2026年ファッション界はどう動く? 二人のインサイダーが予測!

ファッション界の動向をすべて把握し、キーパーソンたちとの交流も深い二人が、2025年を振り返り、2026年を予測する

ファッション界の動向をすべて把握し、キーパーソンたちとの交流も深い二人が、2025年を振り返り、2026年を予測する

LUCIEN PAGÈS (ルシアン・パジェス/ルシアン・パジェス・コミュニケーション主宰)

LUCIEN PAGÈS (ルシアン・パジェス/ルシアン・パジェス・コミュニケーション主宰)

2026年は、移籍したデザイナーたちの実力が試されるとき

「2025年は"椅子取りゲーム"と呼ばれるデザイナー交代劇の、ほんの幕開け。移籍数の多さに加え、ビッグメゾンに若手が起用されたこと、ディレクションの一新が不況打破への挑戦であることも、2025年の特徴でした。第一幕が終わった今楽しみなのは、デビューコレクションが実際にマーチャンダイジングを経て店頭に並び、何がどれほど売れるかを見ることです」

コミュニケーションのキングといわれ、1シーズンに4都市で計40以上ものショーを手がけるルシアン・パジェスは、今後の動きを冷静に見つめてこう語る。

「どのメゾンも予算を削減している中、これまでのようにデザイナー交代ごとのブティック大改装はあり得ないでしょう。移籍デザイナーたちはまずメゾンの既存の環境に順応し、自身の出来高を証明しなければいけません。デザイナーが物理的に新しいメゾンに慣れるには、2、3シーズンかかるもの。ルイーズ・トロッターはファッションマンス終了後に『これから、初めてみんながリラックスして仕事ができる』と言っていましたよ。2025年はSNSでの噂が蔓延するなど雑音が多かったけれど、これからが勝負ですね。オートクチュールのシーンも面白くなるでしょう。7月にはディオールとシャネル、ジャンポール・ゴルチエのデザイナー交代後初のオートクチュールが発表されます。バレンシアガも近々クチュールに乗り出すでしょうし(1月か7月かは未発表)、グレン・マーティンスによるメゾン マルジェラの『アーティザナル』は2回目を迎えますしね」

また、仕事柄彼の関心は、SNSでの発信の仕方にもある。

「今後の課題は会場での、特にイマーシブな体験を、オーディエンスにどう伝えるか。最近はショーのゲストでなくてもライブ配信と同時にコメントできるし、事後にもプレスリリースや展示会を見ていない人たちがSNS上で言いたい放題。一方、体験者たちが状況をレポートし、感想を綴っても、ユーザーたちのザッピングに紛れて読まれなければ意味がありません。そんな中、誰が"クリックベイト"を発信するのか? とにかく、インパクトのあるビジュアルとシンプルな言葉で、一瞬でオーディエンスの心をつかむことが必要です。噂もスクープでないとアピールが弱い。だから、既存のメディアとコメンテーターたち、ゴシップアカウントのすべてが混沌としています」

さらにその鋭い着眼点は、AIへ。

「現段階でのAIは書くためのツールにすぎませんが、今後はAI自体がインフルエンスとなっていくのか……。その発展からは目が離せませんね」

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1 ルシアンいわく「ショーは直後だけでなく、長期にわたる話題性が大事。その点では、ジャンポール・ゴルチエにおけるデュラン・ランティンクのデビューコレクションは秀でていた」

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2 ジョナサン・アンダーソンによる、ディオールでのウィメンズ初のショーでは「冒頭に上映されたホラー映画仕立ての動画が彼らしい大胆さを物語っていた。特に美しいと思ったのは、紫陽花ドレス」

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3・4「サンローランのショーはエッフェル塔を背後に生花でかたどったロゴのセッティング。終盤にドレスの一連が続いたのも圧巻で、パリ・ファッションウィークの幕開けにふさわしかった」と、ルシアン

 

