モードな人の辞書には、無難なスタンダードなんて言葉は存在しない。どこかにベーシックさはあるものの、脇役ではなくて主役。デザイナーたちのクリエーションが細部に宿るアイテムにこそ、この先何十年もの変わらぬ愛を誓いたくなる。そんな当たり前じゃないニュースタンダードを大人になった今だから自分のものにしてみませんか?“一周回って”選びたくなるマスターピースにあなたのモード愛を再発見してほしい。
2020年のためのモードな新定番
20年代に向けて。新たなスタイルを確立するための軸となる“当たり前じゃない”スタンダードを厳選。
LOEWEのビッグサルエルデニム
ジョナサン・アンダーソンがクリエイティブ・ディレクターに就任したファーストシーズン以来、モダンなリアルクローズの一翼を担うアイテムとして欠かせないデニムパンツ。今季はオーバーウエストを折り返してボタンで留めるサルエルタイプにアップデート。深い股上のユーモラスなシルエットながらノンウォッシュデニムでクリーンな印象に。スタイリングバランスをいつもモードに振り切る軸になる新定番だ。
Maison Margielaのカシミヤコート
毎冬、メゾンの静かなるスタンダードといえば、ダブルフェイスのカシミヤのコート。シーズンコンセプトにしたがってディテールやカラーは変化するものの、ジェンダーやスタイルにかかわらず着る人の個性を引き出す、というメゾンの哲学を象徴するピース。しっとりとなめらかな質感のカシミヤで仕立てたトレンチコートはドレスのようにシックでグラマラス。その魅力は、触れた人だけが知る秘密。
BALENCIAGAのB.スモール バッグ
艶やかなシャイニークロコダイルのエンボスレザーとエイジドゴールドのイニシャル。クラシカルな“顔”に隠されているのは、厚みのある4層のコンパートメントが重ねられた機能的なプロファイル。クロスボディにできるストラップと、クラッチのように扱えるリストレットでオケージョンに合わせて表情もチェンジ。欲張りで身軽な、レディのエレガンスをモダンにアップデートしたら、きっとこんなカタチ。
PRADAのプリーツスカート
たった一本のラインで、モードを表現するのはプラダのプリーツスカート。チェック柄のハリのあるウール地をアコーディオンプリーツに仕立てたトラッドなスカートは、ウエストゴムに入ったブルーのラインとスポーティなロゴで、モダンなハイブリッドを完成させる。毎シーズン丈や柄を少しずつ変えてアップデートされる隠れた定番は、プラダらしいグッドガールスタイルの核心を突く。
GUCCIのフェルトハット
ラビットファーをミックスしたフェルトの柔らかなタッチが印象的なハット。ヴィンテージのように少しだけけば立つ質感と、カットオフされたラフなグログランリボンは、計算しつくされた無造作感をさりげなく演出。エレガントになりがちなハットをスタイリッシュに仕上げた。ブラウン×ブルーの上品なコントラストも美しく、メンズのピースながら、ジェンダーレスにスタイリングの可能性を広げてくれる。
BURBERRYのテーラードジャケット
ラペルの繊細なステッチでクラフツマンシップを、肩やバックスタイルのシャープなフォルムでブランドのハウスコードを、ジャケットからのぞくパネルスカーフでリカルド・ティッシのモダニティを語る。バーバリーのテーラードジャケットは雄弁だ。イタリアンウールの上質なジャケットの裾に、ブランドロゴのジャカード織りスカーフを配して丈を長くしたデザインは、パンツともスカートともバランスをとりやすい。着ることで女性の体をより美しく再構築してみせる技術の粋を集めた一枚。
3.1 Phillip Limのシェルパジャケット
オーストラリアンメリノウールを使用し、ふわふわの羊のような質感を作り出したウールシェルパジャケット。ザ・ウールマーク・カンパニーとのコラボレーションで開発された素材はウールを50%以上と配分を高くし、リッチな厚みでラグジュアリーとスポーティのミックスマッチを実現。サステイナビリティを意識しつつ、ショート丈や肩まわりのラインなど洗練されたフォルムで、日常のスタンダードをモードに進化させた。
JIL SANDERのシャツドレス
マスキュリンとフェミニニティの追求という、メイヤー夫妻の命題を象徴する一枚。毎シーズンシンプルながらオリジナリティある素材使いやディテールでファンの多いジル サンダーのシャツドレス。今季はシルクコットンの上品な生地でボディを仕立て、ワイド幅の袖口にリネン混のティークロスをアタッチ。ブルーの清潔感あるラインと微妙に素材感を変えた白シャツのツイストは、クローゼットの永久定番にふさわしい完成度。
HERMÈSのゴールドネックレス
1938年に誕生したシルバーブレスレット「シェーヌ・ダンクル」に着想を得て、ピエール・アルディが新たにデザインしたゴールドネックレスの新作「ニュー・ファランドール」と「エシャぺ」。シェーヌ・ダンクルのモチーフを繊細なゴールドでかたどることでエレガンスが際立つデザインに。留め具の位置で自在に表情を変えられるなど、Tシャツからドレスまでさりげなく着こなしをアップグレードしてくれる存在感は、一度まとえば離れがたい魅力が。
CELINEのボーダーニット
エディ・スリマン自身が着ることも多い、いわば彼の定番でもあるマリンアイテム。コレクションの世界観を投影するためのモチーフとしてこれまでも用いられてきたこの普遍的なボーダーは、メゾンの高いニット技法によって、ラグジュアリーなアイテムへと昇華。レディスはクロップド丈とショルダーのボタン使いで軽やかに、メンズは全面ボーダーでクラシカルに。ユニセックスで楽しめるそれぞれのデザインは、ボーダーピッチとシルエットの美しさでベーシックスタイルに特別なオーラをプラスする。
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SOURCE:SPUR 2019年12月号「一周回ってこれが私のニュースタンダード」
photography: Mitsuo Okamoto styling: Tomoko Iijima hair: KENSHIN〈Epo Hair Studio〉 make-up: Masayo Tsuda〈mod’s hair〉 model: Ellen, Pim, Valerie, Tent cooperation: STUDIO BASTILLE