戸田恵梨香×影山蓉子、個性を自由に描くなら。ミューズとスタイリストの化学反応!

スタイリストにとって、創造力をかき立てるミューズの存在は大きい。俳優・戸田恵梨香さんは、影山蓉子さんにとって変化を楽しみながら目指したい人物像をともに描ける盟友でもある。戸田さんがショートヘアにしたことでさらに感化され、今回特別に6つのモードなスタイリングが実現。さらに、普段から「恵梨香」と「蓉子」と呼び合うほど仲がいいふたりの対談からは、常にお互いを高め合う様子が垣間見えた

Erika Toda (E)
とだ えりか●1988年生まれ、兵庫県出身。NHK連続テレビ小説「スカーレット」やドラマ「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」シリーズで主演を務めるなど、映画、CM、ドラマと幅広く活躍。

Yoko Kageyama (Y)
かげやま ようこ●1983年生まれ、東京都出身。文化服装学院でスタイリングを学ぶ。2006年より、スタイリストの広田聡さんに師事し、2009年に独立。国内外のモード誌をはじめ、広告やカタログ、俳優のスタイリングを手がける。

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Volume

E 「くるくる回る昔のオルゴールのようなイメージでまといました」
Y 「モード誌だからこそ絶対着てほしかったボリュームドレス」

「最初に見たときは"え!?"と驚きましたが、今どき感のあるスタイルで面白かった」と戸田さん。クリノリン・スタイルに着想した、ルイ・ヴィトンのパニエドレスを選んだ影山さんは「コレクションのテーマはタイムクラッシュ。19世紀のドレスが現代と衝突するムードを等身大に表現したかった」と語る。黒のベルベットのドレスの上に、ゴールド×シルバーのエンブロイダリーのトップスで華やかに。コスチュームライクな洋服に対し、足もとはシックなローファーと白ソックスで抜け感を出し、モダンさを表現。
トップス¥440,800(参考価格)・中に着たドレス¥3,113,000(オーダー参考価格)/ルイ・ヴィトン クライアントサービス(ルイ・ヴィトン) ソックス¥4,950/ホームステッド リミテッド(コーギー) 靴¥143,000/ジェイエムウエストン 青山店(ジェイエムウエストン)

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(右)スタイリングのカギになるソックスのシワ感も入念に整える
(上)「恵梨香に似合う」と確信したベージュのチュールハットをかぶせて
(左)スタイリング調整のときも、会話を弾ませる戸田さんと影山さん

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Colors

E 「ヒッピーっぽいニットは初めて。色で遊ぶのも楽しい」
Y 「カラフルな洋服はイメージにないからこそ挑戦したかった」

「着込んで薄くなったら寝巻きにしている」というほど戸田さんが愛してやまないカシミヤニットのブランド、ジ エルダー ステイツマンを主役に。グラデーションが美しいリブニットの上に、ピンクのニットをストール風にレイヤード。影山さんいわく「スタイリングの出発点になった」フェザーが施された緑のバミューダショーツを合わせ、ボーイッシュさをひとさじ。ビジューが煌めくサンダルにブルーのソックスを忍ばせ、配色の妙を楽しみたい。
上に重ねたニット¥190,000・ニット¥180,000/サザビーリーグ(ジ エルダー ステイツマン) ショーツ¥885,500(ヴァレンティノ)・サンダル¥374,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)/ヴァレンティノ インフォメーションデスク ソックス¥2,970 /ブリティッシュメイド 銀座店(パンセレラ)

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Trad

E 「ユニセックスなスタイルは、不思議な魅力があって好き」
Y 「トラッドの重ね着スタイルは、正直、想像以上にマッチ!」

「オールベージュできちんとした感じが絶対似合う」と影山さんがチョイスしたのは、戸田さんが普段は選ばないというトラッドテイスト。「頰にそばかすがあるような男の子」をイメージしてポージング。ミュウミュウの今季を象徴するトレンチコート、ポロシャツ、チノパンという普遍的なアイテムに身を包んで、マニッシュなルックを披露する。よく見ると、ベージュのポロシャツの下に白シャツを重ね、チノパンの中に、ハイウエストのブラウンのパンツをイン。巧みなレイヤード術が、新しいバランスを生む。
コート¥385,000・ポロシャツ(参考色)¥104,500・中に着たシャツ¥102,300・パンツ¥129,800・ベルト¥63,800(すべて予定価格)/ミュウミュウ クライアントサービス(ミュウミュウ) 中に着たパンツ¥71,500/ブラミンク リング¥31,460/トムウッド プロジェクト(トムウッド) ローファー¥193,600/ジョン ロブ ジャパン(ジョンロブ)

