【人生100年時代のジュエリー vol.08】Hermès(エルメス)

モードラバーがこぞってまとうエルメスのジュエリー。ピエール・アルディが自由な感性で生み出すクリエーションに、恋をして。

20代で買うなら

船の錨に着想を得たモチーフを、安全ピンのように再解釈したデザインがユニーク。アートオブジェのような佇まいでありながら、しなやかなリンクとチェーンが首元にやさしく寄り添う。

「シェーヌ・ダンクル・パンク」ネックレス〈シルバー〉¥678,700/エルメスジャポン(エルメス)

50代で買うなら

「ケリー」「コンスタンス」「バーキン」をジュエリーに。小さな世界で発揮される職人の技を堪能して。

「アミュレット」(右から)ペンダント〈PG、ダイヤモンド〉¥1,062,600・リング〈PG、ダイヤモンド〉¥572,000・ブレスレット〈PG、ダイヤモンド〉¥732,600/エルメスジャポン(エルメス)

格式とパンクスピリットが高次元で共存するジュエリー

岡部(以下O) エルメスのシルバージュエリーほど、性別や年齢、スタイルを問わず支持されるものって珍しい。

本間(以下H) 特にファッションラバーの間で、愛用している方は多いですね。主張がしっかりあるのですが、モダンだから装いやオケージョンを問わず取り入れられる。究極のエッセンシャルアイテムですね。

 初めてパリに出張した際に買ったリングをはじめ、これまでいくつもエルメスのジュエリーを購入してきました。中でも気に入っているのは「シェーヌ・ダンクル・パンク」のピアス。もともとパンクファッション好きなこともあり、安全ピンに見立てたデザインにひと目惚れ。エルメスとパンク、正反対だからこそ腑に落ちるものがあります(笑)。

 「シェーヌ・ダンクル」はこれまでさまざまな解釈でジュエリーにも取り入れられてきました。「シェーヌ・ダンクル・パンク」のムードは、確かにモードなスタイルとの相性が抜群。今回フォーカスした大ぶりなチョーカーは、アクセントになってくれそう。

 彫刻のようなシルエットと、ミラーポリッシュのシルバーがまるでアート作品のような佇まい。これぞ、ステートメントピース。

 エルメスのジュエリーを手がけるピエール・アルディは、元々シューズデザイナー、ダンサー、舞台美術家といったバックボーンを持っています。ジュエリー界の既成の価値観を超えて、フォルムやボリューム、動きに視点を置き、デザインしています。彼ならではのアプローチですね。これぞまさにパンクなスピリットだと思います。

 アイコニックなバッグをミニチュアで表現した「アミュレット」は、彼らしい遊び心にあふれたコレクションですね。

 アミュレットとは元々「魔除け」という意味があり、お守りとして身につけるジュエリーを指します。バッグをお守りにするというアイデアがユーモラスで素敵ですよね。

 どれだけミニチュアでも、そこはエルメス。精巧なディテールに惚れ惚れします。

 以前ピエール・アルディに取材した際に「私が作るジュエリーは、心につながったもの。時代に左右されないものづくりをしている」と語っていました。揺るぎない哲学のもとに生み出されるからこそ、タイムレスな価値があるのでしょう。

 使い続けるうちに愛着が湧くエルメスのジュエリー。またお買い物熱に火がつきそうです!

Profile

本間恵子

時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーという経歴に基づく鋭い目利きと、圧倒的な知識を武器に、メディアでの執筆やテレビ出演など幅広く活躍するエキスパート。

岡部駿佑

美しいものをこよなく愛するエディター。専門分野はランウェイとジュエリー&ウォッチ。SPUR.JPでのYouTube連載も好評。デジタルとプリントを横断して活動。

※この特集中、以下の表記は略号になります。PG(ピンクゴールド)

SOURCE:SPUR 2021年11月号「人生100年時代のジュエリー」
photography:Masanori Akao〈whiteSTOUT〉 styling:Lisa Sato〈bNm〉 text:Shunsuke Okabe

FEATURE