対話から生まれるニューワードローブ。新しいtao、始まりの白

トリコ・コム デ ギャルソンがブランド名を「タオ」に変えて新章へと突入する。白で描いた最新コレクションとデザイナーの言葉から、その魅力を解き明かす。

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ジャケット¥165,000・ドレス¥96,800・ソックス¥4,400・靴¥66,000/コム デ ギャルソン(タオ)

ショー冒頭に登場し、コレクションの中でも特に印象的だったシャーリングをきかせたジャケットとワンピース。「平面的というよりも立体的なフォルムが成り立つように工夫をした」と栗原さんが語ったとおり、作り込まれた構築的なシルエットが見る者の心をつかむ。アンティーク調の可憐な花柄が、ノーブルな白に華やかな魅力を添えている。

栗原たお氏が語る、新生tao

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Profile
栗原たおさん
ロンドンのセントラル・セント・マーチンズを卒業後、1998年よりコム デ ギャルソン社に入社。2002年渡辺淳弥氏から引き継ぎ、トリコ・コム デ ギャルソンのデザイナーに就任。以来、同ブランドを担当。

 

自分らしい表現をするための「タオ」としてのリスタート

40年以上の歴史を持つトリコ・コム デ ギャルソンが名前を変え、新たなスタートを切る。ブランド名はタオ。同ブランドを手がけてきたデザイナー栗原たおさんの名前を冠し、社名のコム デ ギャルソンを取り去った形だ。

「長く経験を重ねてきたことで、そろそろ自分のブランドとしての色を濃く打ち出していかなくてはいけない。前回のトリコのコレクションを終えた頃から考えていました。その気持ちを強く、クリアに表現するためには、名前を変えるのがいいと思いました。」

改名に至った理由をこう語った栗原さんは、トリコと兼任して2005年に自身の名前の入ったタオ・コム デ ギャルソンを立ち上げパリ・コレクションで発表していたが、2011年に終了。その後はトリコの制作に専念していた。

「タオ・コム デ ギャルソンはパリでイメージを凝縮させたコレクションとして表現していましたし、トリコ・コム デ ギャルソンはより幅広いお客さまに向けて洋服を作っていく"大きなブランド"という意識がありました。次のタオというのは、トリコの規模感を保ちつつ自分の色が強く出るものと捉えていて。手がけてきたブランドの地続きにはあるものの、新しい存在であり、新しい挑戦とも言えます。」

始まりを飾る2022年春夏コレクションのテーマは"MY WHITE"。プレス向けの資料に記された「タオらしさをさまざまな"白"で表現しました」という言葉どおり、クリーンなホワイトからオフホワイト、アイボリーといったさまざまな白で彩られたルックが発表された。

「ブランド名が変わってタオらしい表現を、トリコとは違う形で発信していかなくてはいけないと考えたとき、自然と白という色が浮かび上がってきました。もともと自分らしい見せ方ができる色という思いもあって、白を軸にいろいろな表現ができたら、と早い段階でスッと決まりました。」

ショーではギャザーやフリル、ラッフルをふんだんに用いたボリュームのあるシルエット、可憐な花柄のプリントや繊細なチュール、ひと目見れば心躍る愛らしさが詰まった世界観で観客を魅了。ベーシックなワードローブが豊富だったトリコ・コム デ ギャルソンとは違う、栗原さんらしいブランドのカラーを私たちに印象づけた。

「トリコで培ってきた"着やすさ"を意識しながらも、今回のコレクションではよりデザイン性を追求した表現も行なっています。着やすさと見た目の美しさが調和したアイテムがあり、見せたいものに集中して作ったアイテムもある。全体でバランスを取りながら、一元的ではない奥行きのある白の世界を作り上げていきました。」

 

ふたつの対話から生まれる、栗原たおさんのクリエーション

インタビューを進める中で、栗原さんのクリエーションは"ふたつの対話"の先に生まれることがわかった。ひとつめは服づくりをともにする”他者との対話”。チームとしてスタッフを擁するが、栗原さんは生地づくりや刺しゅうを担う協力者のもとへ実際に足を運び、直接話をする。ほかの誰かに任せることなく、自分自身で行うことを重視している。

「自分で伝える、自分で聞くことは、やはり大事だと思います。刺しゅうや生地を製作する現場におじゃますると秘密基地をのぞかせてもらうようで気分が高揚しますし、みなさんと話が弾んでいく中で大きなエネルギーが生まれるのを感じます。いいお話ができた日は興奮して寝られない、なんてこともあります。そしてタオのコレクションを作る中で日本の技術の素晴らしさを改めて感じたので、これからも一緒に発信していきたいと思っています。」

日本の技術を守り、広げたい。そう語り他者とのコミュニケーションを尊重する栗原さんだが、一方でそのクリエーションのスタート地点には必ず"自分自身との対話"がある。ある作品に着想を得る、社会や顧客の声を聞く、デザインにはさまざまな始まりがあるが、そのどれでもない。自分の内面から生まれてくるものを形にしていく。

