タフな野生と、洗練されたモダニティと。カルティエのジュエリーは相反するふたつの顔を持つ。斬新なピースが、新時代の女性たちにふさわしい力強さと自由な生き方を体現する。
自然界にインスパイアされたジュエリーが、装う女性に生命力を与える
20世紀初頭、“パンテール”と呼ばれたカルティエのハイジュエリー最高責任者がいた。彼女の名は、ジャンヌ・トゥーサン。メゾンの歴史は、自立に目覚めた女性とともに進化してきた。その代表ともいうべきジャンヌは、しなやかな野生のひらめきによって、メゾンに伝説的な作品をもたらした。パンテール ジュエリーの制作にあたった彼女は、動物園で豹の動作を丹念に観察し、当時の常識を超える今にも動き出しそうなピースを創造したという。その独創性を現代に表現する“パンテール”は、立体的でシャープなフォルム。強靭なパワーを秘めている。このスパイシーなセンスは、砂漠に咲くサボテンに着想を得た“カクテュス”にも流れている。エッジのきいたデザインにエレガンスを融合したジュエリーこそ、カルティエがクリエイトする、「新しい女性」のシンボルだ。
砂漠の中にすっくと立ち、太陽の光を浴びて輝くサボテンを思わせるリング。豊富な色のバリエーションで知られるトルマリンが、深い森のような色調から、青みがかった緑までのグラデーションを描く。ふっくらとしたボリューム感を表現するペアシェイプの色石と、バゲットカットのダイヤモンド。これらが構成する幾何学的なラインが、オープンワークの技によって軽やかな空気をはらみ、指を取り巻く。高さ約4cmの大胆でユニークなリングは、モードな服にも負けない存在感にあふれている。
「カクテュス ドゥ カルティエ」リング〈K18YG、ダイヤモンド、トルマリン〉¥4,680,000/カルティエ カスタマーサービスセンター(カルティエ)
命のパワーを発散する、2頭のパンテール。その眼が、魅惑的なグリーンの光を放つ。まるで彫刻のような立体感のある顔は、ジュエリーの留め具を兼ねている。パンテールが口を開き、尻尾をくわえるとたちまちネックレスやブレスレットに変身。しなやかな豹を思わせる、立体的で量感あるチェーンを効果的に配して。
(右)「パンテール ドゥ カルティエ」ネックレス〈K18YG、ダイヤモンド、ツァボライト、オニキス、ブラックラッカー〉¥3,156,000 (左)「パンテール ドゥ カルティエ」ブレスレット〈K18WG、ダイヤモンド、エメラルド、オニキス〉¥10,260,000/カルティエ カスタマー サービスセンター(カルティエ)
※この特集中、以下の表記は略号になります。YG(イエローゴールド)、WG(ホワイトゴールド)
SOURCE:SPUR 2019年12月号「眼福ジュエリー図鑑」
photography: Masanori Akao 〈whiteSTOUT〉 styling: Yumi Takashiba flower coordination: Michiko edit: Michino Ogura text: Hiroko Naruse