Profile
グレン・マーティンス
1983年生まれ、ベルギー出身。インテリア・建築を大学で専攻した後、アントワープ王立芸術アカデミーで服飾を学ぶ。ジャンポール・ゴルチエを経て、2013年にY/Projectのクリエイティブ・ディレクターに就任。2020年10月よりディーゼルのクリエイティブ・ディレクターを務める。
ファッションの未来を担う次世代のサステイナブルな服作り
2020年10月、ファッション界に衝撃が走った。ディーゼルのクリエイティブ・ディレクターにY/Projectを手がけるグレン・マーティンスが就任するというニュースは、コロナ禍において期待と希望に満ちた朗報だった。ファーストコレクションが店頭に並ぶ現在、彼はどんな心境なのだろう?
「ディーゼルでの仕事はやりがいがあり、素晴らしいプロジェクトだ。この一年は多くの時間を、このパワフルなブランドに注力していたよ! グローバルの認知度が高いブランドだから、就任した瞬間から大きな影響力を持っていると感じた。それと同時に、責任も大きいと思った」と振り返る。
2021年6月、デジタル配信で待望の初コレクションを発表。アーティスト・映画監督のフランク・ルボンと共同製作したフィルムは全4章で構成され、現実と夢の境界線が曖昧に描かれている。ディーゼルのコアピースに、グレンらしいツイストがきいた、新鮮な世界観が広がっている。
「2022年春夏コレクションは、ディーゼルのヘリテージを掘り下げてインスピレーションを得たんだ。ウォッシュ加工、素材ミックス、色やグラフィックの使い方。これらはコンセプチュアルなアプローチで何度も手を加えられて溶け合い、ブランドの軸を成している。ファーストコレクションは、アーカイブスを祝福するものにしたかった」と語る。
「コロナ禍でのスタートは大変だったよ。パリのアパートで自粛生活を2カ月間過ごしたとき、自分のキャリアについて考えるいい機会となった。そのとき感じたのは、自分は自由にクリエーションできる立場にあり、とても恵まれているし、幸せだということ。そして、ディーゼルという大きなブランドを牽引する立場として、今日のグローバリティが何かを理解していなければいけないということ。20年前とは違い、地球規模の問題の多くはファッションと切り離せないものだから。むやみに服を作ることが不可能になった今、責任のある服を提案して意識を高める必要がある。だからこそ、DIESEL LIBRARYは、デニムコレクションの約半分を占めるブランドの軸になるパーマネントコレクションとして展開しているんだ」
2022年春夏コレクションから展開される「DIESEL LIBRARY」のキービジュアル。長く着てもらうためのサステイナブルデニムを提案
DIESEL LIBRARYは、2022年春夏コレクションから始動したデニムの常識を刷新するプロジェクトだ。ブランドのサステイナブル戦略である「For Responsible Living(責任ある生き方)」の次のチャプターとして発足した。長く愛用することが一番のサステイナビリティであるという考えから、魅力的で耐久性のある高品質なデニム、エッセンシャルでジェンダーレスなデザインを提案。もちろん、環境負担が少ない生産過程も追求している。
「プロジェクトの目的は、可能な限りクリーンなデニムを生産すること。DIESEL LIBRARYの全商品は、環境にも人にも有害な化学物質が使用されていないと認証済みだ。すべての工程で何が行われているかを把握していることは、僕らの誇りだよ」とグレン。
「グローバルブランドのトップに立ち、影響力を持つ意味について自問しなければならない。ただ美しい服を作るのではなく、プロダクトを通して大衆に語りかけ、社会に貢献し、地球環境に配慮しながらサステイナビリティを促進する。こうしたことに責任がある、と認識する。僕にとって一番のチャレンジだね」
先鋭的なデザインで私たちを刺激するだけでなく、地球環境や社会的にも責任がある洋服作りを志し、ファッション界を啓蒙するグレン・マーティンス。彼が率いる新生ディーゼルがこれからどんな世界観を拡張していくのか、その未来が楽しみでならない。
INFORMATION
「DIESEL LIBRARY」が始動!
ブランドのサステイナブルな新プロジェクトが「DIESEL LIBRARY」だ。ジェンダーレスなデザインアプローチを採用し、デニムの新たな可能性を提示。パンツ、ジャケット、トップス、スカートなど幅広いラインナップを揃え、どれもが長く愛用でき、色褪せないアイテムばかり。素材、パーツ、加工過程などはアイテムに取り付けられたQRコードで追跡できる仕組みになっている。このコレクションは世界中の厳選されたDIESELストアやオンラインストアで是非チェックを!
SOURCE:SPUR 2022年3月号「グレン・マーティンスが描くディーゼルの新章」
photography: Oliver Hadlee Pearch