数年前に友人とソウルを旅したとき、ノリで韓服を着て記念撮影しようということになった。レンタル店のアジュンマ(親しみを込めて“おばちゃん”の意味)に自分の好きな色を聞かれたので、ミントグリーンと答えるとすかさず首を横に振られた。
「あなたにそんな優しい色は似合わないわよ」。
思い切って告白したのにフラれたような気分だった。よくある話しだが、好きな色が似合うとは限らないのである。
かわりに、これなら絶対に似合うと見せられたのは、深い海のような群青色に金糸の刺しゅうが施されたチマチョゴリ。まったくピンとこなかったが、実際に着ると確かに顔映りがよかった。メイクはそのままなのに顔全体が華やいで見えた。失恋の後に、運命の出合いがやってきたのだ。
以来、私のパーソナルカラーは群青色。でも似合うからといって、これ見よがしに身につけるのは面映ゆい。スタイリングの堂々たる主役というよりも、ワンポイントでさりげなく。たとえばジュエリーで取り入れるくらいがちょうどいい。
トーカティブの「クレスト」というコレクションのひとつに、ラピスラズリを使ったピアスがある。天然の石とは信じがたいほどの美しい群青。そこに、白と金の模様が混じり合う。さながら夜空に散りばめられた星屑だ。幻想的で、魔力を秘めていそう。『天空の城ラピュタ』に出てくる飛行石みたいに、身につけると宙に浮くんじゃないかとさえ思う。
異国の紋様のモチーフをかたどったフォルムは、職人の手で研磨加工されたもの。このグラフィカルなカッティングが手作業だなんて……。「会話の生まれるジュエリー」をコンセプトに掲げるトーカティブらしい、ウィットに富んだデザインは、高度な技術の裏付けがあってこそ成立する。
ちなみに、ラピスラズリは「幸運をもたらす石」とも呼ばれ、災いから持ち主を守ってくれるという。スピリチュアルな世界にはとことん疎い私だが、このピアスを眺めているだけで幸せな気持ちになることは確か。「お守りジュエリー」という言葉は好きではないのだが、もしそんな厄除けパワーが本当にあるのなら、つべごべ言わず存分にあやかりたい。
トーカティブ
http://www.talkative-jwl.jp/
03-6416-0559
illustration:Uca text:Eimi Hayashi