どんなときも私たちは、ファッションから力をもらっている。それは時に心を高揚させ、行動する勇気を与え、可能性を信じさせるもの。夢見る力の始まりは、春のモードから。デザイナーやコレクション、メゾンの背景にあるカラフルなコードを読み解けば、もの言うファッションがあなたへと贈るエールがきっと聞こえてくるはず。
「武器より花を」
ドレス¥1,716,000/マーク ジェイコブス カスタマーセンター(マーク ジェイコブス)
ハリのあるラッフルを幾重にも重ねた大胆で構築的なシルエットのフラワーチャイルド。ドレスアップすることの純粋な喜びを着ているかのようなドレスは、こんな時代だからこそ、平和のために闘う女性のユニフォームに。
「あなたの最良の部分、それは内側にあるもの」
シャツ¥239,000・ベスト¥298,000・スカート¥373,000(すべて予定価格)・靴¥127,000/ルイ・ヴィトン クライアントサービス
(ルイ・ヴィトン)
ベル・エポックを着想源にトランスジェンダーのアーティストSOPHIEの歌う「It’s Okay to Cry」にのせて発表された新作コレクション。ノスタルジックなチェックシャツはたっぷりとしたペザントスリーブに、レトロなニットジレはレインボーカラーのスパングルに覆われ、古きよき時代をブルジョアタッチで解釈。個性を際立たせながらも包容力のあるデザインは、SOPHIEの歌詞のようにありのままの自分を愛する自信を与えてくれる。
「一輪の花をまとうには、百の方法がある」
ブラックドレス¥2,889,000・頭につけたブローチ 各¥105,000・靴¥137,000/シャネル
女性とファッションの可能性を信じるガブリエル・シャネルの言葉。彼女がつくり上げたメゾンのコードは、モードの自由を約束してくれる。可憐なリトル ブラックドレスは、パフスリーブ、ウエスト、デコルテをいっぱいのリボンで飾りつけて。肌をほのかに透かすオーガンザのセンシュアルな表情が、大人のロマンティックスタイルを完成。
「不可能なんて、何もない」
(モデル右)シャツ¥185,000・カーディガン¥143,000・パンツ¥115,000・靴¥110,000・(モデル左)ドレス¥348,000・カーディガン¥185,000・イヤリング¥63,000・靴¥79,000/フェンディ ジャパン(フェンディ)
カール・ラガーフェルドが職人たちとさらなる高みを目指した際に生まれたというフェンディ家の格言は、最新ランウェイの中でもいかんなく発揮された。架空の花々をプリントしたドレスは繊細なチュールで切り替えられ、さらに別素材に花柄がリフレインし、花をかたどる繊細なレースで裾をフィニッシュ。ブラウンベースのギンガムチェックも絶妙なカラーリングをオーガンザにのせてグラデーションに。それは、曇り空も明るい夏の太陽が輝く空に変えるようなポジティブなパワーに満ちている。
「伝統を深く理解していなければ、革新を起こすことはできない」
ドレス¥1,200,000(ヴァレンティノ)・ピアス¥154,000・サンダル¥123,000(ともにヴァレンティノ ガラヴァーニ)/ヴァレンティノ インフォメーションデスク
メゾンのクラフツマンシップを深く理解するピエールパオロ・ピッチョーリだからこそ語れた言葉。春夏コレクションにはこの理解から生まれた“引き算”の美学が込められている。揺れる花びらのようにしなやかなシルクジョーゼットが、デコルテまわりはラッフルで繊細に、スカートはビッグボリュームで大胆にフリュイドする。
「力強い女性らしさは、あなたの自信の中にある」
ブラウス¥210,000・スカート¥160,000・スカーフ¥64,000・帽子¥128,000/メゾン・ディセット(アーデム)
20世紀初頭の女性写真家ティナ・モドッティと得意のヴィクトリアンスタイルを融合させた今季。ティナが旅したメキシコの色彩やカリブ海のハイサマーのカラーパレットがヴィクトリアンなフラワープリントに落とし込まれた。伝統と遊び心をミックスしたスタイルはフリーダ・カーロのように華やか。デザイナーのアーデム・モラリオグルの言葉とともに凜と、前を向いて。
「前へ──」
ドレス¥1,750,000・中に着たコルセット¥700,000・イヤリング¥74,000(すべて予定価格)/バーバリー・ジャパン(バーバリー)
トーマス・バーバリーの家紋に使われていたユニコーン。この伝説上の動物にまつわるシェイクスピアの戯曲の一節を刺しゅうしたホワイトロングドレスは、身頃の一部から脚を出し、スカートをまるでトレーンのようにして着るデザイン。繊細なレース使いやスワンプリントで現代のピュアネスを表現する。ユニコーンとともにバーバリー家のエンブレムに刻まれた「プローサム(ラテン語で“前へ”)」の言葉と、新しい季節を切り拓きたい。
「明日は明日の風が吹く」
ブラウス¥340,000・スカート¥95,000・頭に巻いたスカーフ¥44,000・ベルト¥90,000・バッグ¥340,000・メダルネックレス¥75,000・ロングネックレス¥185,000(すべて予定価格)/セリーヌジャパン(セリーヌ バイ エディ・スリマン)
’70sサントロペやジェーン・バーキンなどアイコニックなフレンチモードを描いた今季。若き日のバーキンを彷彿とさせるのは、デニムスカートのロマンティックなボヘミアンスタイル。彼女の好きな言葉、スカーレット・オハラの「明日は明日の風が吹く」のように、ノンシャランな気分でハイモードを着こなせば、きっとバラ色の明日に近づけるはず。
SOURCE:SPUR 2020年4月号「この春は服から、最大級のパワーを! モードからのエール」 photography: MARSA styling: Naoko Shiina〈tiber garden〉 hair & make-up: Hiroko Ishikawa model: Catharina, Omi, Freya cooperation: BACKGROUNDS FACTORY, PROPS NOW