ここはなじみの洋食店。クラシックな内装を保ちながらも、“新しい生活様式”を創意工夫でポジティブに実践中。毎晩やってくる親子3世代の常連ファミリーも食事マナーに独自のルールがあるようで……。
筒型フェイスシールド
テーブル席に座ると、頭上から降りてくるのは筒型のフェイスシールド。ゆとりのある設計とクリアな視界でストレスなく食事を楽しみ、会話ができる!? 母は波状型のプリーツトップスとスカートで体を包み、対する娘は総スパンコールのタイトなロングドレスで優雅に。ミニマルなデザインでありながら、ともにボディ・ファーストの着心地に脱帽する。いかなる世代にもフィットし、その人生の歩みを肯定してくれるような服には、どこかフューチャリスティックなムードが宿る。
家族もソーシャルディスタンス
かつての富裕層の食卓のように大きなテーブルを配置。思春期の孫を交えたファミリーディナーにはほどよいディスタンスを取り入れて。祖母がまとうのは、ヴィンテージピースを修復し、新たなデザインを加えてアップサイクルしたメゾン マルジェラの「レチクラ」シリーズ。裾についたラベルが目印に。母はシルバーのスパンコールトップスにワンショルダードレスをレイヤード。レザートップスにクレージュのミニワンピースを合わせた孫を中心に、今宵のドレスコードは懐古的な未来の装い。
ウェイターがアバターロボットでサーブ
給仕するのはアバターロボット「MELTANT」に乗り移ったウェイター。「MELTANT」は人により遠隔操作され、誰でも、どこからでも仕事や生活が可能になる。現在は危険環境向けに開発されているが、近い将来、人の繊細さや気遣いのニュアンスまで伝えられるアバターとして日常的に活用される世界がやってくる。そんなときは、祖母が着こなすニットのパーツや、孫が羽織るケープディテールのジャケットなど、コンセプチュアルなデザインを年齢を超えて自由に着こなしていたい。
食事用グローブを持参
夢に向かって旅立つ娘と祝杯を。グラスを持つ手もとは室内用グローブをスタイリング。母は肩パッド入りのシャツドレスで力強く華やかに。時代の機微を読みとって、グローブ一体型のセカンドスキン的なボディスーツとレイヤリング。肌を見せなくとも、大人のセンシュアリティはにじみ出るもの。コケティッシュな魅力を備え始めた娘が着るのは、サステイナブルなモードを牽引するマリーン・セルのシックなドレス。ショッキングピンクのパンプスに秘めたる野心を忍ばせて。
SOURCE:SPUR 2020年10月号「外食ライフの近未来」
photography: Fumi Homma styling: Shotaro Yamaguchi〈eight peace〉 hair: Kazuhiro Naka〈KiKi inc.〉 make-up: NOBUKO MAEKAWA〈Perle〉 set design: Akihiro Yamaya model: Inge, Natalia S, Athena cooperation: MELTIN