Q.1 ミナ ペルホネンはどんなブランドだと思っていますか? A 道端で不意に見つける四つ葉のクローバーのような存在。「私、ここにいます」と主張する、あるいはすごく探さないと見つけられないというよりは、ふと目を向けたらそこにひっそりとあった、というような。そしてそれを大事に持ち帰った人が、「今日はいいことがあった」と一日中幸せを感じる。そういう特別な時間が訪れるような存在でありたいものです。
Q.2 アトリエでは何⼈くらいのスタッフがどんな仕事をしていますか? A アトリエではデザイナーをはじめ、生地、生産、パタンナー、小物のデザインなど、約80名のスタッフが働いています。皆、アトリエ内を行き来しながら複数のプロジェクトを同時に動かすなど、部署を超えた動きが活発なので、横につながりながら前に進む、渡り鳥のようなイメージです。
callやeläväで購入できる商品の一部。オーガニックの野菜やワインもラインナップ
Q.3 それぞれのお店にしかないものはありますか? A コレクションラインを扱う店舗のほか、テキスタイルを展開する店舗や、食品を扱う店舗もあります。たとえば、青山のcallや馬喰町のeläväでは、有機野菜生産者から仕入れたおいしくて安心できる野菜やワインも扱っています。eläväでは主に北欧を中心に集めたヴィンテージ家具に、ミナ ペルホネンのインテリアファブリックを張り替えた家具も紹介。国内外の作家による一点ものの販売なども。各店舗でいろいろな出合いを楽しんでいただきたいです。
Q.4 いつかお店を出したい場所はどこですか? A 北欧のどこかに。いつか実現できますように。
Q.5 もう二度と作れないテキスタイルがあれば教えてください。 A 絣はプリント工場と敷物工場の連携が大切で、協働してひとつの柄を作り上げていきます。今は生産できないテキスタイルでも、またいつか生産できる産地との出合いがあるといいなと思います。
Q.6 最も作るのに時間がかかるテキスタイルは? A 37種の草花や鳥たちが刺しゅうされた"forest parade"(2005年春夏)(上)は、一反、刺しゅうをするのに60時間以上かかります。その上、ドレスから浮き立つレースの状態にするまでには、刺しゅう後に周りの生地を溶解し、レース状に仕立てた上でドレスと合わせる、という段階を踏むため、工程数も多く時間を要します。また"swing camellia"(2022-’23年秋冬)(下)は、生地を2枚重ねて花の輪郭を刺しゅうし、その後輪郭に沿って上の一枚だけ手で生地をカットするため、一着に仕上げるまでに多くの時間を要します。
Q.7 今までで最も生産したテキスタイルは? A 2000-’01年秋冬に登場した"tambourine"(右)は、その後ブランドを象徴するテキスタイルとなりました。刺しゅう、プリントなどほぼ毎シーズン表現を変えて使っているテキスタイルです。インテリアファブリックとしてたびたび展開していることもあり、最も生産量が多いと思います。それに次ぐのは、2001年に発表してから作り続けている"choucho"(2001年春夏)(左)です。
皆川さん直筆のデザイン画
Q.8 パターンの特徴はありますか? A パターンはテキスタイルとの調和と、着心地としてのシルエットの調和を考えて、素材の適性とともに、今考え得るデザインとしての表現をしたいと考えています。(皆川)
Q.9 余った布はどのように扱っていますか? A お直しや余り布を使ったプロダクトの展開をしています。余り布=ピースを集めた「ピース,バッグ」や、パッチワークした生き物の形のクッションなどがあります。
Q.10 社内だけで通じる略語やキーワードはありますか? A どのテキスタイル、アイテムにも名前をつけて呼ぶようにしているのですが、ミナ ペルホネンのデザインは1シーズンで終わらず繰り返し登場することもあり、"tambourine"ひとつでもたくさんの種類があります。社内では「◯◯さんがよく着ている"tambourine"」「私の"tambourine"の色違い」という情報とともに、生地やアイテムを特定することがたびたびあります。
Q.11 コレクションのテーマや色はどうやって決めていますか? A コレクションのテーマや中心になる色はとても直感的で、今、自分が感じている社会の出来事や空気から、まず言葉が、そこからさらに色や形が頭に浮かんできます。それは一つの事象からというよりは、今のように混沌とした戦争や政治、経済の問題のもつれのような状態から、人はどのような心持ちになるのか、どのようなデザインがそれらの救いになるかを抽象的なイメージで捉えようとしているのだと思います。統計的な数値などでは測りづらく、直感的なイメージのほうが的確に捉えられるように感じています。(皆川)
