約10年に1度のペースで新作を発表する作家、ドナ・タート。寡作ながらそのどれも評価が高く、『ゴールドフィンチ』はピューリツァー賞を受賞。そんな彼女は90年代から現代まで一貫して、知性あるトラッドにひとさじの毒を感じさせるスタイルに身を包む。サブカルチャー、ダークアカデミアの元祖と呼ばれる彼女の着こなしに装いのヒントを得よう
約10年に1度のペースで新作を発表する作家、ドナ・タート。寡作ながらそのどれも評価が高く、『ゴールドフィンチ』はピューリツァー賞を受賞。そんな彼女は90年代から現代まで一貫して、知性あるトラッドにひとさじの毒を感じさせるスタイルに身を包む。サブカルチャー、ダークアカデミアの元祖と呼ばれる彼女の着こなしに装いのヒントを得よう
ドナ・タートのファッションスタイル
Dear Donna Tartt / 山崎まどか
ドナ・タート、あなたこそがダークアカデミアの女王。古代ギリシア語とラテン語、ロシア文学を教える幻の寄宿舎学校に君臨するのにふさわしい存在。私はあなたの小説と、その作品世界を体現したかのようなあなたのファッションスタイルに夢中です。
『黙約』でカリフォルニア育ちの青年が編入する、バーモント州の小さなリベラルアーツ系のカレッジは、南部で育ち、チアリーダーでデビュタントだったあなたが今の「ドナ・タート」となった、ベニントン大学をモデルにしていると言われています。ほかの学生たちがどんちゃん騒ぎをするのを横目に、あなたは寮の部屋でマティーニを振る舞う小さな会を開いていました。黒いブロケードのスーツを着て、細く長いシガレットホルダーで煙草を吸う様子は、まるでサロンの女主人のよう。男女問わず、あなたに夢中になる学生が多かったという噂も納得です。
その頃から黒髪をボブカットにしたあなたは近年、男仕立てのスーツのファッションでも有名です。乗馬服のような細いシルエットのタータンチェックのジャケットに真っ赤なタイ。黒いジャケットにアンティークらしき白いレースのブラウス。あるいは、封蝋を思わせる赤いカフスボタンといったどこかエキセントリックなディテール。南部ゴシック的なところもあり、あなたが冷たい霧のようにまとう神秘性にはかすかにスイカズラやジャスミンの香りもします。それはまさしく、あなたの小説の要素そのもの。小柄なのに威厳のある女性に似合う、不思議なセクシーさがあります。私はいつもあなたの新しい小説とポートレートを待ち焦がれています。