少女時代の一瞬のきらめきと複雑さに焦点をあてたアントワープで開催中の『GIRLS』展。そこから着想を得た自由で退屈なTOKYO GIRLの物語。まだ何者でもない彼女の時間は、創造性に満ちている

可愛いけど、ちょっぴり小生意気。TOKYO GIRLの物語

少女時代の一瞬のきらめきと複雑さに焦点をあてたアントワープで開催中の『GIRLS』展。そこから着想を得た自由で退屈なTOKYO GIRLの物語。まだ何者でもない彼女の時間は、創造性に満ちている

ヴィンテージのスウェットとガーリーなチェックのスカート

トップス¥7,770/ジャンヌバレ ショーツ¥53,300/CARV STORE(シュシュトング) スカートベルト¥193,050/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DURAN LANTINK) 靴下¥2,640/キワンダキワンダ(キワンダ) 靴¥146,300/セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス(セルジオ ロッシ)

あべこべな気持ちはどこにぶつける?

ヴィンテージのスウェットとガーリーなチェックのスカートは鉄板の組み合わせ。と見せかけて、フラットに仕立てたスカートがベルトになっているように、素直になれない自分の気持ちを表現してみたくなる。

ウェディングドレスなどをリメイクしたアートピースで知られる「ハナ ヤギ」のボレロ

ボレロ¥440,000/ハナ ヤギ ヴィンテージのニット¥12,810/ジャンヌバレ チノスカート¥133,100/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(AUGUST BARRON)

着たいものを着るガールの野望はどこまでも

ウェディングドレスなどをリメイクしたアートピースで知られる「ハナ ヤギ」のボレロ。ひとたびまとえば日常から飛び立てるアイテムが彼女を自由にする。ヴィンテージのチノパンをリメイクしたスカートやプレイフルなロゴが躍るニュー・プレッピースタイルに合わせて自己流に着こなしたい。

黒と白のポルカドットのドレス

ドレス¥358,600/クロエ カスタマーリレーションズ(クロエ)

純真な素顔をポートレートに閉じ込めて

黒と白のポルカドットのドレスはいつの時代も女の子の憧れ。シルクジャカードのフリルをふんだんにあしらったドレスはどこまでも軽やかな喜びに満ちあふれている。普遍的なアイテムは大人であっても、子どもであっても、その人の個性に寄り添い、ピュアな表情を引き出す。

ヴィンテージのキルトガウン

ドレス¥57,200/GIGINA(ANIGIG) 中に着たヴィンテージスモック¥58,800/ジャンヌバレ ヘアバンド¥73,700/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(SIMONE ROCHA) 靴下¥3,960/キワンダキワンダ(キワンダ) 靴¥160,600 /ジバンシィ ジャパン(ジバンシィ by サラ・バートン)

眠れない夜にさまようたゆたう心

ヴィンテージのキルトガウンをドレスのように仕立てて。繊細な小花柄やガーリーなフリルが彩るアイテムにレースを重ねてアンビバレントな表情を浮かべる。

モモコ チヂマツのボディピース

ボディピース¥913,000/サヴァン Vョールーム(モモコ チヂマツ) ヴィンテージTシャツ ¥19,800/GIGINA パンツ¥57,200/CARV STORE(キムへキム) 頭につけたクリップ ¥28,600/ ドーバー ストリート マーケット ギンザ(SIMONE ROCHA) 靴下¥1,210/キワンダキワンダ(キワンダ) 靴¥139,700/セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス(セルジオ ロッシ)

スウィートネスにはひとひねりが必要

元気いっぱいのスポーツアイテムは大好きだけど、どこかに自分らしいツイストを利かせたい。エシカルなメッセージを込めたモモコ チヂマツのボディピースはまとうことで、アートな問いを投げかける。

ベロアのトップス

トップス¥280,500・デニム¥220,000・バレッタ¥71,500・ベルト¥72,600(すべて予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ)

揺れ動く感情をもてあます不安定な日

重厚でシックなベロアのトップスは、マチュアな表情。センチメンタルなスカイブルー色の襟を加えることで、多面的な少女の内面を映し出すようだ。グッドガールではいられない彼女はデニムを合わせて、ユースカルチャーの薫りをくゆらせる。

うさぎのヘッドピース

ヘッドピース¥224,400/ドーバー ストリート マーケット ギンザ(STEPHEN JONES) ニット¥57,200/アンセルム レースタイツ¥7,920/キワンダキワンダ(キワンダ)

いたずらに過ごす時間に何を思う?

