ファッションと日々のこと。太田莉菜&ゆのん「服愛」語り

太田莉菜さんは自他共に認めるファッション好き。娘・ゆのんさんも、服を着ることが大好きだという。今回は世界観をリンクさせたモードなスタイリングで撮影。服のことから日々のこと、将来の夢まで、母娘の対話に耳を傾けよう

女バディものを演じたい

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(莉菜さん)ビッグトレンチコート¥452,100・パンツ(参考色)¥128,700・頭に巻いたスカーフ¥64,900・中に着たTシャツ・靴(ともに参考商品)/バレンシアガ クライアントサービス(バレンシアガ)  (ゆのんさん)中に着たニット¥96,800・ジレジャケット¥171,600・スカート¥132,000・靴¥93,500・ソックス(参考商品)/マルニ ジャパン クライアントサービス(マルニ) 頭に巻いたスカーフ¥3,500/CARBOOTS

莉菜さんの今後の夢は? 「30代になって体の変化を感じるけど、年齢を重ねた分表現できること、楽しめることがあると思う。そういうことを感じる手助けをしたい。広告でもドラマでも、大人の女性が活躍できる場がもっと広がればいいなと思っていて、今一番チャレンジしたいのはバディものの探偵ドラマ! 〝かっこいい"や〝きれい"だけじゃない女探偵、いてもよくないですか?」

表現するのが好き

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(ゆのんさん)ブラウス¥203,500・シースルーカーディガン¥341,000・タイツ¥110,000・ブーツ¥198,000(すべて予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ)  (莉菜さん)黒トップス¥154,000・ピンクビスチェ¥379,500・パンツ¥165,000・靴¥133,100/グッチ ジャパン(グッチ) その他/スタイリスト私物

アニメが大好きと語るゆのんさんの将来の夢は? 「声優です。自分でも表現するのが好きだし、周りからも上手だねって言われることが多くて。尊敬するのは『賭ケグルイ××』っていうアニメの主人公役の声優、早見沙織さん。表現力がすごいんです! でも絵を描くのも好きだから、デザイン系の会社にも入りたい。給料日にお給料をポーチに仕分けていく会社員のYouTube動画があるんだけど、ちゃんと自分の大事な日や使い道を把握して、自己管理しているのが素敵だなと思っています」

モデルとしての「纏う」こと

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「ゆのんはよく動き回るから、小さい頃からいい服を買ってもすぐ穴を開けて帰ってきてましたね」と莉菜さん。「人目を気にせずめっちゃ木登りしたり、公園で走り回ったり。トレーナーやジャージばっかり着てます。服に関してはママと共通点はそんなに多くないなぁ」(ゆのんさん)。
今回のようなスタイリングは新鮮なようで、「普段は着ない、"ランウェイのお洋服"って感じ」と言う。ティーンの頃から服が大好きな莉菜さんは、モデルの仕事を天職だと語る。「若い頃は自分の中身は置き去りのまま外見だけきれいにして、消費されていくような感覚がありました。でも今は、自分の内面を自然に出していけていると思うし、いい服が本当の意味で似合うようになってきたと感じます。それに今の事務所に所属して、すごく健康的に仕事ができているのも大きいです。マネジャー含めて信頼するスタッフのみんながサポートしてくれて、チームで働いている感覚。心強いです」

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(莉菜さん)ドレス¥217,800・ネックレス¥83,600/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)  (ゆのんさん)ジャケット¥205,700/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー) 帽子¥92,400/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)

互いに支え合う関係性

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(ゆのんさん)中に着たシャツ¥267,300・上から着たチュールドレス¥94,600・ブーツ¥143,000/マルジェラ ジャパン クライアントサービス(メゾン マルジェラ)  (莉菜さん)ジャケット¥292,600・シャツ¥108,900・パンツ¥162,800(すべてメンズアイテム)・靴¥174,900(すべて予定価格)/ザ・ロウ・ジャパン(ザ・ロウ)

