モードラバーから絶大な支持を得、惜しまれながら閉店したセレクト&ヴィンテージショップ「KALMA」。オーナーの溝口 翼さんが新たに二つの店舗をオープンした。個性あふれる服や店内のインテリアへのこだわり、その2店にかける思いを聞いた
梅ヶ丘 fernweh
ときめきをシェアする空間
東京・梅ヶ丘の駅からほど近い場所に「fernweh」は誕生した。「KALMA」時代にもおなじみのメリル ロッゲや、ティスカ・エスパダスなどのデザイナーズブランドを引き続き扱う。ヴィンテージはさらに個性豊かで、華やかなアイテムを厳選して展開する。「服だけでなく、雑貨やアート作品の販売にも力を入れたいですね。思い切り好きなものだけを詰め込んで、チャレンジができる実験場をイメージしています」と溝口さん。
仙 台 FERN OST GALERIE
東北のファッションシーンを盛り上げる
宮城県仙台市の中心にある商店街にオープンした「FERN OST GALERIE」。溝口さんはディレクターという形で、店舗で扱うブランドのセレクトや、インテリア、空間デザインのアドバイザーとして携わっている。店頭ではヨウヘイオオノやフォトコピュー、フェティコなど長年、溝口さんが応援していた日本発祥の実力派若手ブランドを中心に提案する。今後はヴィンテージも順次紹介する予定だ。
溝口さんと考える「ワクワクするショップ」の作り方
異なるコンセプトの2店舗で、ファッションの魅力を発信
長年、日本のファッションシーンで、ヴィンテージの新しい見せ方や、気鋭のブランドを紹介してきた溝口 翼さん。彼が2023年の秋にローンチしたのが「fernweh」と「FERN OST GALERIE」だ。同時期に二つの店舗を手がけるきっかけを聞いた。
「僕のキャリアはヴィンテージから始まりました。20代からバイイングやセレクトに携わっていたので、ずっとプレーヤーでいた感覚。数年たつと、『KALMA』では、古着だけでなく、新しいブランドも扱うように。自分自身が現場でバリバリ動くだけでなく、若いデザイナーをオーガナイズする立場になりました。プレーヤーである自分と、オーガナイザーとしての自分。各々アプローチがまったく異なる動きが求められるんですよね。それぞれに必要な表現を、『fernweh』と『FERN OST GALERIE』に落とし込んだんです」
異なる表現を行う二つのショップ。それぞれのコンセプトの違いについて尋ねるとこう語った。
「『fernweh』は、自分がとことん好きだと思えるものを中心に。服は『KALMA』時代から扱っている、メリル ロッゲやティスカ・エスパダスなどのデザイナーズや古着を。写真集やアート、家具やライフスタイルにまつわるプロダクトにも力を入れています。一方で、『FERN OST GALERIE』では日本発祥のブランドを中心に。自分にとって未知である土地の開拓を、安心して任せられるデザイナーの服をチョイスしました。仙台では、メンズに比べてウィメンズのブランドがなかなか展開されない現状があったんです。東北のファッション好きの方に実際に手に取ってもらいたいと思う服を選びました。すでに著名なブランドでも、スタイリングや見せ方など、僕らしいフィルターを通して新しい魅力を届けられたらと思っています」
未知の世界を知りたい人が集う場所を作りたい
モード好きから信頼を得て、注目を集める溝口さん。心躍るショップ作りを行う際、その力の源はいったい何なのだろうか。
「根本には、見たことがないデザインとか、誰も知らないような昔のローカルデザイナーのアートピースを知りたいっていう強い知的好奇心があるんです。それらに触れると、自分自身がワクワクするんですよね。引き続き円安で、ビジネスの面から見ると日本は不利な状況です。それでも、海外に買いつけに行きたいと思う理由はそこにある。やっぱり人って、心のどこかにまだ見たことのないものへの欲求とか、未開拓なものにときめく本能があると思う。ファッションが好きというだけでなく、こういう考えを持つ人々に出会える場にできたらと思っています」
ヴィンテージショップのバイヤーを経て、下北沢に「KALMA」をオープン。2023年3月に閉店後、秋より梅ヶ丘に「fernweh」、仙台で「FERN OST GALERIE」を手がける。