2024年春夏シーズンの復帰以来、リアルに"欲しい!"という声が続出中のブランド、カルヴェン。ファッションプロからの熱烈なラブコールとともに、クリエーションの魅力を掘り下げる
2024年春夏シーズンの復帰以来、リアルに"欲しい!"という声が続出中のブランド、カルヴェン。ファッションプロからの熱烈なラブコールとともに、クリエーションの魅力を掘り下げる
part.1 秋冬コレクションから注目のルックを語る
Louise Trotter says
新生カルヴェンの2回目のコレクションでは、クリエイティブ・ディレクター、ルイーズ・トロッターのビジョンがさらに明確に打ち出された。彼女はこう言う。
「私たちはマダム カルヴェン※のブランドへの向き合い方にとてもインスパイアされています。特定のプロダクツというより、彼女の自由なスピリットに。彼女はプレタポルテを刷新しました」。こう感じることによって、ルイーズは自由にカルヴェンのビジョンを固めることができたとか。
「ディテールとクオリティに細心の注意を払って仕立てた美しい服、はっきりとした目的が感じられる服。そして着心地がよく、身にまとうことで自信を持てる服を目指しています」。また彼女はチームとともに、カルヴェンを着る女性を思い描いた。「カルヴェン・ウーマンは忙しい日常においても世界に目を向け、朗らかで外交的。彼女が好むのは、緻密に仕立てられ、タイムレスで長持ちする服なのです」
※マリー=ルイーズ・カルヴェン。1945年に「カルヴェン」を立ち上げ、1993年に引退するまで同ブランドを率いたデザイナー。
part.2 私たちが狙う、小物のウィッシュリスト
一見シンプルに見えるけれど、計算し尽くされたバランスや素材使いで、装いをモードに刷新する立役者。今狙うべき、"イット"なアイテムはこれだ
part.3 どうして今、Carvenが着たくなるのだろう?
ファッションプロが注目している新生カルヴェン。その理由は? バイヤーとエディター、スタイリスト、それぞれの視点から、カルヴェンとルイーズ・トロッターの魅力に迫る
illustration: LeNa SATO text: Minori Okajima
わたなべ かおり●書籍を出すほど、自他ともに認めるイギリスカルチャー好き。
もりた かより●SPURなどの雑誌を通してファッションの魅力を発信。
しみず なおみ●詩的で上品なスタイリングを得意とし、本誌でも活躍中。
かたぎり えりか●国内外の気鋭デザイナーズを開拓する手腕に定評あり。
ルイーズ・トロッターが作る服は〝変わらない〟ことが魅力
――2024年プレフォールシーズンから日本への取り扱いが復活するカルヴェン。いち早く着たい! という熱意ある4人にお集まりいただきました。
片桐 「インターナショナルギャラリー ビームス」でも展開が始まるのですが、バイヤーとしてはもちろん、いちファンとしてローンチを待ち望んでいます。
清水 私は先日撮影でカルヴェンの服をリースしたばかり。実物に触れてみて感動したのは、ルックでは見られない細部にこそ、こだわりが詰まっているところ。アウターの裏地にレースを用いていたり、着てみてわかる要素がたくさんありました。
森田 その気持ち、わかります。パリにある旗艦店を訪れたときにシャツを試着したのですが、襟が丁寧に仕立てられていて、背すじがしゃんと伸びる感覚に。
渡部 今日着ているTシャツもカルヴェン?
森田 正解! パッと見は普通のTシャツなんだけど、袖のつけ位置やかすれたような背面のプリントなど作りが細かくて。自分へのパリ土産に買って帰りました。
渡部 森田さんとは、パリで開催されたカルヴェンの展示会へ一緒に行ったんですよね。ルイーズ・トロッターがクリエイティブ・ディレクターに就任して最初に手がけた2024年春夏シーズン。
片桐 もしかして旗艦店の上階にあるアトリエでしたか? 私は2024年プレフォールで初めて足を運んだのですが、あの空間は独特でしたよね。もとは、創業者のマダム カルヴェンが住んでいた邸宅とか。
森田 同じ場所だと思います。私たちが訪れたときはところどころ壁紙がはがれていたり、物がすごく少なかったりとあえて手を加えていない雰囲気が不思議で。
清水 それは意図的に?
渡部 そう。ランウェイに登場した服や小物が備えつけの棚に何げなくレイアウトされていたり。どこか余白を残した見せ方に心惹かれましたね。
片桐 シーズンを迎えるたびに少しずつ装飾を足しているのでしょうね。そんな、ゆったりとした変化が実にルイーズっぽい。目まぐるしく移ろうファッション業界の中で、自分らしさを見失わずにブランドとじっくり向き合っている感じ。それが彼女の魅力かなと思います。
清水 ルイーズがジョゼフのクリエイティブ・ディレクターとして活動していた頃から現在まで、根底にあるデザインの捉え方はあまり変わっていないんですよね。カルヴェンはパリに住んでいる女性のためにオートクチュールを始めたという経緯だと思うのですが、それを現代に落とし込むセンスをルイーズは持っている。
森田 彼女は決して口達者なデザイナーではないけれど、しっかりデザインで表現しているんですよね。その実直さが好き。
清水 2024年春夏から最新の3シーズンがすべて、コートから始まっているところにもこだわりが感じられます。
片桐・森田・渡部 確かに!
清水 全身を覆うようなオーバーサイズのシルエットが、かなり印象的でした。
森田 生地をたっぷり使った、ボリュームのあるコートは実際に羽織ってみたい。
片桐 プレフォールではダブルフェイスカシミヤのロングコートなど、素材使いも贅沢。「インターナショナルギャラリー ビームス」ではブラックのウールジャケットを買いつけています。皆さんの反応を見ると、今後はコートもバイイングしてみようかなという気持ちになりますね。
渡部 私は今のカルヴェンが提案する力強いフォルムに一番惹かれているので、アウターやトップスが欲しいなと思っています。
清水 肩まわりは少し角張っているんだけど、どこかにやわらかな曲線がある、まるで砂時計のようなシルエット。
渡部 ボリューム×ボリュームが生むバランス感って、とても情緒的ですよね。スザンヌ・コラーによるスタイリングも巧み。突飛なことはしていないんだけど、美しい。
片桐 異素材によるグレーのグラデーションもきれいで、きっと似たようなアイテムを組み合わせただけでは、この奥深さは表現できないと思います。
清水 女性の一日の流れに沿った作りをしているような気もしますよね。たとえば、快適なカットソーやリラックス感のあるワイドパンツも、夜に着るとまた違った一面が表れる。そんなアンビバレントな魅力がカルヴェンの服にはあると思います。

















