2022.04.06

【教養としてのジュエリー学 vol.2】Van Cleef & Arpels ドゥ パピヨン

1906年、アルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルによってパリで創業されたハイジュエラー、ヴァン クリーフ&アーペル。「ミステリーセット」に代表される、卓越したクラフツマンシップで知られる名門のデザイン哲学を、最新クリエーションを通して分析する。

「パピヨン」クリップ〈YG、ホワイト・マザー・オブ・パール、ダイヤモンド〉¥1,557,600

「ドゥ パピヨン」リング〈YG、WG、ターコイズ、ダイヤモンド〉¥2,613,600/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク(ヴァン クリーフ&アーペル)

立体感のある造形が美しいクリップは、七色の輝きを宿したマザー・オブ・パールとダイヤモンドがノーブルな佇まい。同じくパピヨンをモチーフにした「アントレ レ ドア」リングは、2001年から継続的に展開してきたデザインを、色鮮やかなターコイズでアップデートしたもの。いずれも、自然をこよなく愛するヴァン クリーフ&アーペルならではの優美なジュエリーだ。



うららかな春のムードを湛える、珠玉のエレガンス

岡部(以下O) 今回フィーチャーするのは、ヴァン クリーフ&アーペルのパピヨン(蝶々)をモチーフにしたジュエリー。フランス語などには、胸がときめく様子を表す「おなかの中に蝶々がいる」という慣用句がありますが、このリングを見たとき、まさにそんな気持ちになって心が躍りました。

本間(以下H) 蝶々が指の上を舞うなんて、ロマンティック。ヨーロッパでは、昔からパピヨンは若返りや再生を象徴するフォーチュンモチーフ。ヴァン クリーフ&アーペルは、メゾン創業の初期である1906年からクリエーションに度々取り入れてきました。

O パピヨンをモチーフにしたジュエリー自体はさほど珍しくないですが、このリングはどこかポップなデザインが個性的で他と一線を画しています。

H 写実的というより、グラフィカル。これはヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーに共通していますね。

O ユニークなデザインもさることながら、贅沢な素材の使い方も魅力。ターコイズとパヴェ ダイヤモンド、2頭の蝶々にはそれぞれ中央にマーキスカットのダイヤモンドを配しています。

H 艶やかなターコイズとダイヤモンドの輝きのコントラストで、アシンメトリーなデザインがさらに引き立ちますよね。近年トレンドとして注目を集めているのが、左右から指を包み込むオープンリング。ヴァン クリーフ&アーペルでは通称「アントレ レ ドア」と呼び、1970年代からシグネチャーとして提案してきました。

O オープンリングって、通常のデザインと異なり、指先だけでなく手全体を華やかに見せてくれるのが魅力。ハンドジュエリーに近いというか。

H 私もそう思います。加えて、環が一部開いているので、指が浮腫んでしまっても締めつけられないというメリットもあります(笑)。

O 確かに!リングって朝からつけてると夕方キツくなりますよね(笑)。

H このリングは、肌に触れる部分がなめらかなので、フィット感も高く、着用感も快適。これひとつで抜群の存在感を演出してくれます。

O もうひとつご紹介するのは同じくパピヨンをモチーフにしたクリップ、こちらもまたこのメゾンの象徴的なデザインと言えます。

H シンプルなニットやTシャツに合わせるだけで、ぐっと春らしいムードになります。ちなみに、クリップを胸元につけるときは、高めの位置にすると軽やかに見えるのでおすすめです。

O クリップを素敵に使える人って憧れるんですが、ともするとコンサバっぽくなってしまいそうで、なかなかハードルが高いんですよね……。

H 確かに、クラシカルな使い方が主流ですが、アイデア次第でさまざまな楽しみ方ができるのもクリップの面白さ。シンプルに合わせるだけでなく、ひねりをきかせてモードな使い方にチャレンジしてみてください。

O これからの時期だと、大きめのブランケットを留めて、ケープみたいに着てみたい。あ、ドレスアップしたときのヘアジュエリーとして応用してみるのはどうでしょうか?

H いいアイデアですね!ぐっと春めくこの季節、ジュエリーで自分らしい個性を表現したいですね。

本間恵子
時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーという経歴に基づく鋭い目利きと、圧倒的な知識を武器に、幅広いメディアで活躍する唯一無二のエキスパート。

岡部駿佑
美しいものをこよなく愛するエディター。専門分野はランウェイとジュエリー&ウォッチ。SPUR.JP、さらにYouTubeチャンネル「シュプールTV」のホストとしても活躍中。

SOURCE:SPUR 2022年5月号「教養としてのジュエリー学」
photography: Masanori Akao 〈whiteSTOUT〉 styling: Lisa Sato 〈BE NATURAL〉 hair & make-up: Ryoki Shimonagata model: Kennedy text: Shunsuke Okabe 

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