扉を開くと、そこに広がるのは心ときめくワードローブ。お気に入りだけを詰め込んだクローゼットは、大きな宝箱だ。ファッションを愛する6名の、収納術とスタイルの秘密を公開
1. SAKURAさん(Cocoon美容師)
Instagram: @sakurakambe
人やものへの愛情を大切に育てていく場所
色彩と柄にあふれた華やかなワードローブが、ゆったりとラックにかかった空間。SAKURAさんのクローゼットを見ていると、装いを楽しんでいることがひしひしと伝わってくる。「ファッションのときめきは、自分だけでなく周りにも伝播すると思っています」。仕事柄、服を通してお客さまを元気づけたいと願っている。人を想う愛情は、同じように衣服にも注がれる。「作り手のアイデアが詰まったものや、人の愛を感じる服が大好き。そういうものは、ずっと大切にしていきたいと思う。だから、ほつれなどを見つけたら自分で手直しをします。そのために、ここには中学3年生の頃に買ってもらった思い出のミシンも入っているんです」。そのほか、家族からもらった手紙なども、服と一緒に保管しているという。「人の真心を感じ、見たときに心が揺れるものだけを収納しています」。開くたびに心が温まる、特別な空間だ。
1 シワになりにくいデニム類は、くるくる巻いてコンパクトに
2 アクセサリーはアイテムごとに見える化
3 長さや色で分けて収納
4 ヴィンテージのシルクスカーフをドッキングした、ベッティーナ バクダルのドレス。「着ると、まるで空気をまとっているかのように軽いんです。スカーフの柄をいろいろなバランスで組み合わせ、新しい命を吹き込んでいるのが素敵」
5 「ボーディは、大好きなブランドのひとつ。古い素材をアップサイクルしている点や、手の込んだつくりに惹かれます」
6 スパンコールで星をあしらったヴァレンティノのパンプスは、大人な遊び心を感じるデザイン。「少し背伸びする日に履く、特別な靴です」
7 「TORO Vintage Clothing」の山口郁子さんが手がけるブランド、「IRREGULAR」。「スタイリングを楽しむために、郁子さんが加えるアイデアが大好きで。このトップスは、チェッカーフラッグを上からプリントしたもの。レイヤードしたときに少しこの柄を見せよう、など、想像が膨らみます」
【Look.1】セシリー バンセンのワンピースに、古着のTシャツ、ボーディのアウターを重ねた。「個性派アイテムは、色でまとめて」
【Look.2】細部に刺しゅうが施された、セシリー バンセンのセットアップ
2. 天田みのりさん(会社員)
Instagram: @minori_amada
服とともに厳選した思い出も大切に保管して
デザイナーズ物件の住まいには、アートピースのように洗練されたインテリアが並ぶ。クローゼットにも、シーズンごとに厳選したアイテムのみを収納している。「コロナ禍に入って、仕事が在宅勤務になりました。その影響もあって、ここにあるのは必要最低限の服だけ。年に4回衣替えを行なっていて、毎回ムードを決めて中身を入れ替えています」。入り切らないものは、宅配収納サービスか実家に預けているという。「実家に送るのは、母とよく洋服をシェアしているから。お互いにファッションが大好きで、譲り受けることもよくあります」。所有している服のほとんどが、5年以上愛用しているものだという天田さん。「たとえば旅先で購入したり、誕生日のディナーのためにお祝いで買ったり。服を買うときには、ストーリー性を大切にするんです」。結果、記憶と深く結びついた特別なワードローブが完成した。
【Look.1】「アウターは、ニューヨークに留学中、現地の古着フェアで見つけたもの。キラキラしたものに目がないので、スパンコールの総刺しゅうに惹かれて購入しました」。全身のトーンを合わせつつ、ゴールドとシルバーをミックス
【Look.2】「グリーンとブラックの着こなしは、ブルーがかったライトグレーを加えて抜け感を」
【Look.3】重なったチュールが幻想的なメゾン マルジェラのドレスに、パコラバンヌのバッグを合わせて
1 「頻繁に衣替えをする理由のひとつが、アウター好きだから」。スペースを取るアイテムだからこそ、気候や気分に合わせてこまめに入れ替える
2 留学時に愛用していたというドリス ヴァン ノッテンのジャケットは、カジュアルながら繊細なビジューがポイント
3 「結婚式に向けて、この夏に購入したボッテガ・ヴェネタのパンプス。ストレッチ素材で、履き心地もいいんです」
4 ブランド創設初期から応援しているというエムエー デザビエ。「リラックス感がありながら、上質なシルクを使用した品のいい佇まいが素敵。この一着は、毛皮をプリントしたオリジナルのパターンを使用しています」