Profile

パリのオートクチュール協会学校でファッションを学んだ後、クリスチャン・ディオールのプレス部門を経てアートディレクター、マーク・アスコリのアシスタント。2006年にルシアン・パジェス・コミュニケーションを設立。

BEKA GVISHIANI(ベカ・ヴィシアニ/@stylenotcom コンテンツ・クリエイター)

BEKA GVISHIANI(ベカ・ヴィシアニ/@stylenotcom コンテンツ・クリエイター)

1990年代のファッションが今後どう発展していくか、見守りたい

青地に白文字でヘッドライン風に綴った最新ニュースで知られるアカウント@stylenotcom。人気の理由は、情報に奥行きを与えるジャーナリスト的視点とベカ自身の体験や感情のミックスだ。

「この一年間を通じて最もエキサイティングだったのは、ジョナサン・アンダーソンのディオールでのデビュー、つまりメンズのショーでした。期待通り、ファーストルックからして驚くべきコンセプト・ミックス。バージャケットやカーゴパンツ、と幾層もの歴史的要素が含まれていたんです」と、ベカは語る。

"歴史"は、簡潔ながら説得力のある投稿の原動力だ。彼の主な情報源は、『ニューヨークタイムズ』のアーカイブス。1970年からのファッションウィークの記事に目を通し、ショーのレビューからゲストの面々、彼らがショー後に行ったレストランやパーティ、そこでのおしゃべりの内容まで、すべての情報をむさぼり読む。たわいもないことからちょっとしたトレンドが読み取れることも少なくない。

さらに彼を常にインスパイアするのは業界の友人たちとのディスカッション。

「ハイエンドブランドはインフルエンサーを通じてすべてを見せることでリュクス感を保てるのか、それとも秘密主義がかえって消費者の興味をそそる、ザ・ロウのようなやり方が効果的なのか? これはよくルシアン・パジェスと語り合うことのひとつです。インフルエンサービジネス自体がピークに達していますから、近い将来淘汰されていくでしょうね」

一方ベカは、10月の「アート・バーゼル・パリ」ウィーク中にエドワード・エニンフルが"The 90s"トークを催したことも見逃さなかった。そこで1991年生まれの彼に、2026年のトレンドといわれる90年代について聞いてみると「今も時代を牽引しているデザイナーたちが芽吹いた90年代は、ファッション史上大切な時期でしたね。『1997年ファッション・ビッグバン』展(2023年春にガリエラ宮パリ市立モード美術館で開催)でも語られていました。たとえばグッチの今は、トム・フォードなしに語れません。歴史は繰り返すと言いますが、これからのファッションが当時のインパクトを受けつつどう前進していくのかは、まさに争点ですね。だからこそ、デムナによるグッチの"真の"デビューコレクション(2026年2月)が実に楽しみなんです」

また彼によれば今見るべき展覧会は、自身もコラボレーションした『Catwalk』。文字通りファッションショーを主題とした展覧会は、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムで2月15日まで開催中だ。ここでもファッション史をおさらいすることで、未来を見る目が養われる。

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5 ジョナサン・アンダーソンによるディオールでのデビューは6月のメンズ。写真はファーストルック

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6 ヴィトラ・デザイン・ミュージアムの『Catwalk: The art of the Fashion Show』展より、ベカのインビテーション・コレクション

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7 ザ・ロウのショーではゲストによる撮影が制限されている旨は、ベカのメモ(6)にも記載されている。写真はルックブックより

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8 ミシェル・オバマが早くもマチュー・ブレイジーによるシャネルのルックを見事に着こなしたことに注目

Profile

ジョージア出身。地元でビジネスやコミュニケーションを学び、トビリシでブランド・コンサルティングを務める。2021年にローンチしたインスタグラムのアカウント@stylenotcomの投稿は本にまとめられ、2026年秋には5周年イベントも予定されている。現在はパリ在住。

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