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Sporty

E 「普段着っぽくて着やすい。ソックスでカラーが入るのは、ポップになっていいね」
Y 「ややナードなスポーティ。蛍光色のソックスに反応してくれてうれしい!」

セリーヌらしいフレンチブルジョアテイストに、カレッジガール&トムボーイの要素を加えた春夏コレクションのルックがベース。「カジュアルになりすぎず、きらきらしてパンチはあるけど着たら意外になじむ感じがいい」と影山さんがイチ押しするスパンコールの総刺しゅうを施したフーディに、デニムジャケットを合わせて、ラインがきいたジャージスカートをのぞかせる。「白いソックスだとつまんないね」と、ネオンイエローのソックスが戸田さんのお気に入りポイントに。
ジャケット¥170,500・フーディ¥726,000・スカート¥104,500・ヘアクリップ(2個セット)¥50,600・ピアス(3個セット)¥50,600・ブーツ¥89,100(すべて予定価格)/セリーヌ ジャパン(セリーヌ バイ エディ・スリマン) ソックス¥6,600(参考価格)/ラコステお客様センター(ラコステ)

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Art

E 「アートっぽい動きをしないと成立しない洋服」
Y 「このインパクト。彼女なら着こなせると思った」

幾何学的なたくらみを洋服に落とし込んだ今季のロエベ。サルバドール・ダリが描いた歪んだ時計を彷彿させる槌打ちされたブラスメタルが、黒のドレスに浮かび上がる。「遊び心も少しありつつ、彼女が持っているエレガントな要素といいバランスを取ってくれると感じました」と影山さん。まるでアート作品そのものといえるユニークなドレスに、緑のショートグローブで思いがけないアクセントをプラス。「普段のマインドでは着られない特別な服でしたね」と撮影を振り返る戸田さん。
ドレス¥1,875,500/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ) グローブ¥6,600/HOOKED

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Sensual

E 「アライアは昔から好き。繊細だけど主張がある。女らしいところに惹かれます」
Y 「"センシュアル"は、恵梨香スタイルの重要なキーワード」

メゾンの創業者、アズディン・アライアへオマージュを捧げた2022年WINTER-SPRINGコレクション。彼が何よりも大切にしていたエレガンスを体現したタイトフィットのスカートは、裾に向かってボリュームが出るフィッシュテールが特徴だ。大人っぽいプラム色のボトムには、「ストイックになりすぎないようタンクトップでほどよい抜け感を意識した」という影山さん。チュールハットで恥じらうように目もとを隠せば、戸田さんのポージングも自然とフェミニニティへの賛美を描く。
トップス(2枚セット)¥5,280/ビオトープ(ヘインズ フォー ビオトープ) スカート¥616,000(参考価格)/リシュモン ジャパン(アライア) 帽子¥57,200/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(スティーブン ジョーンズ) ネックレス〈ピンクゴールド、ダイヤモンド〉¥491,700/伊勢丹新宿店本館4階=ジュエリー/レポシ(レポシ)

 

Interview  お互いを刺激し、アップデートを続けるふたりの関係

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戸田さんのお気に入りのブランドに身を包んで。
ドレス¥52,800/ムーン ツリー プラネット(TOO) 影山さんはすべて私物

メイクルームから聞こえてくる楽しげな笑い声から、ふたりの仲のよさが伝わってくる。ある日、影山さんが戸田さんのスタイリングに対して「もっと着てもらいたい服がいろいろある!」と情熱的に語っていたことがきっかけで実現した今回の企画。スタイリストの影山さんと、彼女のミューズである戸田さんとの関係について話を聞いてみた。

――ふたりの出会いを教えてください。

戸田恵梨香(以下E) SPURの撮影だよね?
影山蓉子(以下Y) そう。4年ほど前にSPURのビューティの企画でご一緒させていただいたことがきっかけですね。私は初めての俳優さんだし、とても緊張していました。そんな中、彼女がさらっとスタジオに現れて、気取った感じもまったくなくフラットに話してくれたから「めっちゃ好き!」って思いました(笑)。衣装を選ぶときも、ちゃんと服を見てくれるし、服がきれいに写るように動きを考えてくれる人なんだなと思いましたね。

