新しい世界では、愛の育み方もかたちを変えていく。他人と2メートルの距離をあけて接することが浸透した世界で恋に落ちたなら。アリアとカイが紡ぐ、静かな架空の物語。揺れ動く心を秋服が華やげる。
屋上からサイン
隣のビルの屋上で日向ぼっこする女性が気になっていたカイ。今日もいるかな? 窓を開けると、彼女は白いフェルトハットを被り、重量感のあるピンクのコートとボウブラウスで着飾って踊っていた。デニムの柄とリンクするバンダナにメッセージを託して。
触れそうで触れない距離
初めての待ち合わせは、十分に距離が取れる川べりで。アリアは腕を広げると蝶のようなシルエットを描くドレスにカチューシャをつけて装いを凝らして向かう。現れたカイは言葉少なに手を差しのべる。せせらぎの音が心地よく、やさしい時が流れた。
赤い糸は自ら結ぶもの
家の近所を散歩する日は、お互いに糸を結んで距離感をキープ。白からタータンチェックに切り替えられ、ビジューオーナメントで縁取りされたサックドレスは、パフスリーブシャツと合わせて丸みのあるシェイプを構築。ニットタイツでドーリーに。カイのベストも自然とアリアの佇まいにマッチ。もどかしい距離が、逆にふたりの心を近づける。
ガラス越しの告白
突然、「10時に例のカフェで」とメッセージが来たので待っていると窓越しから自作のTシャツで愛を伝えるアリアの姿が。艶やかなシルクサテンのシャツをさらりと羽織り、いつものジーンズ姿で。胸元のネックレスが彼女の表情をひときわ輝かせていた。
バルーンに響く愛のうた
晴れて恋人同士となったふたりは公園へ。せっかくだから近づきたい、というアリアのリクエストにこたえてカイは特大バルーンを用意。レザーのフーディコートに、黒、イエロー、ベージュに配色されたプリーツスカートを合わせフェミニンなスポーティスタイルに。アウトドアでもエレガンスを忘れないのはアリアの恋心。
ともに生きる
西日がアパートメントに注ぎ込み、ふたりを照らす。肌ざわりのいいニットパンツにミッソーニの幾何学柄カーディガンを羽織り、エフォートレスながらも遊び心のあるスタイルに。極上のカシミヤソックスはふたりのお気に入り。ここは、守られた場所。
SOURCE:SPUR 2020年10月号「間隔2メートルで恋をする」
photography: Hiroko Matsubara styling: Tomoko Iijima hair: HORI 〈bNm〉 make-up: DAKUZAKU 〈TRON〉 model: Aria Polkey, Kai