Q.12 オートクチュールを作る可能性はありますか? A ミナ ペルホネンは日常の特別な服という領域に常に関心を持っているので、オートクチュールの制作に入る可能性は今のところ少ないと思います。ただファッションにおいてオートクチュールという世界は、手仕事と贅沢な素材によって生み出されるクリエーションなので、とても大切で残るべき領域だとも感じています。私たちはオートクチュールの持つその精神や創造性を、日常の中でも感じられるような服を作りたいと考えています。(皆川)
Q.13 フレグランスやジュエリーラインなど、今ないものを作る可能性はありますか? A これまで作ったことのないすべての領域に可能性はあります。それらを日々意識しながら、自分たちならどのような表現で作っていけるのかを考えることは、ミナ ペルホネン全体の方向を考えることでもあり、未来を思考することだと思います。(皆川)
2011年8月からミナ ペルホネンが毎週1通公開しているレター。2015年1月13日のレターより。
Q.14 好きな言葉は? A 「つけっぱなし」(皆川)
Q.15 田中さんから見た皆川さんってどんな人? A 宇宙人。地球の人ではなさそうな感じです。たとえば、天才というのはまだ人間の形を保っているものですが、それを超越しているというか、たまに人間の形をした何かに見えることがあります。涼しい顔をして、常に5ミリくらい浮いている。それが神様とか、そういうものではなくて、見えない何かによって生かされている存在、とでも表現したくなりますね。(田中)
皆川さんの休日の様子。お手製の料理と保養所"hoshi*hana休寛荘"の暖炉。
Q.16 休日の好きな過ごし方は? A 日帰りなら行き先だけ決めたドライブ。泊まりなら保養所で暖炉に薪をくべて、のんびり料理をしたり、本を読んだりして過ごしたい。(皆川)
Q.17 ミナ ペルホネンのテーマ曲を作るとしたら、どんな音楽? A 「三百六十五歩のマーチ」のような曲。とにかく「柔の道は一日にしてならず」みたいなイメージです。三歩進んで二歩下がる、でも元気よく、気づいたら進んでいる、着実に、という感じの音楽だと思います。(田中)
Q.18 展覧会『つぐ minä perhonen』で伝えたいことは? A 11月22日から、『つぐ minä perhonen』展を東京の世田谷美術館で開催します。ご覧いただいて、ミナ ペルホネンにとっての「つぐ」を感じていただくと同時に、見ていただいた方々にとっての「つぐ」とは何か、ご自身の内側と会話してもらえるような展覧会になればと思っています。(田中)
Q.19 空間のディレクションで意識していることは? A 訪れるお客さまの心地よさを、物理的なデザインと空間の佇まいの関係性、そして迎える側のホスピタリティとのバランスを想像しながら計画したいと意識しています。それらを素材や機能に落とし込みながらバランスを整え、過ごす時間が心地よくなることを大切にしています。(皆川)
Q.20 インスピレーションを受け止めるために、普段心がけていることは? A 心が常に世界を観察している状態にしていたい。特別な体験からのインスピレーションだけではなく、日常の所作や日々のルーティンの事柄からも新しい気づきが生まれるよう、ニュートラルで好奇心のある心でいたいと思っています。(皆川)
Q.27 ミナ ペルホネンとして、挑戦してみたいことは? A 私自身、飛行機で旅をすることが大好きなので、航空会社にまつわることなら何でもやってみたいです。
Q.28 ここにツナ缶が一つあります。どんな料理を作りますか? A ツナ缶にアンチョビやオリーブの実、ナッツを加えてタプナードを作り、マグロの赤身とアボカドをミンチして重ね和えトーストしたレーズンパンの薄切りにのせたものはいかがでしょうか。最後にレモンをひと搾りするのも忘れずに。(皆川)
Q.29 世の中から「なくなってほしい」と思うことは? A 戦争と飢餓と人種差別。(皆川)
Q.30 皆川さんにとって「つぐ」とは? A 個人の単一な経験や時間ではなく、それぞれがつながり、継続し、継がれ、さまざまな派生を生んで広がっていくような世界を想像しています。そうすることで、小さな失敗やエラーを吸収し、新たな可能性にも変換できるポジティブな空気を生み、利己的な思考から利他的で友好的な社会につながるのではないかと理想を持っています。(皆川)