「日々の積み重ねで感じることがいっぱいあって、特にこれというものがあるのではなく、少しずつ積み上がってきたものが最後の最後でまとまるという作り方で。制作過程でどちらが好き?といった投げかけはありますが、深いところは自分で決めないと進まない。これからはタオとして発信していくので、より自分が欲しいと考えるものをアウトプットしていかなくちゃいけないと思っています。」

それはとてもシンプルで、同時にとてもストイックな方法に思える。ひたすら自分と対話し、自分らしい表現を追求する原動力はどこからくるのか。

「川久保(玲)のモノづくりをずっと見ていますから。発表されたものを見ていつも美しいと思う、そしてそれまで持っていた"美しい"という概念が壊される。そこに刺激を受けます。同じやり方はできないですがついていきたい、その一心かもしれないです。」

これからも自分らしさは何かを問いかけながら服づくりを続けていくという。栗原さんの思いが詰まったコレクションは、2月より店頭に並んでいく。

「毎日の中で、おしゃれをするとか洋服を着て楽しむってすごく大事なこと。自分の表現のひとつなので。そこの部分で共感していただけたらうれしいなという気持ちで作っています。」

2022年春夏、taoのキー・ルック

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ティアードやプリーツ、細部に至るまで技巧が光る。ワンピース¥110,000・ブラウス¥38,500・スカート¥82,500・ソックス¥4,400・靴¥66,000/コム デ ギャルソン(タオ)

ドラマティックなAラインを描くワンピースとスカート、ブラウスにあしらわれた繊細なレース。繊細さと力強さ、どちらも併せ持つのがタオの服。

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目を奪われる端正なジャカードと柔らかな薄手の綿ローンのコントラスト。やさしげな生成りがクチュール的な装いを日常に落とし込む。コート¥220,000/コム デ ギャルソン(タオ)

ラメ糸で花々を表現したジャカードのジャケット部分に、ドレープのスカートを巻きつけて完成するドレスコート。仕立ての美しさは、まとうたびに胸打たれる。

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特別な加工を施されたハリのある綿素材が、麗しい佇まいをさらに引き立てる。あえて黒を選択したボタンがエレガントなアクセントに。コート¥97,900/コム デ ギャルソン(タオ)

ドリーミーなビッグカラーとボリュームのある袖は、凛としたクリーンな白で表現をする。愛らしくも甘すぎない、タオだからこそかなうバランス。

SPURが欲しいtaoのワードローブ

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一見するとシンプルなルックスでも、やや大きめの襟やレースなどさりげないディテールがきいている。ワンピース¥71,500/コム デ ギャルソン(タオ)

シャツワンピース/編集S
「オーセンティックなワンピースの袖にあしらわれたちょっとレトロなレース。長く愛用したい一着です。」

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クラフト感のある表情豊かな一足。可憐な白と華やかなゴールドの洗練配色が着こなしを格上げしてくれる。靴¥77,000/コム デ ギャルソン(タオ)

フラットシューズ/編集C
「刺しゅうやフリンジのついた装飾性の高いシューズ。ベーシックなパンツの足もとに投入予定です。」

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銀座の老舗「大和屋シャツ店」とのダブルネームアイテム。心地いい肌ざわりも魅力。シャツ¥42,900・パンツ¥39,600/コム デ ギャルソン(タオ)

パジャマ/エディター 久保田梓美さん
「レースの愛らしさ、コットンの風合い、上質なパジャマは大人の愉しみ。外着としても活用したい。」

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クリーンな色みとコットン素材が爽やか。パンツ¥49,500・靴¥66,000・ソックス¥4,400/コム デ ギャルソン(タオ) ブラウス・つけ袖(左上と同)

クロップドパンツ/スタイリスト 山本マナさん
「白いパンツをはきたいと考えていたところで出合った強い白。重たい靴を合わせて楽しみたいです。」

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チュール素材のスリーブ。つけるだけでロマンティックなムードに。ブラウス¥41,800・パンツ¥49,500・つけ袖¥33,000/コム デ ギャルソン(タオ)

チュールのつけ袖/エディター 上野真依さん
「ボリュームのあるフォルムにときめきます。どんなトップスもモードな装いに仕上げてくれそう!」

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イギリスの彫刻家Geoffrey Preston氏の作品をプリント。栗原さんが心惹かれ、自身で依頼をしたという。Tシャツ¥24,200/コム デ ギャルソン(タオ)

プリントTシャツ/編集M
「彫刻作品がプリントされた一枚は、少し不思議で心に残る存在感。シンプルな着こなしで主役使いを。」

 

SOURCE:SPUR 2022年3月号「新しいtao、始まりの白」
photography: Yuki Kumagai , Shinsaku Yasujima (栗原たおさん) styling: Mana Yamamoto hair & make-up: Hiroko Ishikawa 〈eek〉 model: Kanon Hara 

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