【人生100年時代のジュエリー vol.10】BOUCHERON(ブシュロン)

ジュエリーの世界におけるアヴァンギャルドの旗手、ブシュロン。モードラバーを虜にする創造性の秘訣は、歴史とオートクチュール、そしてテクノロジーにあった

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オーディオジャックに着想を得たジオメトリックなデザインの留め金には、きらめくダイヤモンドをあしらいリュクスな輝きを演出する。チェーンを腕に3ループほど巻きつけて楽しむ仕様。

「ジャック ドゥ ブシュロン」ブレスレット〈YG、ダイヤモンド〉¥2,046,000/ブシュロン クライアントサービス(ブシュロン)

20代で買うなら

ミニマルなデザインは、装いを問わず取り入れられる。

「キャトル」イヤークリップ(上から)〈WG、ダイヤモンド〉¥390,500・〈YG、PG、WG、ブラウンPVDコーティング、ダイヤモンド〉¥270,600・〈YG、PG、WG、ホワイトセラミック、ダイヤモンド〉¥353,100/ブシュロン クライアントサービス(ブシュロン)

160年以上の歴史の中で培われた、革新というレガシー

岡部(以下O) 1858年創業の老舗であるブシュロンですが、個人的には先進的なジュエラーというイメージです。最新のハイジュエリー「ホログラフィック」を先日見ましたが、宝飾品というより、むしろアート作品のようでした。

本間(以下H) クリエイティブディレクターであるクレール・ショワンヌの前衛的なクリエーションは、ジュエリー業界全体でも一目置かれています。ちなみに、ブシュロンは創業当初からその高い創作性で人々の注目を集めていました。たとえば1889年に発表された「プリュム ドゥ パオン」ネックレスは、孔雀の羽根をモチーフにした優美なデザイン、留め金のない構造など、革新的なアプローチで話題を呼んでいました。

 現代では「クエスチョンマーク」ネックレスの愛称で知られる、ブシュロンを代表するヘリテージピースですね。テクノロジーに加え、モードとの親和性の高さもブシュロンの特徴のひとつ。以前パリのアトリエでクレールの取材をした際、ファッション誌の切り抜きにデザインアイデアを書き込んでいたことを覚えています。

 創業者のフレデリック・ブシュロンの家系がもともと繊維業を営んでいたこともあり、ブシュロンにとってオートクチュールは大切なメゾンコードのひとつ。たとえば岡部さんが選んだ「キャトル」では、オートクチュールで用いられるグログランがデザインモチーフのひとつになっています。

 本間さんのセレクトは、2019年にデビューした「ジャック ドゥ ブシュロン」。オーディオジャックに着想を得たクリエイティブなコレクションですが、どういったところに注目なさったのでしょう?

 まずはデザイン。実用的なモチーフを取り入れるというユーモアは、さまざまなジュエリーを手にしてきた玄人にこそふさわしい。シンプルでありながら、スムースに着脱できる構造や、しなやかなスネークチェーンなど、クラフツマンシップにおいても申し分ない逸品です。

 ブレスレットって、留め金が小さくていつもつけるのに苦労するんですが、このデザインなら着脱も楽そう。

 年を重ねると、その苦労はさらに大きくなりますよ(笑)。この長いブレスレットは、ネックレスとしてつけられるのも魅力。人とかぶらないデザインを好むモードラバーにこそトライしてほしいですね!

Profile

本間恵子

時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーという経歴に基づく鋭い目利きと、圧倒的な知識を武器に、幅広いメディアで活躍する唯一無二のエキスパート。

岡部駿佑

美しいものをこよなく愛するエディター。専門分野はランウェイとジュエリー。デジタル、プリント、YouTubeチャンネル「シュプールTV」と幅広く活躍。

※この特集中、以下の表記は略号になります。YG(イエローゴールド)、PG(ピンクゴールド)、WG(ホワイトゴールド)

SOURCE:SPUR 2022年1月号「人生100年時代のジュエリー」
photography: Masanori Akao〈 whiteSTOUT〉 styling: Lisa Sato〈 BE NATURAL〉 text: Shunsuke Okabe

FEATURE