SPURが考える2021年のロマンティックは、ふわふわ浮世離れしたものではない。自分らしく生きるための糧であり、美しい夢を通じてみんなとやさしい気持ちをシェアするためのもの。包容力のあるロマンティシズムこそ、＂ネオ・ハイライフ＂の支柱となる。
ふたりで着飾る黒
ドリーミーで淡い色、ではないロマンスの姿とは？ 凛とした意志を表出させるのは、モノトーンのドレスアップ。繊細なレースや重なるチュールなど細部まで技巧が凝らされている。一輪の花に、ふたりの祈りを灯して。
躍動するボリューム・プレイ
幾重にも生地が重ねられたドレスは、儚さよりもダイナミックなパワーを感じさせて。晴天のようなスカイブルーもポジティブな風を醸し出す。蛍光イエローのパンツとスニーカーこそ、軽やかに跳ねるステップにふさわしい。
人生は、それぞれの祝祭
あらゆる人が尊重し合うコミューンの姿を想像してみる。たとえば白いシャツやブラウスをリンクさせながら、装い方は多種多様に。相違点をしなやかに受容しながら、それぞれの人生を楽しむことができるはず。何者かになる必要はなく、いつだって私は私を生きるのだ。アメリカの詩人、エミリー・ディキンソンが19世紀に＂誰か＂であるなんて退屈、＂How dreary - to be - Somebody!＂と詩の一節で語りかけたように。
ユーモアを忘れずに
自然への愛とオプティミスティックなマインドが大切。センシュアルなレースシャツをさらりと纏い、胸元でタイをきゅっと結んで。仕上げに大ぶりなアイウェアやイヤリングで装飾的な味つけを。花や陽光にエネルギーをもらいながら、豊かな精神世界をアーティスティックに表現する。
未来と「かわいい」の関係性
地球とともに生きるために、モードのあり方も模索する。ワンピースはガウンのように羽織りラフに。中に着たスウェットも、ともにデッドストックやヴィンテージの生地を刷新している。服のみならず、KOTA KAWAIのチェアも古いニットやＴシャツをパッチワークし、アートピースへと再構築。社会との関わりの中にも、自分なりのロマンティシズムを見いだしたい。
日常こそドラマティック
Ｔシャツとデニムというデイリーなアイテムも、ダイナミックなヘッドピースを加えれば、そこに物語が生まれる。やわらかく顔にかかるチュールがファンタジーも薫らせて。ブルーのメイクアップとも呼応する。ありふれた野花が美しいように、日常に潜むドラマも見逃さずにいられるように。
乙女心は永遠に
ショルダーがアーティスティックなシルエットを描くジャケットは、タフな姿勢を体現する。添えるのは形も色もさまざまなジェム。いくつであっても、宝石箱をひっくり返したときのときめきと、子どもの頃の好奇心を大事に生きたい。
SOURCE：SPUR 2021年9月号「みんなのためのロマンティック」
photography: Teruo Horikoshi 〈TRON〉 styling: Kayo Yoshida hair: Kazuhiro Naka 〈KiKi inc.〉 make-up: Machiko Yano model: Anna, Haruno, Kanata, Nama, Herve, Olga, Kim, Alla photography & illustration & model : Twotom typography: Lina Suenaert cooperation: BACKGROUNDS FACTORY