5 母親から譲り受けた、ウィリアム・モリスとロエベのコラボバッグ
6 結婚前にパートナーからプレゼントされたエルメスのシャツ
3. KEITOさん(モデル)
Instagram: @keito_1214
自分の"好き"を象徴するひと目惚れだらけの空間
クローゼットは、持ち主のパーソナリティがにじみ出る場所。KEITOさんのワードローブは、まさにその代表例だ。同棲中のパートナーとシェアしているという収納スペースも、ファッションのテイストにブレがない。「年によって少しずつ好みは変化しますが、基本の軸は変わらないです。たとえば、カラーは黒、赤、青の3色。アイテムはニット、柄だとチェックが好き」。服を買うときには、とにかくときめきを重視する。「仕事を通していろいろなブランドの展示会に行きますが、購入の決め手はほとんどがひと目惚れ。思い悩んで手に入れる、ということがあまりないんです」。ドメスティックブランドをこよなく愛し、古着も柔軟に取り入れる。「人とアイテムがかぶりたくないという気持ちがあって。トレンドはチェックしますが、そのまま取り入れることはしない。根底に反骨精神を感じるデザインやブランドに惹かれます」
1 Tシャツは、シワにならないよう四角にたたんで収納。かごはシルバーで統一して
2 シューズ、バッグ類は玄関先のラックに。全身鏡でチェックしながら、しっくりくるコーディネートを探す
3 ヴィンテージスニーカーは、スリッポンのようなデザインがレア
4 ホウガのつけ襟。味変できる小物類が好き
5 初期から応援しているというタナカ ダイスケ。すべて手作業による繊細な刺しゅうに、乙女心をくすぐられた。「このドレスは、クローゼットの中でも一番大切にしている洋服です。まとうだけで、お姫様のように特別な気持ちになれるんです」
6 すべて一点もののルルムウのニットは、アームカバーとセットで購入。「ずっと欲しいと思っていたのですが、人気な上に生産量が少なく、長らく巡り合えませんでした。たまたまショップに遊びに行った際に、一点だけ入荷があったと知って即購入。見るたびにときめきをくれます」
7 仕事でジョン ローレンス サリバンのランウェイを歩いた際に、ほかのモデルが着用していたジャケットにひと目惚れ。ショー後に購入した
【Look.1】マルニのワンピースにヘンネのショート丈のライダースを。ストッキングは、自分で破いてオリジナルにアレンジ
【Look.2】同じ素材や柄を重ねて、上級者のレイヤードスタイルが完成
4.吹上 恵さん(GIGINA、COMMONPLACEオーナー)
Instagram: @megumi_fukiage
見せる収納を極めた夢の衣装部屋
「ファッションがライフスタイルの中心」。そう語る吹上さんのクローゼットは、寝室を抜けると広がる、ガラス張りの空間にある。ベッドルームだけでなく、隣接するリビングからも中の様子が垣間見える。まるでショールームのような設計だ。「リノベーションでこのようなつくりにしました。隠すのではなく、あえてオープンにしています。そうすることで、私のストーリーがにじみ出ると思うから。長年アパレル業に携わっているので、店舗でレイアウトするような感覚もあります」。寝室を一段高く設け、対面には壁一面にミラーを設置。両サイドにびっしりと服がかかった衣装部屋は、鏡の視覚効果もあって圧巻の眺めだ。「ひと目でどこに何があるのかを見渡せるようにしています。そうすることで、スタイリングのアイデアが湧きやすくなるから。既視感のある着こなしではなく、常に新しい組み合わせを探しているんです」
【Look.1】レナータブレナのワンピースに、ジャックムスのアウターを。「見たことのないスタイル」を模索する吹上さんらしく、大胆なカラーリングとプリントが印象的
1 自身でデザインしたというアクリルのジュエリーケース
2 ラックの下には、個性的なシューズがずらりと並ぶ。玄関のシューズクロークから、季節に合わせてお気に入りをピックアップしている
3 鏡をうまく利用することで、圧迫感を軽減
4 服、シューズ、バッグ、アクセサリー類も、1カ所に集めることで朝の時間短縮に
5 「紙袋をモデルにしたアンノウン プロダクツのバッグ。素材は上質な牛革を使用。日本の職人さんが、一点一点手作業で制作しています」。サイズ違いでドッキングするのが、吹上さん流の使い方
6 「独特のパターンは、ユリア ホイヤーにしか出せない世界観。プリーツ加工による形状記憶で、洗濯機で洗っても型崩れしません。取り扱いのしやすさとファッショナブルな意匠が唯一無二」
7 ソフィオ ゴングリの手編みのニット。「自然界のモチーフをダイナミックに表現しています」
8 「ロエベのミュールは、夏は素足、冬はタイツで。足もとが華やかになる蛍光オレンジと、質感が可愛い」
