濃厚で艶やかなチェリーの赤と、ふわふわな産毛をまとった桃のピンク。二つの果実からインスピレーションを得て、甘酸っぱく、みずみずしい配色のスタイルを提案。赤とピンクだけに染まった世界を旅してみよう
私のピンク、あなたの赤
2色のグラデーションに染まった世界で出会った二人。バイカラーのスタイリングは素材の違いを楽しみたい。
(右)くるみボタンまでサテンで統一したミドルレングスコート。バラクラバ風ヘッドピースを仕込んでアクセントに。コート¥572,000/クリスチャン ディオール(ディオール) ヘッドピース¥29,700/ショールーム ウノ(MUZARADI)
(左)ジャカード編みのセットアップには、透ける素材のフードつきトップスを合わせ、初夏らしいさわやかさを。ニットトップス¥255,000・ショーツ¥231,000(ともに予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ) フードつきトップス¥23,100/フィルグ ショールーム(シモーネ ワイルド)
迷宮のような建物で
淡いピンクで彩られた、迷路のような構造のマンション。赤い服と風船を目印に待ち合わせ。
(上)パフスリーブとフリルが愛らしいレザーライダースジャケットに、砂糖菓子のようなチュールドレスを合わせた甘やかなスタイル。
ライダースジャケット¥328,900/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(シモーン ロシャ) ドレス¥73,700/エドストローム オフィス(チカ キサダ)
(下)マニッシュなテーラード・ジャンプスーツは、大胆にチュールのラッフルが配されたドラマティックな一着。ジャンプスーツ¥132,000/ヴィヴィアーノ
白馬とともに、旅路を急ぐ
旅立ちの日にまとうのは、赤とピンクのウェービー トライアングルのパターンが配された、重量感あるシアリングのローブコート。やわらかく暖かく、体を包み込む。真紅のハイソックスに、シュガーピンクのメリージェーンを合わせて足もとまでストイックに仕上げて。
ローブコート¥1,529,000/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ) ハイソックス¥440/タビオ(靴下屋) 靴¥25,300/カンペールジャパン(カンペール)
食べられる宝石、食べられない果実
2021年に設立されたファインジュエリーブランド、YUTAI。ネックレスは、パールと球体に磨き上げたピンクサファイアが、直線的なゴールドとコントラストを描く。2連、3連、4連、と重厚感を増すデザインがラグジュアリー。
ネックレス〈あこや真珠・ピンクサファイア、K18YG〉¥5,060,000・(リング)
かつて日本で作られていたクラシカルなカクテルリングを再構築したコレクション。ルビーとダイヤモンドが組み合わされたトップ部分をアップサイクルして作成した。
(上)〈ルビー、ダイヤモンド、K18YG〉¥715,000・(下)〈ルビー、ダイヤモンド、K18YG〉¥770,000/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(YUTAI)
メッセージを受け取る
テレホンボックスで謎めいたコードを受信。アクティブなウェアも、この配色ならロマンティックに仕上がる。コーティング加工されたナイロン地にトーン・オン・トーンで柄を描いた「リキッド ペイズリー」ライン。その帽子とシャツのインには、アイコニックなトラックスーツを着てストリートスタイルをアップデートする。
シャツ¥267,300・帽子¥66,000/エトロ ジャパン(エトロ) トラックジャケット¥1,320/原宿シカゴ 神宮前店 トラックパンツ¥11,000/アディダス ジャパン(アディダス オリジナルス)
後ろ姿で語る青年
ハート模様に染め上げたバズカットが印象的な青年。Tシャツに装着したクロスサスペンダーで、主張ある背中に。ドロップのようなオーロラピンクのネックレスや、毒っぽい魅力を放つサークルピアスを飾って、チャーミングに盛り上げて。
サスペンダー¥69,300/CLIFF co.ltd.(FUMIKA_UCHIDA) Tシャツ¥1,320/アートン 渋谷店(ギルダン) ピアス¥44,000/スワロフスキー・ジャパン(スワロフスキー・ジュエリー) ネックレス¥15,400/フィルグ ショールーム(シシ ジョイア)
希望の道を空に描く
ポジティブな思いを2色に託す。
(右)主役は細かいプリーツが施されたベリーピンクのケープ。風になびかせて優雅に。セットアップと濃淡を楽しんで。
ケープ¥797,500/ヴァレンティノ インフォメーションデスク(ヴァレンティノ) ジャケット¥165,000・パンツ¥58,300/イザ(ヌメロ ヴェントゥーノ) 靴¥23,100/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン(ドクターマーチン)
(左)テクニカルリップストップ地のパーカは、立ち上がった襟が印象的。スカーフとグローブで差し色を。
パーカ¥403,700・パンツ¥128,700/バレンシアガ クライアントサービス(バレンシアガ) ブーツ¥19,800/ハンタージャパン カスタマーサービス(ハンター) スカーフ¥10,780・グローブ¥16,280/Hypnotique
スタイリスト吉田佳世に聞く、"ファッションストーリー"のつくり方
シュプールで数々のロマンティックなファッションストーリーをつくり上げてきたスタイリスト吉田佳世さん。夢にあふれる誌面は、どのように生まれているのだろう。
「まず考えるのは、人と空間の関係性です。どんな人で、どんな空間に佇んでいるのかを妄想し、テーマに反映しています。読み手にも、たとえば写り込んだ影から、その人がまとう空気や感情を想像してもらいたいんです」
確かに吉田さんのつくる世界に現れる人物は、笑顔だったりセンチメンタルだったり、多様な表情をたたえている。
「人物像を限定したくなくて。強いけれど繊細で傷つきやすく、涙を流したと思ったら数秒後には笑っている。そんな女性の複雑な内面性がにじみ出る瞬間をフォトグラファーと一緒に切り取りたい。そういう写真こそが、脳ではなく、心にキュンとくるものになると思うんです」
意識していることとしては、「普遍的な要素やキャッチーなエッセンスを加えること」を挙げる。「常に新しくあることは大切だけど、アーティすぎる写真は結局読者に伝わらないことも。ロマンティックな世界を誌面で表現するなら、玄人好みに転びすぎないバランスが大切」
そんな吉田さんが、ファッションストーリーにおいて目指すこととは?
「ページをめくった瞬間、大人が社会の鎧を脱いで、ピュアな気持ちに返れること。『この風景、子どもの頃夢で見た』と、どこか懐かしく感じてもらえたら」
過酷なスタイリストという職業の魅力を聞くと、「毎日へとへとになるけれど、チームでの撮影を終えて想像を超える写真が実現したときの達成感は代えがたい。映画や物語の中に入ってしまう感覚になります。そこに中毒性があって、気づいたら10年、20年たってしまいました(笑)」。
Kayo Yoshida
Profile
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、イーリーキシモトに入社。帰国後は酒井章子さんに師事し、2007年に独立。以後、シュプールなどのモード誌や広告などで活躍している。
Instagram: @kayoyoshida1977