自然の恵みで満たされた、みずみずしいフルーツの魅力には抗えない。切る、もぎとる、皮をむく……その内に秘めた情熱を探求するように、女性たちは今日もネイルとジュエリーで武装し、禁断の果実に挑み続ける。
どしりと立つ姿、やわらかい曲線を描く断面のフォルム…… 洋梨にはどことなく女性のからだを彷彿とさせる愛嬌がある。青くて酸味のあるラフランス、とろけるような味わいのル・レクチェ、追熟で赤い縞模様になるレッドコミス……。シーズンの中でさまざまな品種が登場し、どれもパワフルな個性を発揮する。そのタフさを享受するように、大胆な色のマーブル模様とクリアのポリッシュでタイダイを描いたネイルや武骨なシルバージュエリーを手もとに宿す。アーティスティックな仲間同士でワイワイと話しているみたい。
小さな白い花は春の訪れを告げる印。めしべの元にある花托が段々とふくらみ、緑から赤へと色づく。普段は目にすることのない、いちごのフレッシュな姿はふぞろいで、ヒゲのような花柱もちらり。ちょっと毒のある表情をたたえている。これから何にでもなれる可能性を秘めた力強さで、今にも爆発しそう。年を重ねても、この力強さを忘れないように、透明感のあるピュアなカラーストーンのリングや蛇をかたどったリングを重ねづけ。ゴールドのジェルネイル×モダンな白のポリッシュで知性のある品をプラスする。
包丁で切ってしまうと感じないけれど、指で触れてみるとマスクメロンの皮は厚く、鉄壁のガード。誰からの侵入も許さない果皮の中には、ひそかに時間をかけて完熟した果肉が隠れている。皮の網目は時には可憐なアンティークレースのようでもあり、時には網タイツのようなセンシュアルなイメージにも変化。指先にゴールドのネットを立体的に盛ることで表現した網目の自由さ、クリアなムーンストーンやクォーツのジュエリーによる果肉のジューシーさをまとって、多面的なマスクメロンの魅力に酔いしれたい。
まるで心臓をわしづかみにされたような衝撃。ザクロは中身を開くまで、まだ若いのか、完熟なのかがわからないこともある果実。その粒をいっぺんに頰張ってみると、はじける果汁のフレッシュさがたまらない。このドキドキ感こそがザクロをいつまでも色褪せない存在としてミステリアスに見せる。唯一無二の甘美なムードをネイルで表現するなら、クリアからピンクへのグラデーションに、透明のビーズを配して。艶やかな粒が集まった宝石箱のようなフルーツにはアンティーク調のリングを合わせ、タイムレスな魅力を加えた。
一日の始まりは柑橘系の果実にインスピレーションを探してみる。みかんやライム、レモンなどの皮にはエネルギッシュな香りとオイルが含まれる。むいた瞬間にみずみずしい柑橘の香りが広がり、クリアな思考に導いてくれそうだ。時にはくるくると、皮と戯れながら遊び心のあるリズムを刻めば、今日もうまく乗り切れる気分。スカイブルーのポリッシュと、皮のリズムに呼応した白いラインが躍るネイルが粋な表情を弾けさせる。モダンアートを思わせるシルバーのジュエリーでムードを引き締めることも忘れずに。
SOURCE:SPUR 2020年3月号「指先に旬の息吹とパッションを 果実とネイルと宝石と」
photography: Hiroko Matsubara styling: Tomoko Kojima(fashion), KAORU〈Dress the Food〉(food) manicure: Yukiko Asano〈be born〉 model: Marieme(1,3枚目), Inge(2枚目), Sasha(4,5枚目) artwork: Mamoru Hinata〈FORDIMENSIONS〉 edit: Michino Ogura