9 寝袋がテーマのWRYHTの一着。「暖かくて着心地のよいダウンをずっと探していて、体をすっぽりと覆うデザインが気に入りました」
5.鈴木美智恵さん(スタイリスト)
Instagram: @michie_suzuki_
ときめきと実用性を両立するワードローブ
「仕事柄、常にワンシーズン先のスタイリングを組みます。だから、このクローゼットと自宅の別のスペースにはほぼ全シーズンの衣装をストック。急に必要になったとき、そばにないと困るんです」。メインで使用している部屋の一角には、気鋭ブランドから定番品まで、幅広いアイテムがぎゅっと凝縮されている。「収納のポイントは、とにかく"見える化"すること。可愛い服も、埋もれてしまうと意味がないから」。普段から、仕事を通して大量の服に触れている鈴木さん。「シーズンが終わっても持っておきたいと思うものは、リースが終わった後に購入しています。着ることが前提ですが、アーカイブのような意味もあるんです」。服を買うときには、ときめきと、自分に似合うかどうかのふたつの視点を大切にしているという。「経験を経て定まったこのフィルターが、自分のスタイルをつくっていると思います」
1 寝室兼衣装部屋として使用している一室。仕事では、私物を使ってスタイリングすることもしばしば
2 「最近改めて注目しているレノマ。おちゃめなパッチワークなのに、素材はスエードを使用。そのギャップにキュンとするんです」
3 積み木のような持ち手が目を引く、ジュウ ジュウのバッグ
4 ミュウミュウの2021AWシーズンのマフラーは、念願かなってゲットしたのだとか
5・6・7 いつも身につけているリング。大人になって、ハートモチーフに惹かれるように
8 ポーランド発のアップカミングブランド、バニティーナップ。「シャツやロングTに重ねて着ています」
9 コレクションを見て取り寄せた、アグとモリー ゴダードのコラボシューズ。「いつも愛でている一足です」
【Look.1】10着以上持っているという定番アイテム、ジャンプスーツ。「フェティコのブラウスを忍ばせて、レディライクな雰囲気をプラスしました」。抜け感を出すために羽織ったのは、メリル ロッゲのシャツ
【Look.2】アシスタントの頃に憧れていた、フィービー時代のセリーヌ。独立後に購入したブラウスを、スタイリングの主役に。「袖のカッティングを活かして、バッカのベストを重ねました」。パンツはドリス ヴァン ノッテン
6.長尾悦美さん(クリエイティブディレクター)
Instagram: @yoshiminagao
"今の自分"を形作るエッセンシャルな品々
2022年に新居へ引っ越しをしたという長尾さん。理由のひとつが、収納面だった。「クローゼットが、少し手狭になったんです。転居を機に、収納アドバイザーの友人からもアドバイスをもらい、空間を活かす方法をより考えるようになりました」。丈の長いワンピースはパンツ用のハンガーを使用するなど、デッドスペースを減らす工夫が光る。「実は、このほかに宅配収納サービスも利用しています。自宅に置いているのは、今のスタメンと、特に思い入れのあるヴィンテージアイテムのみ。本当に必要なものを見極め、クローゼットの中は服を管理するのにベストな量に保っています」。年を重ねるにつれて、自分の中の服選びの基準が確立されたという長尾さん。「デザインだけでなく素材から愛している服は、長く手もとに残ると思います。それから、自分のスタイルをつくる上で、ヴィンテージアイテムも欠かせない要素ですね」
【Look.1】「ザ ロウのセットアップに、あえてアウトドアなアウターを。ネイビーとターコイズで、トーンを合わせてみました」。胸もとには、ヴィンテージのブローチを添えて
【Look.2】「これまで苦手意識のあったピンクも、メンズライクなシャツだと取り入れやすい。ベスト感覚で重ねたニットのタンクトップは、1920〜30年代の男性用のスイムウェアです。ほんの少しの意外性で着崩すのが、自分らしいスタイルだなと思っています」
1 棚の上段には、リネン類やバッグを収納
2 シューズクローゼットの上にさらに重ねた靴箱は、同じもので揃えて統一感を
3 通年着回せるデニム類は、たたんで寝室のチェストに。クローゼット以外の収納スペースもうまく利用している
4 縁あって1年間務めたCITYSHOPのコンセプター。その際に制作した思い出のトラックジャンプスーツは、ニードルズの別注品
5 長尾さんのオーダーによって実現した、レザーブランドのSISIIとアーティスト村上周さんとのコラボレーションベスト。すべて一点ものの、アートピースだ
6 80年代のアライアのニットジャケット。「ラインの美しさと上品なムードがお気に入り」