スタイリスト・清水奈緒美さんが宝石選びを指南する連載。第4回はヴァン クリーフ&アーペルをセレクト。卓越したクラフツマンシップと壮大なロマンティシズムを併せ持つ唯一無二の世界観が魅力だ。
火のエレメントに属する牡羊座は赤い地層を思わせるアイアンアイを合わせて。裏面は石の上にスターモチーフやシンボル図をゴールドで重ねたミステリアスな表情。立体的で美しいレリーフに魅了される。
硬質な素材を扱うジュエリーのデザインで、いつだってやわらかく、ロマンティックな物語を生み出すことができるのがヴァン クリーフ&アーペルの魅力だと清水さんは考えている。
「祖母がアルハンブラ コレクションを長く集めていました。好きな石でオーダーしたり、新作の発表会に伺ったりした記憶があります。家族も私もそんな経験から、メゾンのファンになっていきました。いつか自分のヴァン クリーフ&アーペルを持ちたいと思っていたのですが、これだと感じたのは2021年、新しいゾディアック コレクションのお披露目を兼ねた展示会に足を運んだときのことです。もとは1950年代からメダルチャームとしてあったそうですが、モダナイズされた新作の魅力の虜になってしまいました」
12星座を詩的に描き出したメダルモチーフが勢揃い。メダル側面の溝をあえてデザインとしてあしらうことで、悠久の時を経たようなたたずまいに。細やかな職人技が光るクラシカルな星座モチーフは、時代を問わず愛されるデザインだ。
職人の手作業で仕上げられる表面には12星座のモチーフ、裏面にはシンボルとローマ数字で星座の期間がレリーフされている。
「ゾディアック コレクションはメダルと12星座それぞれのエレメントを表す色石を合わせたロングネックレスの2種があります。機会があったらぜひ手に取ってみていただきたいのですが、メダルはイエローゴールドを独特な味わいのサテン加工で仕上げています。色みも質感もどこかやわらかな印象です。もともと蝶や花など自然のものから着想を得たデザインが多いメゾンですよね。星座というモチーフを扱っても有機的かつエレガントな雰囲気に昇華させています。鉱物とも組み合わせることで、自然界が持つ魅力を存分に詰め込んでいるのだと思いました」
本連載ではファッションの女性像と絡めてジュエリーの魅力を語る清水さん。今回はあえてキャラクターを限定せずに撮影した。
「このコレクションは人を選ばない、開かれた自由さが魅力。マニッシュな人でも、フェミニンな人でもいい。自分の星座はもちろんのこと、パートナーや家族の星座を選んでもいいです。メダルのチェーンも好きに選べるので、自分なりにつけてみてほしいですね」
スタイリスト。ファッション誌の編集者を経て、2010年よりスタイリストとして独立。ものを選ぶ審美眼にファンも多数。モード誌を中心に、広告や俳優のスタイリングも手がける。