世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの
一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた。ここではUNIQLO : C(ユニクロ:シー)を率いるクレア・ワイト・ケラーのインタビューをお届け。
世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの
一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた。ここではUNIQLO : C(ユニクロ:シー)を率いるクレア・ワイト・ケラーのインタビューをお届け。
ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業後、グッチなどで活躍。クロエ、ジバンシィなどのアーティスティック・ディレクターを経て、2023年よりユニクロ:シーを率いる。現在はユニクロのクリエイティブ・ディレクターに。
クレア・ワイト・ケラーは、"再発見"を通じて未来を見つめているようだ。「再発見の機会は、日々の生活のどこにでもあります。さまざまなことに目を向け、新しい習慣を取り入れると、物事が新鮮に見えてくるんです」。彼女のこんなポジティブなものの見方から生まれたのが、今季からメンズウェアが加わったユニクロ : シーの最新コレクションだ。大自然の中でも街でも、とにかく外に出て歩き回るのが好き、変化する街の環境を見直すのも楽しい、という彼女が再び発見したのは、バービカン・センター。ロンドン東部に位置する、ヨーロッパ最大の文化施設だ。
「ブルータリズムのアイコニックな建築です。1980年代にオープンした当時は最も醜い建築物といわれていました。ですが最近はとてもシックでモダンに改装されて、活気を取り戻しましたね。SNSで見ると、たくさんのフォトグラファーの撮影場所にもなっているようです。ここには若いジェネレーションが集い、とても魅力的なコミュニティを作っています。アートや映画のコミュニティの意味合いが刷新されていると思うんです」
バービカン・センターからのインスピレーションは、建築物としての形やスタイルより、そんな多面性と活気にあったのだ。また"再発見"は、サーキュラーエコノミー(循環経済)にもつながっている。
「バービカン・センターが示唆するように、必ずしも古い建物を壊して新しいものを作る必要はありません。再生させ、活性化させられる可能性がある限り。これはファッションでも同じこと。私が今着ているユニクロのセーターは10年前から持っていますが、ワードローブをまるごとリニューアルするのではなく、新しいものを加えて、若返らせることが大事です」
では、そのプロセスで大事なポイントは? まずは、再解釈に値するかつてのヒットアイテムを適切なタイミングで見つけること。最近では1990年代のフラットシューズやミニトップスを見直したクレア。リサーチに大いに役立っているのが、自身のアーカイブス、つまり膨大なクローゼットだ。
「すべてをラックにかけるか、畳んで棚に収納しています。アイテムごとにある程度オーガナイズしていますが、たまにお目当ての一点が見つからないことも。でも探しものをしているうちに忘れていたものが目につくこともあり、サプライズや"再発見"をもたらしてくれるんです」
現在は、個人的な活動としてアフリカの少女たちに教育の機会を提供するプログラムへの参加を準備中だというクレア。これまでもオックスファム(貧困救済を目指す、国際的な慈善団体)に古着を寄付したことはあったが、本格的なチャリティは初めて。新しいことに挑みつつ、常に"再発見"のアンテナを張っていることで、彼女は温故知新の目で見い出した過去の優れたものに、新たな生命を吹き込み続けている。