華やかなヘッドピースはオケージョンのためのもの? ブローチは胸にひとつだけ飾るのが正解? 答えはNO。時間も場所も気にせず思うままにジュエリーを取り入れて構わない。リモート会議が主流になった今、自宅でも顔まわりを華やかに飾ることは必要不可欠だ。それを後押しするように、今シーズンはこれまでの常識を覆す、普通じゃないアイテムがずらり。ルールから解放されたそのときから、ファッション・ファンダムの扉は開く。
こめかみまで覆うヘッドピースと肩につくほど長いイヤリングに、光を受けるたびに燦然と輝くクリスタルを配した。その服は、とびきりゴージャスなドレスを選びたくなるけれど、あえて甘いブラウスとスタイリング。ランウェイでも、クラシカルなワンピースやリバティプリントのスーツとの合わせで登場。アレッサンドロ・ミケーレによる「常識」への反逆心が垣間見える。
小さなビーズをつなげて作られた繊細なフリンジが波打つ。“つける”というより“まとう”と表現したくなるチョーカーは、重厚なコートとスタイリングしても圧倒的な存在感。揺れるたびに隙間から肌がのぞき、コレクションテーマ「シュールグラマー」に呼応するように女性らしさを強調する。幅広いネックデザインと好相性なため、自由に手持ちの服をアップデートしたい。
感覚や感情をキーワードに、“人間らしさ”を突き詰めた今シーズン。目や鼻、口、手といった五感をつかさどるパーツをダイレクトにデザインしたジュエリーは、そのテーマを象徴するアイテムだ。ユニークさだけにとどまらず、厳粛なムードも放つのは、メゾンが積み重ねてきたクリエイティビティのなせる業。テレカンファレンスでも、華やかで遊び心のある印象へと導いてくれる。
ハンドペイントと樹脂加工で作り上げたフルーツとベジタブルは、本物と見間違うほどリアル。メゾン マルジェラらしいユーモアが漂い、カンバセーションピースとしてひと役買ってくれそう。そのユニークなモチーフは、メゾンが提起する重要な概念、“サステイナビリティ”と“リサイクル・アップサイクル”に対する意識を反映したものだ。ブランドの表現するアティチュードをまとって。
カーブを描いたゴールドトーンのプレートが光を四方に反射させ、オンラインミーティングでも存在感を発揮する。先端にはバロックパールが一粒。
ピンクのニットとガラスのスターモチーフをドッキングしたロマンティックなヘッドピース。リングは骨や脂肪を美しいガラスで表現。意外性のあるモチーフも、アートピースのようなシェイプによって自然と指になじむ。
ジェンダーの“常識”を取り払うメンズコレクションに登場したティアラと、エクストリームサイズの安全ピンのピアスで顔まわりを華やかに。首元はインダストリアルなコイルに上品なパールモチーフをあしらったネックレスで盛り上げて。
現代彫刻から着想を得たヘッドピースは一点ものでレンタル専用。耳を覆う有機的なフォルムのイヤーカフは耳まわりのアクセサリーの新境地だ。ネックレスのようにチェーンがつながったピアスのテーマは反抗。アジャストすれば、ショートピアス、アシンメトリーピアス、ロングネックレスとしても使用可能。
ダイヤモンドとブラックダイヤモンドを贅沢に配したコイル状のリングは、まるで何本もスタッキングしているかのよう。ネイルにセットするリングが既成概念への反骨心を薫らせる。
工業用のチェーンやカラビナをジュエリーに昇華。カラーリング部分はラバーコーティングされており、マットな質感がモダンなムードを後押しする。バングルは優れた日本の職人技を用い中を空洞にすることで、軽量化もかなえた。
70〜80年代のロンドンのクラブシーンとともに、セルジュ・ルタンスの妖艶で官能的な世界観を表現した今季。スパンコールによるフラワーモチーフのネックピースは手のひらより大きな大輪だ。ブローチは3色セットになっており、自分の好きなバランスでスタイリングできるのがうれしい。きらびやかでありながらどこか影があるアイテムは、つけた人を叙情的なムードで包み込むだけでなく、モニター映りもばっちり。
SOURCE:SPUR 2020年11月号「私はNo Normal Jewelry」
photography: toki styling: Sumire Hayakawa 〈KiKi inc.〉 hair & make-up: Mika Iwata 〈mod’s hair〉 model: Urvashi Umrao text: Mai Ueno edit: Ayana Takeuchi