#2 受け継がれていく“トリニティ”【カルティエ】

カルティエの「トリニティ リング」。帰省中に、母のジュエリーボックスの中で眠っているそれを見つけた。バブル時代の一大ブームに乗っかり、当時父に買ってもらったそうだ。長らくつけていないわりにはまったく古びた様子もなく、むしろ箱の中でひときわ存在感を放っていた。

三色のゴールドリングがまさしく三位一体となった「トリニティ」。ピンクは愛、イエローは忠誠、ホワイトは友情をそれぞれ意味する。それら三つが完全なる調和を保つ、卓越したデザイン。

母のリングを見て、俄然つけてみたくなった。ジャン・コクトーのように小指につけるには大き過ぎたが、人差し指にぴたりとはまった。なんてエレガントなんだろう。そして抜群のオーラがある。三連のリングが指をなめらかに通る感覚も心地よい。これは……ものすごく欲しい!

「アンタ、欲しいんなら持って行けば?」
「いいの!? お母さんいらないの?」
「もう歳だし、つけて出かけるところもないから」

母は昔からおしゃれな人だった。私がファッションに目覚めたばかりの頃は、よく「野暮ったい」「バランスが悪い」などと辛口に評価されたものだ。そんな母も今年で63歳。いやいや、まだこれからじゃないですか。リングは遠慮なく頂戴したけど、もっと母を連れ出さなくては――。

話しを戻すと、メゾンを象徴する「トリニティ」は1924年に生まれた。誕生から一世紀近く経った今もなお、多くの人の心を引きつけてやまない歴史的名品。事実、こうして母から娘に受け継がれるエターナル・ピースなのだ。いつか私も、我が子が成長して家を出るときにこれを譲りたい。その日が来るまで、大事につけていよう。

リング〈YG、PG、WG〉¥103,000
リング〈YG、PG、WG〉¥103,000 Katel Riou © Cartier

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illustration:Uca text:Eimi Hayashi

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