普段何気なく目にしている時計だが、その内側では数えきれないほどの小さな部品がひしめきあっている。これら部品を組み合わせたムーブメントこそが腕時計の心臓であり、その精密さや機構の独創性において、名門マニュファクチュールを置いて右に出るものはいない。
歴史あるウォッチメーカーともなれば、100万円を超えるものも。しかし、長い歴史に裏打ちされた美学、そして高度な技術が結集していることを考えれば、その価格にも納得がいく。
身に付けられるアート作品、もといライフゴールウォッチを所有するとは、どんな感覚なのだろう。無類の時計好きであり、これまでに200本以上もの時計を手にしてきたという、会社員のT.Hさんに話を聞いてみた。
「中でも特に思い入れのある、A.ランゲ&ゾーネの時計は、学生時代に必死でバイトをして手に入れたものです。高級時計というとスイスが有名ですが、このブランドは数少ないドイツメーカー。憧れていたジル・サンダーが愛用しているという理由もあって、いつか手に入れたいと夢見ていました。老舗マニュファクチュールの時計の魅力は、ムーブメントも当然ですが、やはりデザイン。20年以上使っても全く飽きがこない美しさは、手に取るたびに見惚れるほど。完璧主義、という言葉が似合う名機です」。
普段はより実用性に長けたベル&ロスやブライトリングをファッションに合わせて使いながら、大切にしている手巻きの時計を「会話をするように」巻き上げるというT.Hさん。美しい時計と過ごす時間、それこそがひとつのライフゴールなのかもしれない。





