2020.10.05

大げさなコンセプトよりも大切なもの。sodukデザイナー・工藤司インタビュー

「soduk」と書いて、スドークと読む。“ソドゥーク” ではない。スドークは、日本発のエマージングブランド。デビュー2年ながら、テーラードジャケットやシャツといった定番のアイテムにひねりを加えたスタイルで、モードシーンを中心に支持を獲得してきた。

今回、新作である2020-21年秋冬コレクションの立ち上がりに合わせて、デザイナーの工藤司にインタビューを行った。女優の太田莉菜を起用し、SPUR.JPのために工藤が撮り下ろしたビジュアルと共に、デザイナーのこれまでの軌跡、そしてブランドの魅力に迫る。

アントワープでの経験、そしてパリでの運命的な出会い

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シャリ感のある素材が印象的な秋冬の新作。ドローストリングで、シルエットを自由に調整できる。コート¥50,000


デザイナーの工藤は、沖縄県那覇市出身。祖母の影響でファッションに興味を持ち、東京にある某有名ファッションの専門学校の進学を志すも、「在学生の人たちの、全身気合いが入ったファッションに気後れした」という工藤。それを機に視野を海外に広げ、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学。その後パリに拠点を移し、ジャックムス、Y/プロジェクト、そしてJW アンダーソンのスタジオでデザインとパターンの研鑽を積んだ。

「ジャックムスのデザイナー、サイモンには自分から何度もアタックしてアシスタントに就かせてもらいました。僕にとっては、ジャックムスでの経験がデザイナーとしての基礎になっています。例えばデザインプロセス。サイモンはデッサンを描かず、トルソーに布を当てながら即興でシルエットを作っていく。この恣意的なアプローチ、そしてそれによって生み出されるオーガニックな世界観には強く影響を受けました」。

クードスの立ち上げ、スドークとの相互関係

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ゆったりとしたコクーンシルエットが、ストイックな印象。ボアコート¥100,000


帰国後、2017年にメンズブランドである kudos(クードス)をローンチ。ブランド名は自身の名前、そして英語で「称賛」を意味する単語から取られている。その後2018年にウィメンズラインにあたるスドークをローンチ。ここまで読んで、勘の良い人は気づくかもしれない。そう、スドークとクードスは背中合わせになっているのだ。

ファーストシーズンは比較的ユニセックスなデザインが多かったスドークだが、2020-21年秋冬コレクションを見てみると、格段にデザインの幅が広がっているのが見て取れる。格子柄に編んだニットのセットアップや、プリーツスカート、ニットのロングドレスなど、これまで以上にフェミニンな要素を積極的に取り入れているのも特徴的だ。

「クードスもスドークも、はっきりと性別を限定していないという点では同じです。ただクードスは、よりパーソナルな視点でものづくりをしているので、よりメンズライクなスタイルが多いです。一方でスドークは、よりデザイン性の高いものを主軸にしています」。

デザインインスピレーション、“思いつき” のデザインプロセス

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soduk 2020-21年AWルックブックより。ニットトップ¥28,000・ニットパンツ¥35,000 Photography by Yukihito Kono


スドークにはシーズン毎のコンセプトがない。それどころか、イメージの元となるいわゆるムードボードすら作らないという。

「特に体系的なデザインプロセスはありません。何か気になるもの、目についた印象的だったものを取り入れて一着ずつ作り、その集合体から共通項を見つけていくような感覚でしょうか。大げさなコンセプトよりも、着心地であったり、身体のシルエットを美しく見せてくれることの方が大事だと思うんです。普段生活していて目に入ったもの、特に街で見かけた女性の装いに興味があります。いかにもファッションが好きな人というより、リアリティのある人の普段着にヒントを得ることが多いです。公民館でピラティスのクラスに参加しているマダムとか」。

デザイナー、そして写真家としてのブランドとの向き合い方

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soduk 2020-21年AWルックブックより。ジャケット¥50,000・ニットトップ¥25,000・プリーツパンツ¥28,000 Photography by Yukihito Kono


スドークのルックブックにも、工藤自身のこだわりが凝縮されている。ビジュアルディレクションからモデルの起用、時には撮影までをも全て自身で行うことも。今シーズンのルックブックでは、工藤が信頼を寄せる写真家の河野幸人が撮影を手がけている。

「もともと、洋服作りと同じくらい、イメージ作りに関心がありました。シーズンビジュアル、ルックブックともにこれまでほとんど自分で写真を撮ってきました。特にこだわりが強いのは、モデルキャスティング。まず、撮影する場所に住んでいるモデルを起用するのが大前提です。今回秋冬のビジュアル撮影では、公私ともに親交がある太田莉菜さんにモデルをお願いしました。意志が強く、自分の好きなものを熟知している女性に強く惹かれます」。

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バイカラーで仕立てたフロントにあしらわれた2つのジップによって、シルエットを変えて着用することができる。ブルゾン¥50,000


取材終わりに、スドークを取り扱う恵比寿のセレクトショップ「3-9-12 HIGASHI」に案内される。洋服を実際に手にとって見ると、精巧なディテールに目を奪われる。毎シーズン展開しているというデニムは、フロントにかけてシームラインをずらすことで、デザイン性とスタイルアップ効果を狙っているという。もう一つ、スドークの定番として挙げられるのがテーラリング。ベーシックなシルエットにひねりを加えたジャケットやトラウザーは、スタイリングによってフォーマルにも、カジュアルにも取り入れられる。

「スドークがイメージするのは、社会で働く女性たち。目標とするのは、オケージョン、年齢、そして体型を問わず取り入れられるワードローブ。それでいて、ぱっと目を引くような個性のあるスタイルを提案したいと思っています」。

くどうつかさ●沖縄県那覇市出身。早稲田大学社会科学部卒業後、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進学。在学中にパリのジャックムスでデザインアシスタント、Y/プロジェクトではパターンアシスタントとして経験を積み、その後渡英しJW アンダーソンのデザインアシスタントを経て2017年に自身のブランドであるクードスを立ち上げる。2018年にはウィメンズラインにあたるスドークをローンチ。デザイナーの傍で、写真家やアーティストなど多岐にわたる活躍を見せる。

text: Shunsuke Okabe

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