空想が無限に広がる少女の放課後はゆっくりと流れる。うさぎのヘッドピースを身につけたら、違う世界に遊びにいけるかな? ビッグシルエットのニットに包み込まれて、物思いに耽る。退屈を持て余すいたずらな横顔は謎めいている。

『GIRLS』展に見る、少女時代の記憶

服やアートに見る、多感な少女たちの想い

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1.ソフィア・コッポラによる映画『ヴァージン・スーサイズ』に基づいたベッドルーム(2025)© MoMu Antwerp, Photo: Stany Dederen

ガールズ。幼い少女から大人の女性への過渡期。それは複雑で曖昧、もろくてナイーヴな反面、強くて美しい。この世代は芸術やサブカルチャーにおけるカテゴリーとして、多くのアーティストや作家、デザイナーたちを触発してきた。このテーマを探ったのは、ベルギー・アントワープのファッション博物館、MoMu。“退屈と反抗、そして中間にいること”を副題とする『ガールズ』展では、年齢による定義を超えたガールフッドを、服とインテリア、そしてアートを絡めて見せている。

会場に足を踏み入れるとまず聞こえてくるのは、ソフィア・コッポラによる映画『ヴァージン・スーサイズ』(’99)のサウンドトラック。リズボン家の5人姉妹の物語に基づいたインスタレーション(1)を前に、本展キュレーターのエルザ・ダ・ヴィンハートはこう語る。

「退屈感が描かれたこの映画は、本展では欠かせない要素でした。でもシーンを再現するのではなく、“記憶”としてのベッドルームを構想したんです。乱雑さと色調は極力映像に忠実ですが」。同映画の衣装係を務めたナンシー・シュタイナーの提供による衣装のいくつかは、『ガールズ』展を象徴する要素だ。キルスティン・ダンスト演じる四女のラックスが着たプロムドレスは、その一つ。プロム(アメリカの高校の卒業記念パーティ)は年齢、シチュエーションともに“ガールズ”そのもの。だからファッションの展示室には、アントワープ王立芸術学院が輩出したデザイナー、ヴェロニク・ブランキーノによる“プロムへの準備〟コレクション(2000年春夏)のドレスが選ばれた。さらなるキーアイテムは、リズボン姉妹の最年少、セシリアが着ていたウェディングドレス。少女なら誰もが夢見るものとして、本展では白のロマンティックなドレスがさまざまなシーンで登場する。

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2.Léon SpilliaertによるGirls with white stockings (1912) © Mu.ZEE Collection artisinflanders.be  Photo: Cedric Verhelst

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3.Fumiko Imano の写真作品Yellow bath/Hitachi/Japan(2007)© Fumiko Imano

そしてエルザは歩を進めつつ、ある作品の前で足を止めた。

「本展の準備では、女性アーティストの人生をたどり、彼女たちの“ガールフッド”と作品への影響をひもづけるのが面白かったですね。イマノ フミコによる想像上の双子の妹とのセルフポートレートの一連(3)は、ブラジル育ちの彼女が日本帰国をきっかけに自身のアイデンティティを探るようになったことに帰しています。さらに象徴的なのは、ルイーズ・ブルジョワの作品群」。最初は男の子を望んだ父親をがっかりさせたものの、次第に溺愛されるようになった娘と父の関係は、生涯を通じて彼女のアートの原動力となった。

また父親と年頃の娘の関係で見逃せないのは、フランソワーズ・サガンの小説『悲しみよこんにちは』。本展では少女時代を巡る映画の抜粋を集めた20分のフィルム上映もあり、オットー・プレミンジャー監督の同題映画(’58、主演はジーン・セバーグ)も含まれている。ちなみにこの映画のリメイク版(2024)で父親の恋人役を演じているのは、“永遠の少女”クロエ・セヴィニー。

写真や絵画、スカルプチャーとさまざまなカテゴリーの中でもMoMuが力を入れたのは、なんと言ってもファッションだ。

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4.Karyn LyonsによるDay for NightよりWhen Magic Filled the Air (2025) Courtesy of Karyn Lyons & Stems Gallery photo: Hugard & Vanoverschelde

「着眼点はデザイナーたちの、10代の頃の思い出。単にガーリーなスタイルではなく、“記憶”がどう掘り下げられているかを探ったんです」とエルザは言う。その観点で最も興味深いのは、シモーン・ロシャ。

「彼女は自身が育ったアイルランドの神話や言い伝え、民俗学に常に惹かれています。でもルーツは香港で、カトリックではありません。そのためコミュニオン(聖体拝領式)でクリスチャンの女の子たちが白い繊細なドレスを着るのを羨望のまなざしで見ていたそうです」

最後に本展に加えて特筆したいのは、アメリカのアーティスト、カリン・ライオンズによる絵画(4)の一連。小さな頃に母親と生き別れになったことから、普通の家庭の子どものようには経験できなかった、想像上のガールフッドが描かれている。

多感な頃への、甘く切ないノスタルジー。それを思うと、ファッションやアートへのまなざしも奥深くなる。

INFORMATION

『Girls. on Boredom, Rebellion,and Being In-Between』

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開催中〜2026年2月1日
MoMu-Fashion Museum Antwerp, Nationalestraat 28 2000 Antwerp ポスターの写真はJim BrittによるSisters(1976)。コムデギャルソンの1988–’89年秋冬コレクションのキャンペーンでも使用された。グラフィックデザインはPaul Boudens。© Photo: Jim Britt