【ロジェ ヴィヴィエ】ゲラルド・フェローニにインタビュー。「手仕事に対する好奇心を後世へ」

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた。ここではロジェ ヴィヴィエのクリエイティブ・ディレクター、ゲラルド・フェローニのインタビューをお届け。

世界で活躍する8人の視点。デザイナーが未来に紡ぐもの

一流のモードの作り手たちは今どんなことを考えて、何を見据えているのか?クリエイティブな才能を発揮し続ける8人に、未来への希望を聞いた。ここではロジェ ヴィヴィエのクリエイティブ・ディレクター、ゲラルド・フェローニのインタビューをお届け。

ゲラルド・フェローニプロフィール画像
ROGER VIVIERゲラルド・フェローニ

イタリア・トスカーナ出身。パリのグランメゾンでシューズ、アクセサリーのヘッドデザイナーを務めた後、2018年よりロジェ ヴィヴィエのクリエイティブ・ディレクターに就任。エレガントで折衷主義なデザインに支持が厚い。

2018年にロジェ ヴィヴィエのクリエイティブ・ディレクターに就任し、メゾンに洗練された感性を吹き込むゲラルド・フェローニ。ファッション、クラフト、自然、歴史。あらゆるものへの愛情あふれる作品を世に届ける彼が、心を躍らせるのはどんな瞬間だろうか。

「インスピレーションが湧いて、スケッチをするときですね。さらに好きなのは、アイデアをチームと共有し、一緒に実現させるプロセス。図案を具現化することは楽しく、いつも時間を忘れるほど夢中になります。最初から成功するときもあれば、途中で技術的に難しいとわかることも。ただ困難に直面したときほどオープンな心でいると、美しい驚きが生まれるんです」

彼の手にかかれば、まるで魔法のようにすべてが美しいファンタジーになる。その名声を高めたものの一つが、就任して間もなく発表した「ヴィヴ ラン」。メゾンのアイコニックなバックルを携えたクチュールライクなスニーカーは、現代女性のニーズにこたえた快適な履き心地も備わり、根強い人気を誇っている。
「ヴィヴ ランを発表したときにもSPURで紹介してくれて感謝しています。ロジェ ヴィヴィエにとって、初めてのスニーカーで大きな分岐点でしたから」

その後、本誌はパリのアトリエや自宅、コロナ禍でのイタリアのヴィラでの暮らしなど、創造性や情熱の源を探る数々の企画で取材する機会に恵まれた。
「パンデミック時に自分自身のことについて紹介する機会を与えていただいたことにも感謝しています。京都で体験した日本伝統工芸や、盆栽に対する私の情熱を読者の皆さんと共有できたことも楽しかった」

今はシューズにとどまらず、ハンドバッグ、ジュエリー、帽子、ジレまでカテゴリーを拡大。ハンター・シェイファー、セレーナ・ゴメス、チェン・イーシンなど次世代のセレブリティにも愛されるラグジュアリーアクセサリーブランドへと進化した。
「今まで以上に『生きる喜び(Joie de vivre)』を表現するために、大胆なデザインに挑みたい。フランスの伝統であるサヴォアフェールを守り続けることも大切な使命。コレクションごとに伝え方は変わりますが、これからもその価値は揺るぎません」

自身のデザイナーとしての使命について「ファッションに喜びとスピリットを吹き込むこと。"楽しいものを作る"ことに、いつも真剣なんです」と断言する。現在取りかかっている2025年春夏コレクションでも、空想の世界へと誘うクリエーションを披露してくれるだろう。時代のニーズにこたえながら、形を変えながら。未来にもしっかりとゲラルドの深い愛が刻まれるに違いない。
「後世の人たちが私の作品を見て、デザインの世界を探究するきっかけになれたらうれしいですね。そして人間の職人技に対する好奇心を呼び起こすことができれば本望です」

ロジェ ヴィヴィエ

ロジェ ヴィヴィエの長年のコラボレーターである羽根細工職人、エリック・チャールズ・ドナティアンの技巧

ロジェ ヴィヴィエ

ロジェ ヴィヴィエを象徴するバックルは、職人の手作業によってクリスタルが一つひとつあしらわれている

ロジェ ヴィヴィエ 2024-’25年秋冬オートクチュールコレクションのプレゼンテーション 

今年6月にパリで開催された2024-’25年秋冬オートクチュールコレクションのプレゼンテーション。自然の生態系や神話が着想源に