2021.04.16

“ざくっと” した手仕事モード「クラフト新世紀」

「クラフト感」こそ2021年の最新モードの要。天然素材をメインに、編み、織り、染め、パッチワーク、刺し子などを駆使し、手仕事のぬくもりを洗練されたスタイルに落とし込んでいる。オノマトペで表すなら、“ざくっと”。“ほっこり”とは無縁のモダンさが「シン・人類」が選ぶクラフトタッチのカギ。この世界観に合う工芸品とともに厳選する。

ふっくらとした花弁と葉と

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ドレス¥366,300(予定価格)、パンプス¥126,500/フェンディ ジャパン(フェンディ) キルト「とある風景Ⅲ」〈H218×W173〉¥154,000/es quart(Blue Tip atelier)

シルヴィア・フェンディがローマの生家で過ごした日々が着想源。リネンドレスには品よくチュールのカラーが添えられて。胸元とスカート部分には花や葉をかたどったシルクサテンに詰め物を入れてふっくらとさせ、さらに細密なステッチで立体感を演出している。背景に垂らしたコットンキルトは日本で2019年に作られた。ティンギというマングローブの一種の樹皮や、五倍子、柘榴、ログウッドなどの天然染料を使用している。

編みとテック素材の対比

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コートドレス¥627,000、サンダル¥192,500/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ)

心地よいマイホームでの装いが今季のテーマ。ウォッシュドフルイドパラシュート素材を用いたコートドレスは、胸元にストライプ状のステッチが配されている。かぎ針で繊細に編み上げたフーディ部分もクラフトタッチたっぷり。ソールの曲線が美しいサンダルは、ニットに手仕事で刺しゅうを施し、アートピースのような一足に仕上げている。

色彩のダイナミズム

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シャツ¥100,100、スカート¥204,600、ソックス¥6,380、パンプス¥104,500/ドリス ヴァン ノッテン

実験映画、キネティック彫刻で知られるニュージーランドのアーティスト、レン・ライの作品を反映した今シーズン。オーガンザのスカートは、レン・ライの動きの芸術を手仕事によるラッフル装飾で表現している。オプティミスティックな色彩がスカートの上で躍り、サイケデリックなムードを醸し出す。

「艶っぽい」バスケット

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バッグ〈H22×W26.5×D9.5〉¥228,800、サンダル¥133,100/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ)

2019年ミラノサローネよりたびたびロエベが共作しているスペインの職人イドイア・クエスタと制作したバッグとサンダル。イドイアは、クロシェやマクラメといったテキスタイルを編む技法を、かご細工に組み込む技術を持つ職人だ。まるで籐を編むようにレザーを編み上げ、ほかにない質感に仕上げた。

「染め」を味わう

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ジャケット¥319,000、ジャンプスーツ¥352,000(ともに参考価格)、ピアス¥69,300、サンダル¥113,300/クリスチャン ディオール(ディオール) 手に持ったベース(SMALL)¥484,000、床に置いたベース(BIG)¥616,000/エスケーパーズオンライン(KIM JUNSU)

日本で発表された1957年秋冬の「Diopaletot(ディオパルトー)」ジャケットに着想を得たアウター。手染めによるタイダイが施された雅な一着だ。カシミヤシルク混リネンを透かし編みしたジャンプスーツは、可憐な佇まい。手に持ったベースは、草木なめしした革を細く裁断し、一本ずつ手作業で接着しながら積み上げて形成した。年輪を思わせる複雑な表情が魅力。

手仕事に費やされた祈りに想いを馳せて

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(右上)ワイドブリムのストローハットは中目黒で職人が一点一点ハンドメイド。ベストはトルコやアフガニスタンで織られたラグをパネルで切り替えてアップサイクルした。
帽子¥30,800/Sillag(e bocodeco* Sillage) ベスト¥74,800/スタジオ ファブワーク(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)

(右下)ストライプの綿を紐状にして編み上げたトップス。ベレー帽は、コットンに擬麻加工を施している。
トップス¥41,800/pillings 中に着たタンクトップ¥2,750/プチバトー・カスタマーセンター(プチバトー) 帽子¥9,900/キジマ タカユキ

(左上)デザイナー自身のルーツであるナイジェリアはヨルバ族に伝わる伝統的な織物「アショオケ」。2メートルを織り上げるまでに約40時間が費やされる。その生地を用いて、ウィーンのレザーブランドSAGAN VIENNAの職人が手作業でバッグを制作した。
バッグ¥206,800/KALMA(KENNETH IZE × SAGAN VIENNA) ビスチェつきトップス¥38,500/ネイティブ ヴィレッジ パンツ¥73,700/エドストローム オフィス(ルメール)

(左下)ジャンルの枠を超えて作家との協働を行うWONDER FULL LIFE。このバングルの真鍮部分はLueの菊地流架氏が担当。綿、和紙、ウールを用いた糸部分の染色は、奄美の金井工芸の金井志人氏が手がけた。
バングル¥33,000/WONDER FULL LIFE タンクトップ¥14,300/RHC ロンハーマン(RHC)

モダンにまとうパッチワーク

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帽子¥19,800/Sillage パンツ¥40,700/ホリデイ シャツ¥28,600/ロンハーマン(メキパ フォー ロンハーマン) サンダル¥67,100/ブルーベル・ジャパン(クレジュリー) バングル(太)¥48,400、(細)¥52,800/リトー(8UEDE) 椅子(ペア)¥418,000/stoop 錫の花器 各¥27,500/アポロギア

フランスとタイにルーツを持つデザイナー、ニコラ・ユタナン・シャルモが手がけるSillage。この帽子はUSマリーンのハットの形をベースに、タイとラオスの国境付近で暮らすモン民族に伝わる生地を使用。すべて手まつりでパッチワークした。クロシェ編みのグラニースクエアのパンツが懐かしさを誘う。ロープ座面が美しい椅子は1930年代にフランシス・ジョルダンによってデザインされた。

SOURCE:SPUR 2021年5月号「“ざくっと” した手仕事モード クラフト新世紀」
photography: Hiromu Kameyama styling: Kayo Yoshida hair: Mr.Tomik make-up: Kanako Yoshida〈mod’s hair〉 model: Olga