 蓉子の印象は「かっこいい服を持ってくる人だ」と、とてもテンションが上がったのを覚えています。初めて仕事をしたときにフィーリングが合うなと感じて、マネジャーさんにまた影山さんにお願いしたい、と伝えました。

――戸田さんがスタイリストに求めるものはどんなことですか。

 現場が楽しいこと。そして、一緒にアップデートしていける人は素敵だなと思います。蓉子はファッションだけではなく世界情勢にも常にアンテナを張っている。女性としての感覚を磨き上げ、さまざまなことを学ぶ力がある。そこが好きなんです。そういう方が周りにいると自分も刺激を受けます。一緒に楽しく前に進んでいきたいですね。

――影山さんの信頼できるところは?

 信頼していないところがないからわからないな(笑)。

――出会った頃から、戸田さんに着てもらいたい服は変わりましたか?

 用意する衣装はコミュニケーションを取りながら考えていきますが、以前より攻めたものだったり、カラフルなもの、スポーティなものだったり、幅が広がった感じがします。

 舞台挨拶やイベントでは〝戸田恵梨香〟として表に出ます。そのとき、どういうふうに自分を表現していこうかというのはよく相談しています。自分のことを客観的に見るのは難しいので、スタッフとメイクアップが濃すぎるかも、これはつまらないかも、と話しながら方向性を決めていきます。一方、ファッションの撮影だと、洋服も見せなければならない。自分だけど自分ではない感じで、ベクトルがまったく違うから、面白いです。

――今回の撮影のように、一見難しそうな洋服にも挑戦してくださって、ふたりのいい化学反応を感じます。

 変わったデザインの服を持っていっても、まず笑って楽しみながら着てくれる。

 そうだね。とりあえず着てみる。今日のアライアのスカートは、この撮影の2日前ぐらいにSNSで冨永愛さんが着ているのを見て、ほかの現場で「素敵だね」と話していたんですよ。なので、衣装の説明を受けたときに「うそでしょ!?」って驚きました。ファッション撮影のときはだいたい楽しんでいるのですが、冨永さんが着ていたこともあり、初めてプレッシャーを感じました(笑)。でもやっぱりラインがきれいで、憧れのシルエットですね。

――スタイリングの影響を受けたり、私服の相談はしますか?

 自分のスタイルは変わらないですね。好きなものが決まっているから。今はMOON TREE PLANETというショップのアイテムに夢中。そこで取り扱っているブランドの中で、蓉子に相談してつないでもらった方が、この対談でも着ているTOOのデザイナー。今はこの服のファンです。

――影山さんは今後、戸田さんにどんなスタイリングをしたいですか?

 今回の撮影で結構かなっちゃった(笑)。普段は〝俳優・戸田恵梨香〟のスタイリングをしているから、見ている方や、そのときの恵梨香のマインドを考えて選ぶことが多いんですね。今日は私本位で、さまざまな服を着てもらいました。とても楽しかったし、ありがたかったです。

――普段、メイクルームではどんな話をしているのでしょう?

 いろいろ話していますけど、健康のことが多いかな。

 私たちの中で、恵梨香は先生なんです。たとえば「おなかの調子がこうなんだけど」と言うと「この食材を抜いてみて」とアドバイスをくれる。すごく勉強しているので、よく相談します。

 蓉子もいろいろ学んでいるから会話も弾む。ファッション以外のこともたくさん話せるし、健康についてもどんどん聞いてくれて、インプットしている姿に感心します。「やる」と決めても行動に移すことは難しい場合もあると思うのですが、自分の周りには言ったことを実行できる人が多い。だから話していて楽しいし、変化していくのを見るのもうれしい。もちろん変化のスピードや、一歩の大小はあるけど。そういう人たちと一緒にいるのが幸せですね。

SOURCE:SPUR 2022年7月号「戸田恵梨香×影山蓉子 個性を自由に描くなら」
model: Erika Toda  photography: Masaya Tanaka 〈TRON〉 styling: Yoko Kageyama 〈eight peace〉 hair: KENICHI for SENSE OF HUMOUR 〈eight peace〉 make-up: Haruka Tazaki 〈H studio〉 edit: Kaeko Shabana

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