物

憂鬱な雨の朝、ふと見つけた落ち葉にYESの文字。偶然見つけた言葉が、世界をポジティブに彩ってくれることがある。オノ・ヨーコとジョン・レノンの運命的な出会いのように。「ANATOMY OF ROMANCE」と題したプラダのコレクションを代表するフラワードレスは、ロマンスの力学を信じたくなるような一枚だ。

年年歳歳花相似 歳歳年年人不同ー ねんねんさいさいはなあいにたり さいさいねんねんひとおなじからず

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ドレス¥437,000・アシンメトリーピアス¥52,000/ジルサンダージャパン(ジル サンダー)

「毎年花は同じように咲くけれど、人は同じではない」。人の命の儚さを歌った唐代の詩人、劉希夷の「代悲白頭翁」の一節が降り注ぐ室内で、ジル サンダーのブランケット風ドレスをまとい、オリエンタリズムへの憧憬を抱いて。

書・今子青佳
いまこ はるか●1991年生まれ。書家。毎日書道展U23部門奨励賞受賞。筆のみならず、指やペン、鉛筆などを用いた独自の書体で言葉を作品化。個展のほかライブパフォーマンスも精力的に行なっている。

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SOURCE:SPUR 2019年9月号「ことばが私を追いかける」
photography: Takako Noel 〈L MANAGEMENT〉 styling: Naomi Shimizu hair: Koichi Nishimura 〈angle〉 make-up: Masayo Tsuda 〈mod’s hair〉 model: Nel prop styling: Shizuka Aoki 〈TRON〉 artwork: Ryohei Kaneda 〈YES Inc.〉

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