ニットに〈包まれて〉夢の中
"包まれる"安心感も大事な2022年。魚座の開運キーワードになぞらえてSPURが選んだのはクロエのファンシーニット。あらゆる可能性を夢見る若きアスリートがまとう虹色のニットスタイルには、明るい未来が見える。「着ていると包まれているように感じるのはオーバーサイズのパーカ。男の子のファッションが好きなので、パーカをカッコよく着ている姿に憧れますね」と中山さん。足もとはスケーターらしいスポーティなソックスとスニーカーで引き締めたい。
もの静かな佇まいの中に、凛とした意思と情熱を
物質主義の「地」の時代から、言葉や知性など形のないものにスポットが当たる「風」の時代へと移り変わった2021年。コロナ禍の閉塞感の中、東京五輪のスケートボード競技を目撃した人々の心に、爽快な風が吹き込んだ。灼熱の東京の空を自分らしいトリックで舞う姿や、滑り終わるたびに、世界中の選手たちが駆け寄り、歓声やねぎらいの声をかける姿がとびきり気持ちいい。なかでも、なびくロングヘアを束ね、静かに試合に挑む中山楓奈さんが印象に残った。
富山県富山市出身の中山さんは9歳のときに父親の一声でスケートボードを手にした。「きっかけは富山にスケートパークができたこと。父は幼いときにスケートボードをやっており、プッシュなどはできたので、私にも挑戦してみたら? とすすめてくれました。最初は月に1回の教室に通い、土日に親や友達と遊びで滑っていたんです」
中山さんは平日は2〜3時間、休日は朝から晩まで、拠点の富山で練習を続け13歳になると日本選手権で初優勝。同年の世界選手権では6位という成績を残し、東京五輪の切符をつかむ。
「周囲の人に教えてもらったり、うまい人にコツを聞きにいったり、仲のいいスケーターたちと一緒に滑ったり……。練習を続けられたのは環境がよかったのかも」
東京五輪から正式種目として選ばれたスケートボードには「ストリート」と「パーク」の2種目がある。中山さんがエントリーしたのはコース上に階段や手すり、縁石、ベンチなどを模したセクションを使って技を披露する「ストリート」。スケートボードの板の部分”デッキ”を当てて滑る「スライド」、デッキとウィールをつなぐ金属部分を当てながら滑る「グラインド」などの技が繰り広げられる。選手は持ち時間45秒の「ラン」を2本、一発の技を競う「ベストトリック」を5本行い、計7本のうち、得点の高い4本を合計した得点で勝敗が決まる。予選を首位で通過した中山さんは決勝のベストトリックでデッキを斜めにかけて滑らせる「フロントサイドKグラインド」という大技に成功し、銅メダルに輝いた。勝因についてはこう振り返る。
「五輪以前は計画が甘かったという反省から、自分なりに戦略を練ったり、親やコーチ、知人にアドバイスをもらいながら考えていったのがよかったなと思います」
157cmという小柄な彼女。世界が見守る五輪の会場で、堂々と大技を決め、ひときわクールな印象だったと伝えると「実はすごく緊張していた」とぽつり。「大変だったのは、試合の時間が朝早く、それに合わせて練習時間も早まったりと、普段と異なる状況に合わせることでした。集中するために、試合前はイヤホンでアニソンやラジオを聴いています。当日は、海外の試合で一緒になるフィリピンのマージリン・ディダル選手が、私の緊張グセをわかってくれているので、話しかけたり、笑わせてくれたりして助かりました」
ファッションシューティングは初めてという中山さん。開運モード企画だと伝えると、「占いはネットの記事などを見て、参考にすることも時々ある」と言う。試合前の運を切り開くアクションについて聞いてみると「好きな色の黒い服やズボンをはいて、テンションを上げます。好きじゃない色を選んでしまうと、気分を持っていくのが難しくて。自分で着こなしを決めるのはあまり得意じゃないし、ファッションのことはまだ勉強中です。いまは誰かに決めてもらった服を着るのが楽しい。今日の撮影では大きなTシャツに膝にバンダナを巻いた服が好き。あのスタイルで滑ってみたいです」と語った。
2022年、星座の大きな流れは夢を抱くロマンティックな魚座からチャレンジ精神旺盛でマニッシュな牡羊座のムードを行き来するという。自身は双子座だという中山さんは、この撮影でアクティブからボヘミアンまで多彩な表情に挑戦した。気負わず、風に乗るようにファッションに身をゆだねるのは、双子座ならではのバランス感覚。飛躍する彼女から、私たちはインスピレーションを得たい。
Profile
中山楓奈(なかやま ふうな)●2005年、富山県出身。プロスケートボード選手。9歳でスケートボードを手にし、次年度に行われたJSF主催のコンテストJAPAN OPEN ルーキー発掘プロジェクトではストリートクラス・アールクラスのダブル優勝を果たす。2018年にはスケートボード強化指定選手に選出。2021年の東京五輪では銅メダルを獲得した。Instagram: @funa_nakayama
SOURCE:SPUR 2022年2月号「中山楓奈 グッドラック・モード」
photography: Saki Omi 〈io〉 styling: Fusae Hamada hair: Hirokazu Endo 〈ota office〉 make-up: Tamayo Yamamoto edit: Michino Ogura cooperation: Akari Maki, BACKGROUNDS FACTORY