十人十色のマイ・アイコンがいる時代。SPURがやっぱり大好きなのはクロエ・セヴィニー! 今もずっと揺るぎないオリジナリティとおしゃれ魂を持つ彼女のスタイルを深掘りしたい。モード界きってのファン、スタイリスト浜田英枝さんが考える2体のスタイリングからスタート。
Topic 1 浜田英枝、クロエ・セヴィニーを語る
自身のスタイリング哲学にも多大な影響を受けたというスタイリスト、浜田英枝さんが唯一無二の魅力を解説。
「クロエ・セヴィニーのことを知ったのは映画『KIDS』(1995年)を観たとき。その頃のモード界は、スーパーモデルが主流でしたが、クロエがオルタナティブなファッション誌のカバーに起用されていて、すごくクールだったことを覚えています。そこから、あっという間にハイブランドのキャンペーンモデルに抜擢され、ファッションアイコンとして世界的に知られるようになっていきました。彼女の印象が鮮烈だったのは、どんな洋服でもクロエ流に着こなしてしまうところ。彼女の個性は洋服の力に左右されないんです。スーパーモデルたちのように非の打ちどころがない人間というよりも、コンプレックスもあるけれど、それを逆に楽しんだり、スタイリングに活かしている。その後のファッションが個々の魅力を尊重する時代になったのは、彼女の影響が大きかったと思います」
「セクシーな装いでも、そのまま着ないのがクロエのオルタナティブなマインドを感じるところ。たとえば黒のハイスリットのスカートにはボディスーツを選んだり、上質なアニマルプリントのスカーフや白タイツを主役に遊び心たっぷりにミックスして着こなすはず。クロエは自分のことをよく理解しており、あらゆるファッションをポジティブに解釈していて、その自由なマインドにも惹かれます」(浜田さん)。体のラインを美しく描くコルセット内蔵のスカート。ウィットに富んだ小物選びがクロエらしさのカギ。
「クロエがニットやカーディガンを着ていても"ほっこり"しないのはなぜだろうと考えたことがあります。そこには相反する素材感を合わせるというポイントがあると気づき、サテンライナーつきのニットカーディガンをベースに仕立てのいいタキシードシャツを合わせました。スクールっぽさもあるし、センシュアリティもあり、要素が複雑に絡み合っているのも彼女流。透け感のあるタイツに白ソックスを重ねてギーク感も忘れたくないですね」(浜田さん)。一枚でサマになるカーディガンをよりモードに解釈。シャツのドレスライクなディテールも絶妙なバランスを作る。
カジュアルからドレスアップまで。彼女の日々のスタイルから、リアルな着こなしに応用できるポイントをピックアップ!
自分のシルエットを熟知したドレス選び
華やかな場所でキャッチされるクロエはヴィンテージ調のプリントが目を引くドレスを粋に着こなしている。甘い印象になりがちなドレスでも彼女の絶妙なさじ加減でモダンに着地。なぜなら、自分の体型に合ったタイトなシルエットで緊張感を加えているから。ミニでもロングでもこのルールを応用。ドレスの存在感を活かすために小物は黒のベルトやバッグ、シューズと可能な限りミニマルなものをチョイス。メリハリをつけることで彼女ならではの甘すぎないスタイリングが完結する。
ニューヨークのトライベッカ映画祭のディナーパーティに参加したクロエ。ひときわ華やかなグリーンのプリントドレスはロング&リーンなシルエット。ウエストを黒いベルトでマークし、バッグや靴も黒で合わせたことでドレスの印象も際立つ。
マイアミでの年越しイベントに登場したクロエはチェック柄のミニドレスをまとって。タイトフィットなミニドレスはギャザーやラッフルで立体的なシルエット。足もとを重めにつくることでガーリーすぎないバランスに着地させた。
肌の見せ方の強弱で大人のスクールガールに
クロエの自慢のパーツといえば、まっすぐで長い脚。それが健康的な魅力を発揮するのはユニフォームを思わせるアイテムを軸としたスタイルだ。スポーツユニフォームをミックスする旬な"ブロークコア"のトップスやパンツにキトゥンヒールを合わせてみたり、ガーリーなチェック柄のミニワンピースにハイソックスを合わせてみたり、足もとに大人っぽく見せるポイントを作りたい。小物はシックなデザインを心がけてマチュアにまとめ、洋服とのギャップをきかせて。
ユニフォームライクな番号をあしらったVネックトップスとトレーニングショーツとのコンビネーション。単なる"ジム着"にならないポイントはすらりとした脚を見せながら、あえてスニーカーではなくパンプスでノーブルにまとめたから。手にしたレザーアウターも辛口なスパイスとして有効。
ニューヨークの街中でスナップされた日はチェック柄のドレスをキュートに着こなしていた。黒のタートルネックやハイソックスでスクール風のアクセントをプラス。サングラスをかけることでぐっとクールな表情に。
白と黒が引き締める潔さはモードの基本
普段はヴィンテージやポップなアイテムとのミックス術を駆使するクロエ。ここぞという勝負どきには、ウルトラモダンなジャケットスタイルを好んで着ている。主役に選ぶのは白か黒の仕立てのいいジャケット。そこにセンシュアルなアイテムをレイヤリングすることで、艶を加えるのがルールだ。ここでも美脚を大胆に見せることで、逆にヘルシーな印象を与えるのも上級者テクニック。ヘアやメイクアップをナチュラルにして、全体のバランスを整えているのも印象的。
LAで新ショップのオープニング祝いに駆けつけた日は白いジャケットで華のあるムードに仕上げた。インには黒で統一した開襟シャツとショートパンツのセットアップをかけ合わせる。ジャケットとパンツの丈を合わせるように着こなすのもクロエの得意技。ストラップつきのヒール靴やクラッチでフェミニンさもプラスした。
ラペルに艶のある黒ジャケットとシャツというドレッシーな着こなしで映画のプレミアに登場。ボトムスはミニ丈にすることで、クロエらしいコケティッシュなスタイリングに落とし込んでいる。足先などにラグジュアリーな小物を合わせて、パーティスタイルに華を添えて。
ピースフルなデニムのスタイルに熱視線
クロエのデイリーなワードローブにはデニムが欠かせない。美脚を活かすことができるLA風のショートパンツやパリシックなフレアタイプなど、一貫して70年代を思わせるラブ&ピースなセレクション。そこに厳選されたヴィンテージアイテムをミックスすることでノンシャランに。本来はリラクシングなムードでまとってしまうところをリュクスな小物を選ぶことで都会的にまとめあげるのも彼女らしいアクセント。どこかにエッジを加えるとベストバランスに導いてくれる。
素足を大胆に出したショートデニムスタイルはクロエの定番。ロマンティックなレーストップスを合わせ、ボーホールックを楽しんでいる。サングラスやバッグでブラックを差し込んで、モダンなツイストをきかせたい。
LAでキャッチされたクロエはフレアタイプのデニムにエレガントなレオパードジャケットを合わせた、ヴィンテージシックなスタイル。ウォッシュした明るい色みのデニムが重厚感のあるアイテムに抜け感をつくる。サングラスはレトロなクリアフレームを選んで遊び心をプラス。バッグや靴でドレスアップすれば、カジュアルすぎないデニムルックに仕上がる。