【Simone Rocha】シモーン・ロシャにインタビュー。「私の永遠のテーマは、多面的な女性らしさの表現」

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた

シモーン・ロシャプロフィール画像
Simone Rochaシモーン・ロシャ

ダブリン生まれ、父はデザイナーのジョン・ロシャ。地元のアートスクール、次いでセントラル・セント・マーチンズで学び、2010年の卒業制作が注目されて即デビュー。第1回LVMH Prizeではファイナリストにも選出された。

シモーン・ロシャがよく口にする言葉がある。
"自由"と"パワー"だ。彼女が言う"自由"を成すのは、何よりも生い立ちによって形成されたアイデンティティ。

「父は香港出身で私は中国にルーツがありますが、生まれ育ったのはアイルランド。だからアイルランドの伝統や儀式は私自身の、そしてクリエーションの一部です」と、シモーンは語る。さらに20代からはロンドンに住んでいる彼女が認識するのは、文化も政治も宗教も違う3つのバックグラウンドを通じ、一つのカテゴリーに属さないことのユニークネスだ。

「私が伝えたいのは真のエモーション。自分ならではの環境でこそ、それが表現できると思います。服を通じて私だけのストーリーを語る自由は、私の"パワー"とも言えるんです」

もう一つ彼女にとって自由とパワーを結びつけるのは、自身のブランドの現在に至る立ち位置だとか。
「デビューから10年以上たった今もインディペンデントでいられるのは幸運なこと。たくさんのサポートにとても感謝しています。同時に、個別に存在することのリスクも意識しているんですよ。大きなグループを中心に動いている今日のファッション界の一部でありつつ、私のブランドがわが道を行っているのは確か。でも独立を保ってこそ、パワフルでいられます」

そんな彼女なりの強さにさらに奥行きを与えたのは、今年1月に発表したジャンポール・ゴルチエのゲストデザイナーとしてのクチュールコレクションだ。
「ゴルチエとの仕事では彼のアーカイブスにインスパイアされ、そのスピリットを"今"に再解釈して、私のレンズを通して表現しました。パワフルなフェミニニティです。また彼からは、熱意とエネルギーをもらいました。私自身はどちらかというとあまり感情を露わにしないほうですが」

そして今、シモーンは新境地を迎えている。2024年春夏コレクション、続いてゴルチエでのクチュール。そして現行秋冬コレクションから成る"三部作"を終え、次のランウェイは新しいチャプターとなるからだ。「これまでより遊びがあって若々しく、挑発的で同時にナイーブ。そんな、新しい提案をシェアできるのが楽しみです」と、興奮気味に語る。

シモーンはこの秋、いくつかの新しいプロジェクトを抱えている。まず2025年春夏シーズンは、クロックスとのコラボレーション第2弾発表の機会。さらに10月には、初の作品集を出版する予定だ。この機に自身の過去の作品を見直した彼女が取り組みたいのは、2013-’14年秋冬での厳格でミニマルともいえるアプローチや、2023年春夏で取り入れたユーティリティの要素。これらは、彼女のビジョンや作風にさらに磨きをかけるだろう。
「センシュアルで奥手。そんな複雑な女性らしさを表現し続けていきたいと思います。それが私のシグネチャーですから」

【Simone Rocha】シモーン・ロの画像_1

19世紀のヴィクトリア女王の喪服にインスパイアされ、コルセットのディテールやシアーな素材を多用した2024-’25年秋冬コレクション。ショーは、12世紀建造の教会で開かれた。ここでお披露目されたクロックスとのコラボレーションは、2025年春夏にも続いていく

【Simone Rocha】シモーン・ロの画像_2
【Simone Rocha】シモーン・ロの画像_3

10月に出版されるコラボレーションも含めた初の作品集『Simone Rocha』(Rizzoli刊)。カバー写真はペトラ・コリンズが5年ほど前に撮影した、シモーンのアーカイブスルームでのショット

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