2022年春夏のランウェイでは、「普通にとどまらないベーシック」が目立っていた。そのエッセンスをいち早く先取り。大切に長くつき合っていきたいタイムレスな定番に、旬なバランスで袖を通して。スタイリスト飯島朋子さんが、スタイリングの秘密を解説。
"Wショート丈"で大胆な2000年代フレーバーを
究極のデイリーウェアだが、"Y2K"のムードで思いきってプロポーションを変えた。スクールガールの気分でまとって。「今認識されているベーシックスタイルを定義づけたのは、70年代に遡ります。代表的なのが、ボタンダウンのシャツ、ニット、チノパンといった普遍的なアイテム。それらを2000年代初頭にはやったクロップド丈、ローライズ、マイクロミニのバランスで軽やかに固定観念を打ち破ったのが新鮮です」(飯島朋子さん)。
こなすより発想を"ズラす"インサイドアウトなコート
ブランドの根底に流れる、逆転のアイデアが落とし込まれた一着。ベーシックウェアを正統派に着こなすのもいいけれど、これまでの価値観から少しズラす意識を持つのも悪くない。タイムリーにまとうヒントになりそう。「見慣れたトレンチコートは、裏返して袖を通し、チェック柄のライニングを露わに。さらに、ジップとボタンを駆使してパーツをつなげると、本来後ろ身頃だった部分が、インナードレスになるんです。変形するデザインがパワーアップしていて、面白いですね」。
ジャケットはインナーに。"名脇役"として着こなす
英国紳士に愛されるダンヒルを、クリエイティブ・ディレクターのマーク・ウェストンが刷新した。「春夏シーズンのダンヒルは、ジェンダーレスなアイテムが多かったのですが、メンズのかっちりしたスーツスタイルこそ、女性に着てほしい。そのときには、シャツのボタンを3つ開けてセンシュアリティを引き出して。さらに、ジャケットは一番上に羽織るものという認識があるけれど、もっと自由な感覚で。言うならば、インナーの名脇役として選んでみるのがいいでしょう。オーバーサイズのカーディガンを上から重ねて」。
ケープ使いで、縦長の旬なシルエットを制する
シルエットを自在にコントロールすることも同時代的に着る秘訣のひとつ。「ルーシー&ルーク・メイヤーによるジル サンダーは、縦長のバランスが特徴的。ノーカラーのジャケット自体はコンパクトなつくりですが、そこにメリハリの出る大きなケープを添えて。肩と胸元を覆うのは片側のみに。すると、いとも簡単に旬な縦のラインを強調でき、タイムレスなアイテムを今季らしく味変することができるんです。ブリムが極端に広いハットで個性を際立たせるのもおすすめ」。
服を着る順序をパズルのように入れ替えて、今のバランスに
当たり前になっていた着る順番を、少しだけズラして旬なプロポーションに。そこで見出される、服の新たな可能性を探るのも楽しい。「トーガのスカートはローウエストが新鮮で気になりました。そこを起点に、いつもの順序を組み替える工夫をしてみましょう。ブラウスを着たらスラックスをはくまではおなじみですが、早々にジャケットを羽織って、ベルトマーク。そして、スカートに裾をイン。カムバックした腰位置の低いバランスを強調するために、スカートとベルトの間に余白をつくっているのもポイントです」。
真面目に見せて、実は技ありな"シャツたらし"になってみる
素材とサイズ感を意識しながら、3枚のシャツに同時に包まれて。「透け感のある軽い素材のシャツに、サイズの異なる2枚をオン。一番上はメンズのノーカラーを選んで。足もとは男靴がおすすめ」。
SOURCE:SPUR 2022年3月号「わたしのベーシック・イノベーション」
photography: Masato Kawamura styling: Tomoko Iijima hair: Nori Takabayashi 〈YARD〉 make-up: Masayo Tsuda 〈mod’s hair〉 model: Marika edit & text: Ayana Takeuchi