ふたりの関係性を尋ねると、「年齢が近いせいか、姉妹のようねと言われます。説教をしていても喧嘩になってしまう(笑)」と話す莉菜さん。そんな母についてゆのんさんは、「間違ってたら指摘するし、正しく怒る人。なぁなぁにしているのを見たことないです。でも縛ったり縛られることはなくて、自由な人」と表現する。娘と将来共にしたいことを尋ねると莉菜さんは「お酒を飲みにいって、今と変わらずなんでも話し合えたらいいな」。それに対してゆのんさんはこう答える。「お酒はいずれ飲むかもしれないけど、そのときは今こんな仕事をしているんだよってお互い報告したい。でも今はディズニーランドに一緒に行きたいです(笑)」

 

テイストは異なれど、服には譲れないこだわりがある母娘

「愛情込めて作られた服は、一番身近に身につけられる美術品。デザイナーさんが、自身のアイデンティティを出し切って生み出すクリエーションを尊敬しています」という太田莉菜さん。モデルの仕事では服を主役にその世界観を表現する一方、プライベートでは「なりたいイメージに合わせて楽しんだり、ときには鎧にしたり」と自分のために着ることを大切にする。偏愛の対象は、古着からクチュールまで幅広く、ロンドンで出会ったヘアサロンオーナーがリメイクした一点ものから、「後世に残したい」ルッツ・ヒュエルのパフスリーブドレスまで、「誰がどういうふうに作ったかという背景がわかり、長く着ることを想像できる一着」を吟味する。「シーズンごとに大量に買って手放すより、ワンシーズンに一着いいものが買えたら」と莉菜さん。

もともとおしゃれだった母親の影響で服好きになったこともあり、大切にしている服をゆのんさんとシェアする楽しみも。「親のお下がりを着るのって、子どもとしてはうれしくないかもしれないけど」という莉菜さんに、「ママの服を着るのはふつうって感じだよ」とゆのんさんが返す。最近は、莉菜さんが長年愛用してきたミニドレスを譲り受けた。

「年を取っても自分が楽しくいられる服が好き。柄とか色とかめちゃくちゃ着ます」という莉菜さんに対し、「どっちかっていうとシンプルで着心地がいい服が好き」というゆのんさん。好みのテイストは重ならずとも、譲れないこだわりがある頑固なところが共通点だ。音楽もファッションも好きだというビリー・アイリッシュの影響で、ビッグシルエットに目覚めたゆのんさんは、古着やメンズから選ぶことが多い。「髪型とか洋服とか、外に着ていくものはボーイッシュなんだけど、家具とかパジャマはピンク色でガーリーな感じ。ルームウェアはサメの着ぐるみです」(ゆのんさん)。

「ゆのんは、私でも着ないようなダボッとしたXXLサイズをよく着てますね。小さい頃から女の子より、男の子のコーナーに欲しい服が多くて。中性的な服がしっくりくるけど、きらきらとか可愛いものにも目がなくて、どっちもあっていいっていうのが強い」と莉菜さん。そんななか、ショートカット時代のゆのんさんが「きれいな顔した男の子だね」「他校にすごいイケメンがいる」などと声をかけられ、「説明するのも面倒くさいから男の子のふりをした」という出来事も。莉菜さんは、ファッションやヘアスタイルが、すぐにジェンダーの話に紐づけられることに違和感を抱いたという。

「TPOに合わせて服の汚れを取るとか、スニーカーを清潔にするようには言っているけれど、ゆのんが好きだと思って着ている服には口出ししたくない。ボーダーレスな時代に親の価値観を押しつけても無理があるから、本質的なことだけちゃんと伝えたい」と莉菜さんが話すと、すかさず横から「ママはガミガミうるさいよ」とゆのんさんが突っ込む。

ちなみに、今のゆのんさんの“パッツンボブヘア”は、「宝石の国」というアニメのキャラクターにインスピレーションを受けたもの。「宝石でできた子たちの話で、主人公の髪がフォスフォフィライトという宝石なんです。面白いのは、キャラクターに性別がなくて、私とか僕とか俺とか一人称が定まってないところ。自分自身はずっと“ゆのんは”って言ってきたけど、最近なぜか人前で“私”という言葉が出てくるようになった」

デジタルネイティブなゆのんさんの「TikTokは初期ほど楽しくない」という言葉に、ジェネレーションギャップを感じる莉菜さん。ゆのんさんいわく、「最初はオリジナリティがあったのに、一度バズったら決められた枠で同じことが繰り返されていく。無断転載も多いし、動画を無表情で見ることに時間が費やされて、操られる感じがもう面白くない」

