"アントワープの6人"の面々。左からマリナ・イー、ドリス・ヴァン・ノッテン、アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ダーク・ビッケンバーグ、ダーク・ヴァン・セーヌ。『The Antwerp Six』 展は2026年3月28日〜2027年1月17日でMoMuにて開催予定。
クリエイティブ・コミュニティのつながりは強く、そして末長い
“アントワープの6人”がモード界を揺るがしてから、2026年で早や40年。アントワープのファッション博物館MoMuでは、これを記念する展覧会を3月末にスタートする。会期は例外的に、10カ月。
6人とは、言わずと知れたドリス・ヴァン・ノッテン、アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ダーク・ヴァン・セーヌ、ダーク・ビッケンバーグ、そしてマリナ・イーだ。
彼らは1986年にそれぞれのコレクションを持ち寄ってロンドンに出向き、プレゼンテーションを行なった。ちなみにマリナはアヴァンギャルドなアプローチでマルタン・マルジェラに少なからず影響を与えたといわれるが、表に出ないタイプで、本展開幕を待たずに2025年11月に病気で他界したのが悔やまれる。また、アントワープ王立芸術学院で彼らと同期だったマルタンが入っていないのは、最初にジャン=ポール・ゴルチエに師事し、独立は1988年と遅かったから。
とにかく彼らの出現により、世界中がアントワープ王立芸術学院への好奇心を募らせた。リンダ・ロッパをはじめとする教授陣の稀に見る指導力も話題となった。毎日の課題が厳しく、進級も卒業も難しいことは今でも変わらない。つまり才能と情熱、そして精神力もある者だけが生き残る。ではなぜベルギー・フランダース地方の小都市は、クリエイティブ・ハブになったのか?
「パリやロンドンに比べてベルギーの都市は田舎なだけに、ほかのカルチャーにオープンです」。こう分析するのは、ベルギー出身のジャーナリスト、ジェシー・ブルーンズ。
またアントワープは街が小さいからか、クリエイティブ・コミュニティの絆が強い。“アントワープの6人”よりひと回り後の世代を例に挙げるなら、インダストリアル・デザインを専攻したものの、インターン先である、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクのスタジオでファッションの世界に足を踏み入れたラフ・シモンズ。当時彼が友達になったアントワープ王立芸術学院の面々は、その後末長くクリエイティブ・チームを組むことになるウィリー・ヴァンデルペール(カメラマン)、オリヴィエ・リッツォ(スタイリスト)、ピーター・フィリップス(メイクアップアーティスト)ら。
彼らが連日集っていたのは、アントワープのデザイナーたちのショーケースと言える、セレクトショップ「ルイ」だった。そのスタートは、“アントワープの6人”と同じ1986年。ファウンダーは、それまでドリス ヴァン ノッテンで働き、“アントワープの6人”のロンドン遠征をオーガナイズした、ヒェールト・ブリュロート。1988年にルイのウィンドウで見たマルジェラのデニムシャツに衝撃を受けて購入して以来、スタッフを経て共同経営者となったマリアン・エーガースは、こう言う。
「当時はラフがよく来てヘルムート・ラングについて熱く語っていました。40年前から、ここではファッションを巡ってさまざまな人々が意見を交わしています」
アントワープ王立芸術学院に在学中の生徒たちも、卒業生たちも、『The Antwerp Six』展に鼓舞されることは必至。2026年2月には、卒業生のメリル・ロッゲによるマルニでのデビューも控えている。今再び、この小さな街のクリエイティブ・パワーに注目したい。