幼い頃からハイジュエリーの世界に慣れ親しんできたスタイリスト・清水奈緒美さんが、モードマニアが選ぶべき宝石を指南。歴史あるブシュロンから選んだのは、アイコニックなあの猫!
ポリッシュ加工を施したゴールドビーズで石を囲んだセルパンボエム。ペアシェイプの色石はいっそう華やかに、パヴェセッティングのダイヤモンドはエキゾチックな趣で指先を飾る。装飾的なディテールが重なり合い、リュクスな表情に導く。
パリ・ヴァンドーム広場に本店を構えるブシュロン。かつてそのブティックで顧客を迎えた看板猫が今回の主役"ウラジミール"だ。スタイリストの清水さんが心惹かれるポイントとは?
「ブシュロンはヴァンドームで初めてブティックを構えたジュエラーです。作品を目にするたびに、ハイジュエリーの歴史の始まりに対峙している心持ちになります。その由緒正しいメゾンからこんなにチャーミングな猫のリング"ウラジミール"が生まれるなんて。デザインの歴史は古く、創業家3代目ジェラール・ブシュロンの飼っていた "幸運を招く猫"をモチーフにしているのです」
魅惑的に輝くツァボライトのネックレスをまとった小粋な猫〝ウラジミール"。物憂げな表情に思わず目を奪われる。
清水さんは卓越したクラフツマンシップにも注目している。
「もし実物を見る機会があったら、横顔の頰の曲線や後頭部、鼻のピンク色のエナメル装飾部分など細部まで眺めてみてください。ハイジュエラーならではの技巧が詰まったこのリングは、まるで小さな建築物のよう。美しい宝石は隅々まで贅沢に作り込まれています。"ウラジミール"のリングの裏側を見ると、ダイヤモンドに光を取り込むため、繊細な裏取りが施されています。そして、猫の毛並みの柔らかさを感じられるような、ダイヤモンドの細やかなセッティングも素晴らしい。指にするリングはいつも目に入ってくる存在なので、そこから何かを得ることが多いですよね。たとえば街角でふと見かけた花々を、ああ綺麗だなと思うように、身近に小さな"ジョイ"を感じさせてくれる相棒を身につけたいものです」
有機的なフォルムを楽しむなら"セルパンボエム"もはずせない。
「1968年に誕生した"セルパンボエム"はサヴォアフェールが息づくコレクションです。ダイヤモンドのデザインが人気ですが実は色石も豊富。石のクオリティが高く、吸い込まれそうな魅力をもっています。今回選んだロードライトガーネットも深みのある赤が印象的な石です。色石のリングは好きな色をいつでも手もとに置けるので、まるで心も彩られるような気持ちになりますね」
スタイリスト。ファッション誌の編集者を経て、2010年よりスタイリストとして独立。ものを選ぶ審美眼にファンも多数。モード誌を中心に、広告や俳優のスタイリングも手がける。