莉菜さんは娘や友人がちょっと検索すれば、家族や自分に関する虚実入り交じった情報に簡単にアクセスできてしまうことに危機感を覚えている。「嘘の情報が多くなると、真実かのように一人歩きしてしまう。だからゆのんには、成長に合わせて私たち親子のことを含めたいろいろな話を、嘘なく正直に伝えて話し合っています。ゆのんが“話せる相手”だということも大きい」

莉菜さんがいちばん幸せを感じるのは、ゆのんさんと2匹の猫たちとベッドに入り、なんの心配もなく一緒に過ごす時間。「心配になる時期があったぶん、乗り越えた今の安心感は、かけがえのないもの。私たちの関係を誰もじゃまできないと実感できる、日々の当たり前の光景が幸せなんです」と語る。

一方のゆのんさんにとっての宝物は、莉菜さんと何げないことでふざける時間。
「大人になったせいかわからないけど、たとえば一緒にお風呂入るみたいな、昔はなんでもなかったことが今は照れくさい。表現できない恥ずかしさが生まれて、ママを突き放してしまうこともあって。でもふざけているときはその恥ずかしさがないから、安心していられます。今日みたいな仕事に浸って完璧にやっているママは面白くない! だから私が面白さを足さないと」と、インタビュー中も変顔で場を和ませる娘の姿に、「ゆのんはとてもやさしくて愛情深い。平和主義で社交上手です。私の社交能力をすべて吸い取って生まれてきたのかも(笑)」と莉菜さん。

「ゆのんのことが可愛くて、何よりも大事。大きな無償の愛をもらっているのは母親である自分のほうだと思うんです。だからこそ独立した人間として、子どもに依存しすぎないように気をつけています」

そんな莉菜さんの愛情を一身に受けつつ「たまに何もしてないな自分って焦るんです」というゆのんさん。そういうときは、近所で花を買って莉菜さんに渡すことにしている。
「お花って一定の間しかきれいな状態ではいられないけど、そのぶん大事にしていると長く育つ。だから、お花がいちばんいいかなって思って」(ゆのんさん)

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Rina’s clothes

(右)莉菜さんが後世に残したい一着は、マルジェラのニット部門を担当し、2000年秋冬自身のブランドを開始したLUTZ HUELLEのシャツドレス。「袖を通すとよりボリュームたっぷりに膨らむ立体裁断のパフスリーブが象徴的。年を重ねても着たい」(莉菜さん)。(左)ゆのんさんが好きな莉菜さんの服は、「いつもママが着ている森や動物の柄が可愛いダウンベスト。いろんな服に似合うから便利だし、いつか借りたい」(ゆのんさん)

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Yunon’s clothes

(右)ゆのんさんのお気に入り。莉菜さんが仕事の間に、莉菜さんの友人とゆのんさんが、不要な服を切り貼りしてリメイクした。「もともと袖が長めだけど、もう少し長くするために別の洋服の袖を切ってつけました。一緒に作ったのが面白かったので、愛着があります」(ゆのんさん)。(左)莉菜さんが好きなゆのんさんの服は、ベルンハルト ウィルヘルムのミニドレス。服好きな莉菜さんにとって何年も大切に着続けた服を、娘に譲るのは小さな喜び。「ようやくゆのんが似合う年齢に」

Profile
太田莉菜・ゆのん
おおた りな●モデル・俳優。1988年千葉県出身。2001年雑誌『nicola』でデビュー。その後数々の雑誌、映画、ドラマで活躍する。’06年にはミュウミュウのキャンペーンに出演して話題に。最近ハマっているのはサバイバル番組「STREET WOMAN FIGHTER」。「最高のシスターフッドなんです!」。娘のゆのんは現在12歳。趣味は、「アニメ鑑賞!」

SOURCE:SPUR 2022年3月号「ファッションと日々のこと 太田莉菜&ゆのん「服愛」語り」
model: Rina Ohta, Yunon photography: Sodai Yokoyama styling: Kayo Yoshida hair & make-up: Yuko Aika 〈W〉 interview & text: Anna Osada

FEATURE