“可愛くて、ちょっとへん”がドレスコード
ダークロマンティックなトレンドをSPUR流に解釈すると、“プリティだけどちょっとアグリー”なバランスがちょうどいい。エクストリームなキラキラ、フリルに、幻想的なフェザーやレザー。6つのゴス映画に着想したスタイリングが、ホリデーシーズンの一夜の夢へと誘います。
普通なんてつまらない自由奔放なマーメイドのように
『恋する人魚たち』でシェールが演じた破天荒な母親のワードローブを、ガーリーにアップデート。ビーズに、スパンコールに、クリスタル。きらめくパーツをびっしりと刺しゅうしたミニドレスには、イソギンチャクのようなフリンジキャップを合わせて、さらなるドレスアップを。
“それ”が見えたらパーティの始まり
プリーツを施したストライプのラッフルドレスを主役にすれば、ハロウィンにマッチした、モードな“ペニーワイズ”スタイルが完成。禁欲的なホワイトシャツと、白黒に染まった胸元のフェザーで不穏なムードを匂わせて。ヒントは宙に浮かぶ赤い風船。さあ、あなたには“それ”が見える?
孤独な少女に力を与える赤いウェディングドレス
チュールにモヘアにパテントレザー。重層的な赤のスタイリングで、内なるパッションを爆発させたい。次シーズンの流行色、グリーンをさし色に、一歩先行くナードなおめかし。
エドワード、今年も雪が降るかしら
大きなラペルが目を引くシャイニーブラックコートは、心やさしき人造人間、エドワード・シザーハンズのフェティッシュな衣装とリンク。ネイル部分だけ切り取ったグローブを添えて、コメディ要素も忘れずに。
スーパーヴィランの逆説的モードな遊び
悪役が時に主人公になるように、悪趣味な味つけが魅力的に映ることがある。フェザーが躍るコートにはチャンキーなベストとツヤのあるシャツ。ドットにはチェック柄を。異個性をぶつけ合うことで生まれるエネルギッシュなモードを体感して。
ブラックユーモアは現実を生きるための解毒剤
スレンダーな黒いコートのオープンスリーブから、白シャツのランダムなレーススリーブをのぞかせて。お化け一家の一人娘、ウェンズデーが大人になったら、アダムス夫妻の紳士的かつレディライクなミックスマッチをユーモア交えて楽しむはず。
SPECIAL MOVIE
プリティ・アグリーな映画の世界へ
ホリデーシーズンに向けて、ファッション的にも押さえておきたい“プリティだけどちょっとアグリー”な新旧6作品をご紹介。おしゃれのヒントをぜひ見つけてみて!
『恋する人魚たち』(’90)
シェール、ウィノナ・ライダー、クリスティーナ・リッチが母娘を演じたコメディ・ドラマ。いま観ると豪華すぎる! 奔放な母、反抗する姉、子ども扱いされたくない妹。それぞれ個性が強くて、ぶつかりながらも結びついている。バスタブはその象徴だ。恋愛模様もチャーミング。清楚な衣装のウィノナもいいが、率直で自由で、毎日の料理にも可愛さを求めてしまうシェールの母親像が素敵。
『ビートルジュース』(’88)
ティム・バートン監督とウィノナ・ライダーが出会った大ヒット作。ウィノナが演じるのは幽霊がとりつく家に引っ越してきた一家の娘。そのゴス少女ぶりで、一躍ファッション・アイコンとなった。赤のドレスはなんと花嫁衣装! タイトルロールのお騒がせ幽霊役に怪優マイケル・キートン。音楽もいっぱいで、「バナナボート」に乗せて人々が踊らされる名シーンも必見。
『ジョーカー』(’19)
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ジャック・ニコルソンやヒース・レジャーが演じてきたDCコミックの悪役が、現代の名優ホアキン・フェニックスによってよみがえる。今回はジョーカーが主役。コメディアンを目指す男が傷つき、失望し、暴力に飲み込まれていくさまは強烈そのもの。そのメイクが涙でにじむ。オレンジと緑の衣装も印象的。トッド・フィリップス監督作はベネチア国際映画祭で最高賞を受賞。(公開中)
『IT/“それ”が見えたら、終わり。』(’17)
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原作はスティーブン・キングの小説。1990年に映像化されると「ピエロ恐怖症」を引き起こしたほど、子どもたちを襲うピエロ、ペニーワイズ(ティム・カリー)は恐ろしかった。ビル・スカルスガルドが演じるペニーワイズは、どこかクラシックな装いが新しい。思春期の通過儀礼のようなストーリーは、まさにもうひとつの『スタンド・バイ・ミー』(’86)だ。アンディ・ムスキエティ監督。
『シザーハンズ』(’90)
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奇妙で滑稽で、物悲しさに満ちた永久不滅のラブ・ストーリー。両手がハサミの人造人間エドワード(ジョニー・デップ)は、どうしても自分と周りを傷つけてしまう。一度は町の人気者になり、やさしい少女キム(ウィノナ・ライダー)と恋に落ちるが、事故のせいで人々に追われることに。ティム・バートンの「ツギハギ」の美意識が結実したエドワードのコスチュームが最高。
『アダムス・ファミリー』(’91)
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『恋する人魚たち』でスクリーンデビューしたクリスティーナ・リッチは、本作のウェンズデー役で正真正銘のゴスっ娘アイコンに。大きな屋敷に暮らす不気味な一家をコミカルに、スタイリッシュに描いたのはバリー・ソネンフェルド監督。ここからゴスは一気に90年代アメリカのポップ・カルチャーに浸透していった。三つ編みウェンズデーは周りの「普通」に反抗するシンボルだ。
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SOURCE:SPUR 2019年12月号「プリティ・アグリーな夢の誘い」
photography: Takako Noel〈L MANAGEMENT〉 styling: Arisa Tabata hair & fancy wigs: Tomi Kono make-up: Masayo Tsuda〈mod’s hair〉 model: Suzi prop styling: Chiho Hirano〈CHOCOLATE JESUS Prop and Studio〉 typography: konomad text: Mari Hagihara