時代の大転換期。洋服の価値を見直すために、ヴィンテージと向き合ってみる。私たちは、新しい服だけを着ているわけじゃない。合わせるものは、実家に眠っている古着だっていい。それがオリジナリティの源になる。さまざまな時代、テイストが混在する唯一無二のスタイリングでモードのタイムリープを楽しもう！
バレンシアガ
独自のビデオゲーム「Afterworld:The Age of Tomorrow」内で発表したバレンシアガのフォールコレクションから、ブランケット風のフードつきコートをピックアップ。体を包み込むデザインは、銀河系の正義と平和を守る騎士のマントのよう。中にはシルバーラメがきらめくディスコティックなオールインワンを仕込み、メタルのブラとチェーンネックレスでフューチャリスティックな要素をプラス。古着を加えて作る未来志向のスタイリングは、はるか遠い過去とまだ見ぬ未来が、まるでメビウスの輪のようであると気づかせてくれる。
グッチ
ジャカードニットベストとプリーツスカート。首元には大輪の花のブローチ。さまざまな時代のエッセンスを取り入れたスタイルを得意とするグッチの新作はフォークロア調の古着を合わせ、民俗的折衷スタイルに挑戦。キルティングジャケットは70年代アメリカのもの。頭を飾るのはインド製の帽子、アフガニスタン製のベルト、赤いビーズネックレス。豪奢な組み合わせは世にも華やかなハレの日の衣装のよう。今こそ、服のルーツと多様な文化への敬意を込めて。
ルイ・ヴィトン
テクノロマン主義とエネルギッシュなスポーツウェアをぶつけた今季のルイ・ヴィトン。ジャケットやスカーフのロゴで遊びながら、古着のカジュアルアイテムでスポーツテイストを掘り下げ、ヒップな90年代スタイリングに昇華。
セリーヌ
セリーヌはタイムレスなピースにフォーカス。特にクラシカルなエレガンスを演出する、ピークドラペルのタキシードジャケットとパンツルックは別格だ。歴史的に男性服とされてきたセットアップには1930年代のドレスを合わせてフェミニン＆マスキュリンに。さらに、ヴィクトリア朝を象徴するクリノリンをあえてジャケットの上に重ね、より自由で多様性のある フェミニニティの解放を願う。
サンローラン
パリシックなメゾンのステートメントピースであるデニムを、原点のひとつで あるゴールドラッシュ時代のウェスタンカルチャー、ワークテイストと融合。 ブーツと一体化したジーンズの色気は、グロッシーなスイムウェアをつなぎに 取り入れることで全体に調和させる。
プラダ
着想の出発点は「＂グロリアーナ＂ことエリザベス1世が現代に生まれ変わったなら？」。フリルを多用した、プラダの純白ドレスに合わせたのは、血の赤色。1950年代のパニエと、モッズキッズを彷彿とさせるストライプのタイツ、そして1920年代のストールだ。トップのインにはレースのビッグショルダーブラウスを差し込み、毒のあるロマンティシズムを描く。
ボッテガ・ヴェネタ
ボッテガ・ヴェネタの新作の中でも、オーストリッチフェザーを施したクチュールライクなニットトップスとデニムは息をのむほどの美しさ。そこに、グラムロックな味つけと、古の時代から人間を彩ってきたようなメタルやビーズの装飾を加えて奥行きを演出。メッシュトップスから立ち上るフェザーの躍動感と、重厚なアクセサリーのコントラストが、スタイリングにドラマを生む。
ノワール ケイ ニノミヤ
紺色のチェスターフィールドコートとガーリーなチュールのドールドレスをドッキングしたノワール ケイ ニノミヤ。西洋の洋服の系譜に連なる主役級アイテムは、ヴィンテージの着物、草履とミックスし、洋装化が進んだ大正ロマンへの憧憬を注ぐ。着物の間からユニフォームライクなオールインワンのストライプ模様とヴィンテージブラウスのジャボをのぞかせれば、気分はまるで、高貴な＂はいからさんが通る＂。
SOURCE：SPUR 2021年8月号「時をかけるモード」
photography: Saki Omi 〈io〉 styling: Tomoko Iijima hair: Yusuke Morioka 〈eight peace〉make-up: Yuka Hirac 〈vow-vow〉 model: Ella, Senping, Olufunke, Carlos
